NM_H、登場(結構前に一回だけ登場したけど)
「なぁ~~、アレクよ~~」
「なんだ?」
「春藍の奴。なんであんなに運が良いんだよ。普通、ありえねぇだろ。ライラに夜弧ちゃんに、アルルエラまで、妹の謡歌ちゃんまで…………」
「くだらないな。お前しか考えない事だろう」
「お前は春藍の師だろう?そーゆう心配はしねぇの!?な?な?」
「春藍が良いなら、良いんだろう?」
時は……。春藍達が丁度、藺達に捕まっていた頃。
フォーワールドにて、留まっているアレク、ロイ、若、クォルヴァ。戦力となる男共がせっせと働いていた。
「言葉覚えるのは超大変だったぜ。今から春藍達と合流して良いか?」
「ダメだ。行った異世界は分かっても、どこにいるのか分からんだろ。それにライラがいれば大丈夫のはずだ」
若とクォルヴァは他の異世界との関係を強めるための交渉事で忙しい。
アレクはこれからさらに領土と人口の増加を予測しており、これらのための土地の整備、住居の確保、インフラ作業の重役として忙しく回っていた。日に日に、フォーワールドの領地が広がっていき、未着手の土地の方が多い。
ロイは言葉を覚える勉強をしながら、アレクの補佐として建築業務に精を出していた。重機が足りない中で、それら以上に働ける"超人"の存在は大きかった。
「うおおぉぉぉっ」
ロイには運搬を主に担った。
今は亡き、ネセリアの"掃除媒体"で収納できなかった資材をロイ1人で運んでいる。重機の運搬も彼が怪力と快速で運んでいる。その方が節約でき、なにより速いからだ。
「なんで俺はこんなに動かなきゃなんねぇーんだ!腰痛ぇっ!」
「鍛え切れていない筋肉があることだ」
「俺の10倍ぐらいデカイもん運ばせんな!なんだよ、このクレーン車ってのは!?」
領土が広がるほど、資源も人材も足りていない。
フォーワールドの技術者の数も足りていない。"科学"の扱い方を指導する、訓練場もついこないだ設立したばかり。少しばかり、扱える人間が増えて欲しいものだ。
ガンガンガンガン
「あーっ、うるせぇな。ここ最近、工事音しか聞いてねぇや」
「工事に終わりなんてねぇさ。ちゃんと造ったとしても、ゆっくりと老朽化していく。舗装や取替えなんて当たり前だ」
労働だけは順調に進んでいる。人材の枯渇状態故、勝手に仕事を割り振られることが常時だ。できる、できないに確かな差はあるだろう。しかし、失敗を繰り返す事で人は成功に近づいていく。
管理人が消滅したことで人類に不安が走っている。それが労働に対しての拒絶を大きく減らした。人間が今、やらなければいけないこと。
「色んな異世界の住民を集めているんだろ?良いのか?人口爆発的なことが起こりかけるだろ?」
「見過ごすわけにもいかん。クォルヴァの情報によると、繫がってしまった異世界同士が戦争することも起きてるそうだ」
「奪い合いか」
「それも人間の平静だ。悪いだなんて俺もお前も思っていないだろ?ただ、俺達はこーするべきだと答えを出している」
「………俺はお前達と先に出会ったからな」
唯一の管理人であるクォルヴァがいることで、こういった干渉が緩和なのもある。管理人を失っただけでバランスを崩し、崩れ落ちるだけの異世界の方が多い。ロイも、アレク達と出会っていなければ、侵略という手段に出ただろう。
クォルヴァと若が、様々な異世界の人間をフォーワールドに集めている状況。分からない事、不安になる事も多いだろう。
フォーワールドの代表として、ヒュールが移民達への説明、配慮の責任者を担っている。
アレクもそうだが、責任者が被り過ぎている。
「大丈夫か、アレク」
「心配はない。まだ仮で席に座っている状況だ。ヒュールもだ」
まだまだ発達途上。世界の骨格がようやく造られ始めた段階だ。
「異世界で重役を担っている人材も一緒に来てもらっている。彼等にもいずれ、責任を分け渡すことだってできる。今は辛抱するべき時だ」
アレクが最近、タバコを吸っていないことを知っているロイ。吸う余裕がないのを知っている。自分はだいたい筋肉馬鹿だ。アレクの負担を減らすことはできない。ミスで迷惑もかけている。
話をして少しだけでも、気が紛れれば良いと思っている。春藍がいねぇのは結構な負担なんだろ?あいつがいれば建築面の問題は、大分早く片付いたはずだ。
けど、いない方が労働が減らなくて良いと……アレクは俺に対して難しいことを言っていた。早くできることもよくねぇーんだな。
「お前とクォルヴァは動けない。ライラ達は先に行っちまった。……俺も追いかけるよ」
「なに?」
「ライラ達に頼んだ資源集め。俺もやりに行ってやるよ。ここに残っていても、俺の力はあんまり活きねぇ」
少しでもアレクの負担を減らすにゃ、ライラと春藍が必要なはずだ。
俺が馬鹿で本当に悪かったな。出発遅れてよ。
「1人で良いなら構わないぞ。お前の馬鹿を見なくて清々するし」
「んだとコノヤロー!」
ロイの力は確かに貴重な労働力であった。しかし、彼がいないことで人の使い道が増えるのも確か。同じ人間とはいえ、移民ばかり。この異世界で纏まりや、一体感を作るのなら協力しながら行動することにある。労働もその手段の一つ。
「とはいえ、ロイ1人も可哀想だな」
「おっ?なになに、誰か付いてくるのか?いたか?お前とクォルヴァさん以外で戦力になる奴」
「いや、………"文学楽園"のラフツーと、俺達の技術開発局のメンバーで造っている最中の助っ人をお前に貸してやろう。戦闘能力はほぼない」
「それ助っ人って言葉であってんの?なんだよ、ロボットか?」
一度だけ会ったことはある。
そんなに昔の話ではなかった。時間的には……
「色々と移民を取り入れる上で様々な言語を扱える存在が必要だった。コミュニケーションの発達を兼ねての、"科学兵器"」
春藍の誕生日に見せてあげた代物である。人間型のロボット。
「"NM_H"をお前に渡そう」