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RELIS  作者: 孤独
友達編
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ゾンビは友達を作れるのか?



体はグチャグチャになっていた。


「ひゅー、はぁー、ひゅー」


いくつもの氷塊に体を潰され身動きもとれない。死を回避していたのは驚異的な肉体のおかげだ。

打たれ強いという言葉ではなく、やはりゾンビなのだ。こいつの死はきっとないのだろう。




ピチャピチャ



氷塊が溶ける水を必死に舌で拾った。わずかな水ではあるが、水羽の体を癒したのは確かだ。死にそうなぐらい痛いとかキツイってのは、まだ死に届かない理由。



「は、は」



苦しい時、一番楽しかったことを振り返るらしい。

それで満足できるなら抵抗はしなかっただろう。当然、水羽は振り返って満足できるわけがなかった。痛みとか、苦しみとか、……いや、もう体を潰される前からボロボロになっていたんだ。それでも止まらずに来ていた。



体が壊れたからなんだ?



「あー、はー、あー」


これほど肉体がボロボロでも漲ってくる力がある。


「謡歌」


助けてやる意志。



「謡歌、謡歌、謡歌、謡歌、謡歌」


死んでいる体で戦うのは知っている。熟知している。


友達になってくれるよね?今から助けにもう一度行くよ。誰かに操られてるんだろ?そんなの絶対、僕が振り払ってやる。



ガリガリガリ



舌から歯へと変わる。氷を蓄えるペースが速まる。傷は決して癒えるわけではないが、活力が湧いてくる。異常のペースで蘇る。



「待ってて謡歌。あと少し、あと少しでここを出るから」


肘の曲がりもおかしい、足の動きも足ではなかった。

ただ闇雲に動かし、氷を食いながら上へと登り始める水羽。


「また友達で、いよ」


執念かつ病んだ心が成せる不屈の行動。




バギイイィィッ



見上げれば氷はなくなっていた。水羽、ライラの"流氷群"から自力脱出。



◇  ◇



「なんだこいつ等は?」



朱里咲は体を縫いながら、ライラと夜弧へと言葉を投げかけた。七三分けのスーツ姿の男の後ろには大量の、生気を感じない人間達が現れていた。


「私達の敵よ」

「……そう、ですわね」


ライラと夜弧の言葉から状況を整理し、


「つまり、お前達は私達の世界に敵ごと踏み込んできたということか?」

「ちょ、ちょっと違うけどね。ムカつくから言わないけど」


じゃあ、そーゆうことか。


「ならば春藍謡歌という子はお前達の敵で良いのか?」

「え?」

「知っているんですか!?春藍様の妹です!あちらの」

「………あの青年の妹か」


辻褄も合う。


ボロボロとなった女性陣のお話を少しだけ待ってあげた藺。1人で立ち向かうには勇気がいる3人だ。


「ここでのお話はもういいですか?」


捕えてしまえば誰であろうと、自分の空間に引きずり込める。いかに"超人"の中で無敵に近い朱里咲、強力な天候を操る魔術を扱うライラですら、ムシケラのように扱える。

物量作戦で朱里咲とライラ、その他を洗脳できる。



「ではそろそろ、こちらの方に来てもらいましょうか?」


ゆっくりとであったが、藺が召喚した人間達がライラや朱里咲に近づいていく。

捕まるという恐怖を知っているライラと夜弧が、とても怖くなっている表情を作っているのを朱里咲は見逃さなかった。



「取引だ」

「な、なに!?」

「そこの……謡歌のお兄さんは人の傷を治せるんだろ?」

「そうだけど、あいつも疲れ切ってるわよ」



何でも良い、そんなのは


「あのスーツ野郎を殺せばひとまず良いんだろ?あとは任せる」


朱里咲もまたボロボロながらも起き上がった。

その根性というか、異常性。


「飛車角落ちか?まぁいいだろう」


藺も、ライラも、夜弧も、強く警戒した。マジでこいつ等はなんなんだ?


今にも下半身と上半身がズレそうだというのに立ち上がり、迎え撃つ構えをとっている。本気で戦うつもりであった。


「……馬鹿ですね。ま、嫌いじゃないですよ」

「諦めが悪いってのは言葉じゃなく、行動だ」


必死に足掻いてみるとする。戦いの中で死ぬことが本望だ。できれば、団体よりかはサシでの勝負が好ましいんだが……ロマンチストかね?


朱里咲の底など外見から判断して分かる。長くは持たない。人間を駒のように扱う藺が、人の犠牲を考えるわけもない。力押しで行った。

10数人が朱里咲に飛び掛かるが、ダメージなど苦も感じさせずに一蹴りで吹っ飛ばす。



「いかんなぁ」



応急処置で上半身と下半身を縫ったため、朱里咲の攻撃の反動で解けてしまった。体が分離してしまっては次の人間の攻撃が止められない。



「世の中、そんなものですよ」



立って来た時は焦りもしましたが、やはり朱里咲は戦えない。


「私では無理か」

「は?」


しかし、朱里咲の目がまったく死んでいないことに藺は気が付いた。不安要素を見逃していた。

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