ただただ強いっっっ
技という一点のみならば、朱里咲の上はいない。
ただ彼女と双璧になれる逸材に技はない。(技というものがない)。
ぶち抜けているのは力でも、技でも、能力の特有でもなく
ただただ強い。
普通に強いだけ。
パラメータがどうできていようが強ければいいのだ。
"超人"の機能美。それだけあれば十分。
「すぅ~~~」
水野水羽
スタイル:超人
スタイル名:死屍姫
洗脳され、大軍となって水羽に襲い掛かろうとする者達。水羽は囲まれた時、水羽は大きく息を吸い込んだ。
戦闘のスイッチを押した。それも最初から全力を出すということ。
これが後に藺達の誤算になった。
バギイイィッ ボギイィィッ
水羽の上半身が異様に膨れ上がる。それでも空気をさらに溜め込んでいる。人間という形状ではなく、完全に怪物の域に達している。
「はぁぁっ」
限界点に達した時。元の姿に戻ろうと、体が強く反発した。
怪物と分かるその異形が元の人間に戻るための負担は、水羽だけでなくその周囲に影響を与える。
「アァッ!!」
気合とか。そーゆう論じゃなく。
水羽が溜め込んだ空気が吐き出され、風となり、嵐となって、囲った軍勢に襲い掛かった。
地響き、地鳴り、空気の振動の大きさ。
「うあぁっ!」
「うるさぁっ!」
「っっ!」
見えないほど遠くにいる藺達にもハッキリと聞こえる怒声。
たったそれだけによる衝撃波の光景もまた届いていた。
「なんですかね、このメチャクチャな戦い方」
原始人がマシな気がする野蛮な戦い方。奴隷の方々がやられていく情報を知れる藺はそう評価していた。
数や情報、奇襲で相手を圧する藺の戦略。その戦略が完全に破壊される、個の強さ。数で圧せぬ獣。殴られれば消し飛び、蹴られれば遥か彼方へ、掴まれれば砂のように細かく千切られ、歯によって噛まれれば胃の中にまで一直線。
殺される。殺されていく。死んでいく。
「違いますね。彼女の戦い方は……」
まるで、戦いの原点。勝ち負けが生まれた理由。生存競争を表した戦い。
殺した元仲間をその口に取り組んでいく狂気的過ぎる戦術。
「んんんっ、かはぁっ、たんねぇ、餌が足りない」
発する恐怖も、見せつける恐怖も、並の相手ならば怖気づく。
搾り取った血を飲み干し、骨を食いちぎる。洗脳よりも生物の行動的にも正しい、相手を取り組んでいる作法。そのほとんどは時間が経てば消化しいなくなってしまうが、食べるほど闘志と食欲が湧いてくる。
相手を倒す事に使うエネルギーを倒した相手を喰らって補う。物量で押す単純な技も、喰らって取り込んでいく異端で野蛮なやり方に少し面を喰らった藺。やはりそう簡単には勝てない相手。
「山羊波さん。毒を用意してくれませんか?」
「あらぁ~。酷いんじゃない?」
「別に、似ているじゃないですか。能力名に"病"がついているんですから」
春藍達を苦しめ、結果的に倒すこととなった。山羊波と藺の最凶コンボ。
"五月病"を纏わせた洗脳した人間達を操作し、水羽に襲わせる。動きが若干、本来よりも遅くなっているが、存在しているだけで周囲に怠惰や意識の昏睡を誘発させる、山羊波の魔力が散布されていく。
「せいぜい、自己満足して倒れなさい」
敵が隠れ、姿すら知らない状況。
水羽の周囲には強烈な猛毒が空中に舞い、敵にも付着しており、自分にも猛毒に侵されている状況。体の異変よりも精神に異常をきたす山羊波の攻撃。
「かははは、あはははは」
平常心がなんなのか。少なくとも、異常かつ狂気にしか思えない水羽の精神状態は複雑よりも、黒く歪んでいると言った方が良い。
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」
毒を喰らう。自分の毒になろうとしても、それをさらに食い尽くす。どんな毒かも知らずに喰う。
「あははははは!?毒かなぁ!?無駄だねぇぇぇっ」
毒に慣れる。普通の"超人"ではない水羽の身体能力。不死身に近い耐久力あっての耐性付加。山羊波の発する"五月病"に対する免疫を細胞に植え付けさせる。チマチマと攻撃していくが、確実なダメージを与える藺達の戦術を無力化していく水羽の、原始的な最高峰の戦術。
水羽、山羊波の"五月病"をまともに浴びても倒れず!
「っ……ちょ、なんなの!?あの化け物!」
山羊波も遠くから水羽の不死身っぷりを確認。確実にダメージを与えているはずなのに難なく、雑魚と戦っている水羽の戦闘意欲の高さ。
「あらま」
最凶コンボと思われた藺と山羊波。しかし、それを覆せる人材。
「やはり、手を出して正解でした」
藺は水羽のポテンシャルに小さいながら、期待を核心に変えていた。




