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RELIS  作者: 孤独
友達編
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神を掲げる者同士

精霊。


精霊?


『断じて私はそんな位で収まらない。私は拒否する』



魔物という異形が、崇高な自尊心を持っているか。


『私は神だ』


異世界で与えられた精霊なる役職的な名。形。……魔物より可愛らしいかもしれないが、メテオ・ホールにとっては神という絶対的な位置に渇望があった。


自身を無敵、最強と、自負していると同時に優れた生命体など存在しないと断言している。広がる先、異世界がまだまだあるという事実を知っても自負する。


なぜなら、自分はこの世にここにしかいないからだ。



『精霊などと、崇められるのは足りない』



成長したい、上達したい。

人には満足という位置があろう。これくらいでいいとか、誰だって思う気持ちはある。高い高い空を見上げ続けると首が痛くなるようにスッと、レベルを落とすものだ。

ただ、メテオ・ホールにそれはない。目指すべき頂点に最初から座っていると感じているからだ。



神だからこそ強く、神だからこそ好きに、神だからこそ勝ち、他の生物を愚弄できるのだ。

藺と組むのも我に歯向かおうとする者共をただ滅ぼすため、神という名をほざく者共を駆逐するだけ。




ドオオォォンッ



「うむ、中々やるな。私が逃避一辺倒になる相手は貴様が初めてだ」


メテオ・ホールの戦闘パターンを把握し始める朱里咲。


「いかんなぁ。久々にピンチだ」


にも関わらず、朱里咲の表情は緩みがある。

すでに10分ほどの戦闘でメテオ・ホールの分析は大体終わったからだ。魔物だからこそ、こういった駆け引きの経験がない。同時に知能があるように見えて、戦いを自分だけの力で決めるような奴だ。



「君は煙っぽい原型だが、空気か気体……ガスみたいな魔物だね」



メテオ・ホールは自分の体で朱里咲を覆わずとも、周囲を大爆発させて彼女を燃やそうとしていた。しかし、その大爆発の真ん中にいる朱里咲には届いていなかった。



ドゴオオォォォン



何十発目の大爆発。

完全に朱里咲を巻き込み、炎の中に閉じ込めて見せたが



「君の炎はとても軽い」


風吹かずともメテオ・ホールが生み出した炎は鎮火していく。中にいる朱里咲はまったく無傷であった。

アレクとは違い、メテオ・ホールの力で生み出す炎は作り上げるところまでが限界であり、完全な操作は持ち合わせていない。


『ぐっ……』

「君は生み出すことはできても操れない。なら、私の"軍神"は生み出せないが操れる能力だ(厳密には違うが)」


最初こそはメテオ・ホールが優位。圧倒的な優位があった。

"超人"の要である打撃や投げ技などといった、単純な攻撃を無力化できる受け流しを持つメテオ・ホールの完全優位。

しかし、メテオ・ホールの攻撃もまた朱里咲には甘く、通じる物でもなかった。

藺もこれは計算外だったことだろう。あまりに早い対応力。


「時間は掛かるだろうが、君と戦い続ければまだまだ隙が見えるだろうね」


再び仕掛けに出た朱里咲。今度は掌打にするのではなく、メテオ・ホールを掴もうと手のひらで彼に挑んだ。

当然、スかする。"元素"のみで作られたメテオ・ホールの体を掴めるわけがない。



「惜しいか」

『打撃は効かん!この下等生物が!』


朱里咲の接近にメテオ・ホールはその煙の巨体で彼女を覆い尽くした。


『連中がどうやって苦しみ、死んでいったか分かるか!』

「!」


大爆発で死なないのなら、窒息を試みるメテオ・ホール。

木見潮の周囲の空気を消滅させる。


『酸素がなきゃ、テメェ等は生きられない。もがいてくたばれ!!』

「っ!」


呼吸という誰もが行なう動作。だからこそ、その有り難味を理解するのは危機的な状況な時だという……まったくもって嫌なときでしかない。

朱里咲はうかつにも近づき過ぎた。脱出しようにもメテオ・ホールの体積は膨れ上がり、彼女を決して外に出さない。


「がはっ」

『眩暈、吐き気、全身の痺れ、そして徐々に意識が遠のいていく!堕ちれば、死亡!』

「かは…………」

『人間共が我に勝てるはずない!貴様等はこれっぽちで死んでしまうんだからな!』


そりゃそうだ。ただ、


「なるほど、これは随分と苦しいな」

『!?』

「そうやって…………私の、アメジリカの人々の命を奪ったのか」



目の前で一瞬苦しんでいたが、すぐに顔を上げる人間がいた。


「じゃあテメェはもっと苦しく殺してやる!!」


打撃が効かないというメリットも。それはメテオ・ホールが今まで出会わなかっただけに過ぎないのだろう。煙となって、朱里咲とは比べ物にならないほど体積が増えたその体が、朱里咲の拳に乗って空へと舞ったのだ。



『ぐはぁっ!?』


メテオ・ホールの全身が朱里咲から離れていった。



「お前に打撃をぶち込む感覚は、だいたい掴んだ」

『はっ……は?』

「酸素がなきゃ呼吸ができない。確かにそうだが、お前も似たようなものだ。生きるために空気を取り込んでいる。私にかかれば酸素の元となる物質さえあれば呼吸可能。水の中でも呼吸ができる女だぞ」



なんだこいつ!?酸素を消したのに呼吸ができるだと!?じゃあ、俺の体を体内で分解し、酸素に変えて呼吸してたというのか!?どんな能力だ!?どーゆう芸当だ!?



「一発芸はこーゆう時に役立つんだよ」


瓶の中にヨーグルトをつめて、瓶を丸呑みして、中のヨーグルトだけを食し、瓶を取り出すという技術を応用しただけだ。やはり便利な訓練だった。



「今はたぶんまだ、お前を殴ることだけが精一杯だが……コツを掴めば蹴れるし、投げ飛ばせるだろう。さぞかし、私だけは気持ち良いだろうな~」

『!……くっ』

「さて、殺された連中に良い空気を渡してやろうか」




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