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RELIS  作者: 孤独
"金の城下街"ゴールゥン編
39/634

子供1人で買い物をさせると不安になるので、付いていく親と姉の気持ち


「んんっ……」


朝が来ただろう。夜は三人で一緒に歌ったり、一人ずつ歌ったりしていた。ネセリアが少し音痴だった事も覚えているし、ライラが意外にも上手かった事も頭では記憶している。

ソファで寝ることになって……。



「まだ2人は寝てるのか」


朝食を頼んでも良いのかな?昨日は良く考えたら、何も食べずに寝ちゃってた。そういえば、ここってシャワーとかはあるのかな?一日泊まっても大丈夫なところだからあるかも。ライラはシャワーをやった事がないって言ってたかな?

あったらきっと、ネセリアと楽しくやるんだろうな。ここでのライラは結構、僕達のように新鮮な事に目を向けてるし、案外、ライラって僕達のような世界の出身じゃないんだ。


「"吉原"だっけ、ライラの異世界って」


そういえば、どんなところか訊いてなかった。僕はあんまりライラの事を聞いてないな。



「んーっ……春藍、もう起きてたの」

「あ、ライラも起きた?」

「ソファで寝るのも良いけど、やっぱり布団の方が良かったわ」



んーーーっと体を伸ばし始めるライラ。さらに眠っているネセリアにも軽く抓って起こさせる。


「朝食でも頼みましょ。頼んで春藍」

「え、僕?」

「あんたが一番良いでしょ、こーゆうのに一番慣れてそうだから」


そう言われて呼び鈴を押し、マイクを通してメニューを注文する。フォーワールドで食べた事のあるハンバーガーとネセリアが好きなミートスパゲティがあったのでそれを頼んだ。ライラには、朝食パンセットを注文した。ライラにはどの料理も食べた事がないって言っていて、最初はネセリアと同じなのが良いと言っていたけど。ミートスパゲティは口元が汚れちゃうからあんまり、食べるのは良くないと思った。ライラだし。


6分後にレトルトで作られた三品が届く。メニューで見るほどのボリュームはないが、朝はそれで十分かもしれない。運ばれてくる三つの料理にライラが意外と珍しい目を向けていた。

特に僕のハンバーガーに


「それ美味しそうね。野菜もお肉もあるし、タレもついてるし」

「ぼ、僕のだよ?ライラ」

「交換しましょーよ。あたし、パンは食べた事があるからちょっと嫌!」

「え、えぇっ」


そう言われてしぶしぶハンバーガーと朝食パンセットを交換。朝食パンセットは蜂蜜味のパンにサラダにヨーグルト、バナナという健康を考えている。だが、ここでは人気が絶対ないだろう。

食べやすいハンバーガーをライラは手にとって、少しドキドキしながら一口。


「んーっ、美味しいわね。これ」

「そ、そうだよね」


同意しながらパンを食べ、サラダも食している春藍の惨め感がヤバイ。

一方、ネセリアは綺麗にフォークとスプーンを使って口元をまるで汚さずにスパゲティを食べていた。魚の骨をとるような作業をしないといけないのかなって顔で、ライラはネセリアの食べ方を見ていた。

なんだかいつもと逆で、凄く不思議で楽しい感じがする春藍とネセリア。ライラ自身にはそーゆうのがまったく感じていないのだろう。


「ライラも一口食べます?」

「良いの!?じゃあ一口、お願い!」

「了解しました~」


ネセリアがまたフォークで麺を巻いて、スプーンに乗せ。ライラの口へスプーンを渡した。ミートと麺の味にライラは


「これも美味しい!うわー、両方頼めば良かったー!」


後悔を出すほど、評価していた。レトルトだという事は言わない方が良いだろう。これは手抜きなんだって。

朝食を摂り終えた三人はこれからどうするか。昨日、雲の上でも話しをしたが確認をとった。


「とりあえず、ここを出られる準備をしましょ。"管理人"がどーゆう奴か、どこにいるか。アレクについては残念だけど、置いていく覚悟も必要ね」

「!」

「そ、そうですよね。アレクさんが結局、この世界に来ているのかも分からないですし」

「あたし達の目的の異世界は"アーライア"、それ以外はすぐに出る必要がある」


仕方ないと言えば仕方のない事。

アレクさんは結局、ここには居ない。普通に考えればそれが適切だと思う。


「アレクがいないから、あーゆう科学を操るのは春藍とネセリアにしかできないわ」

「うん!任せてよ!」

「それは、僕達もアレクさんの部下だから、やってみせる」


けれど、春藍にはアレクが操作するところを二度見ても。どのような物かまではまだ分かっていない。操作できてもきっと希望の異世界に行くのは限りなく低いだろう。

やっぱりだった。


「ラ、ライラ。提案を良いかな……」

「なに?」


怒られるかな?っと少しの気持ちもあったけれど。少しだけライラと共にしたから大丈夫だよって心のどこかに思えた。


「僕は今日、アレクさんを捜したいんだ。やっぱりアレクさんは僕とネセリアの大切な上司だし、勝手に1人。チヨダに残ってしまったようになったけれど、きっと今はいると思うんだ」

「……春藍ねぇー」

「僕が一番。アレクさんを知っているんだ!きっとこの世界で僕達を待っているんだよ!」


春藍の顔と言葉。ネセリアも春藍の声に少し頷いていたのをライラは確認した。ライラだって感情を抜けば、置いていく方が正しい。提案に頭を少し抱えながら、


「1人で大丈夫?さすがにあたしはやれないから」

「う、うん!」

「ネセリアはあたしと一緒にこの世界の情報を集めましょ、春藍が1人ってのも不安だけど、あなたも異世界をいくつも回っているんだから、大丈夫よね?」

「大丈夫だよ!絶対!アレクさんを見つけるよ!」


ライラの渋々具合と不安が混じった顔。その中に心では、見つけて欲しいってという仲間としての気持ちがあったと春藍には思っている。僕やネセリアはアレクさんの代わりにはなれない。ライラの心はアレクさんを信じているんだ。


「春藍、頑張ってアレクさんを見つけてくださいね」

「約束するよ、ネセリア!」


そう言って春藍とネセリアは固い握手をした。約束というより契約のような行ないだ。


「お金も少し貸すわ。あまり無駄はしないでね」

「うん!」

「それと働いて稼いで音楽を買おうとかも思わない、音楽を録音しないとかもね」

「平気!昨日の夜にカラオケセットを弄って音楽データを抽出したからもう大丈夫だよ!!」

「……あんた、監視カメラに映ってないから捕まらなかったのよ?」


ライラに言われた事は決してしないと春藍はキッチリ伝える。ライラもネセリアも気付いているが、春藍が少しずつ変わってきている。積極的な面はおそらく良い事だろう。

カラオケから出て、ライラとネセリア。春藍で二手に別れてこのゴールゥンを回る事になった。


「あと、なんだかよく分からないカラクリ?みたいなのがいたじゃない」

「そうだね。危なかったよね?」

「そーゆうのに出会ったら逃げなさい。あんたもあたし達も、目を付けられているかもしれないから」

「うん!!分かった!行ってくるね、ライラ!!ネセリア!!」


最後の忠告をして、春藍は飛び出すように走っていった。夜になったらまたここに集合。地図もないこの状況だ。迷ってしまうんじゃないかとちょっと思っているライラ。

1人にしてしまうとこう……


「不安なの?…ライラ」

「す、少しよ!どこかで捕まったりしたら嫌じゃない!」

「そうですわね。じゃあ、私達はどこへ聞き込みに行きます?」

「そ、そうねー……。春藍が行った方に行きましょう。歩きながら人に聞き込みましょ!」

「ふふふふ、心配なんですね」



ネセリアが微笑んで言うものだから、ライラは顔を赤らめて



「……うん」

「私も春藍が心配です。一緒に行きましょ」



普通の顔をしてそーゆう事が言えるのも、ネセリアが春藍と付き合いが長い事を現しているんだなってライラは思った。人を心配するって結構、恥ずかしい感じなんだなって。ここの世界での体験は、自分にとって珍しい事ばかりだと、ライラは感じた。

ライラは空に自分の雲を飛ばし、春藍を空から自動追尾し位置だけは確認できる技を使った。

春藍からは決して悟られない空からの尾行と、地上で追いながら聞き込みを始めようとするライラとネセリア。

二人は出会った人達に声を掛け、


「あのー、お聞きしたい事があるんですけど」

「"管理人"という人について調べているんですが」


一通り話しても大丈夫そうな女性、暇そうな男性をメインに聞き込みを開始。"管理人"と訊くだけですぐに、"ウェックルス"という人物の名前が挙がった。

この世界の支配者と呼ばれ、多くの人間は彼の事を嫌っていた。音楽の良さしか存在させないこの世界。好きでも、才能がなければ酷い道に落ち。好きでもないとなったら、余計に嫌な世界だ。音楽だけを強いる社会、暴動が起きてもおかしくはないが、"ポリス"が街中に配備されている事から暴れたとしても殺されるだけ。

住民達は、"ポリス"という存在から戦うための教育と意志を捨てられ、恐怖と服従を植えつけられ、音楽で人生と戦う道を選んでいる事を知った。

ネセリアには少しだけここがフォーワールドと似ているなって感じた。(結構今更)

7人くらい、この世界の情報を聞きつつ世間話もしていると、結構楽しい事だねってネセリアには思えた。色んな話を聞けて、心に残る物もあった。



「音楽が全ての世界って、凄く素敵なようで恐ろしい世界ですね」

「…………こーゆう"管理人"もいるのよね。あたしのとこ、桂って奴が"管理人"だけど、人々に強制させるような事はあんまり無かったわ。義務を子供達に与え、自由を大人達に与える世界だったわ。それでも大人になったら、自由過ぎるという義務がちょっと辛いのよね」

「そーなんですか。いつか行ってみたいです!ライラの世界!」

「よ、余裕があればね。桂に見つかったら、あたしとんでもなくボコボコにされそう」

「ライラが怖がるほど凄い人がいるんですか、世界って広いですね」

「ふふふ、そうよね」



ライラはネセリアや春藍にも気を配りながら、時々見える"ポリス"にも警戒していた。昨日の出来事を記録していたら捕らわれる危険もあったが、どうやらその気配はない。春藍なんか、なんであんな近くで堂々と通れるのか分からない。何回危ないって思って飛び出そうとしたか。

この動きを考えると、雲に乗っている間に起こった爆発のアレの影響かとも思えた。

事故かと思ったけど、どうやら事故ではないらしいと尋ねた1人も言っていた。人為的な何かが加わっているとしたら、その犯人を捕まえる事に労力を使っているのだろうか?

それならそれで少し好都合かも、



「あの遠くにあるらしい、中央でドームっぽい形をしたところがウェックルスの拠点だそうね」

「ライラの雲に乗っていた時には見えませんでしたけど、相当遠くにあるのかもしれませんよね。移動できる科学でもあれば便利なんですけど、徒歩が基本ですし。牛さんを用いたバスっていうのは決まったところにしか行かないし、距離も遠くには行けないみたいですね」

「人間にはなるべく制限しているのよ。そうやれば力による支配って結構しやすいのよ、意志も体力も、勇気も削られた人間は、力を持つ者に服従して楽な道を選ぶわ」

「ホントに恐いですね」



ネセリアはフォーワールドよりも悪化している世界だと思い、少しクロネア達がマシではないかとも思える。人間に下がいるように管理人にも下がいる。

悪は無限である。だが、支配と管理は悪ではない。管理人、ウェックルスはこの行ないはただのやり方だと思っているのだろう。



「ん!」

「どうしました?」

「いや……」



ともかく、ウェックルスという"管理人"のところへ乗り込むのはアレクと合流してから。春藍が見つけてくれればなおの事良しだったのだが、これまで春藍は周りにアレクがいないか確認するかのように見ていたのだが、初めて。

その、ビックリしてしまったが。街の人に尋ねるという手段に出た。なんだか成長したんじゃないって思い、ライラとネセリアは物陰から春藍を覗くと



「なぁっ!」

「えっ!」



ライラとネセリアの表情がおそらく同じだったろう。不思議な事に。

春藍が話かけてみた女性は誰かを待っているような顔をして、良いところのお嬢様のような高貴な位を持ってそうな、遠目では自分達並に綺麗そうな大人な女性に春藍は話かけたのだ。


「あ、あの~、少しお聞きしたい事があるんですけど」

「あら、なにかしら?」

「今、大丈夫ですか?」

「変なご質問や、長い質問でなければ平気ですわ。ワタクシ、人を待っているだけですの」


その言葉を聞いて、ちょっとホッとした春藍は一呼吸してと、気持ちを整えてから彼女に質問してみる。一方で尋ねられた側の彼女は春藍の事を観察するような目をしていた。


「この近くで綺麗な白衣を着ていて、タバコを吸ってたりしていた。こー、ワイルドなおじさんを見かけませんでしたか?あ、カッコイイおじさんです!!アレク・サンドリューという人を僕は捜しているんです」

「まぁ、そうですの」



喋りながら特徴を教えようと手が動く様、まるでアレクがいつもやっているような細かな動きを真似ていた春藍。その動きがなんなのか訊かれた彼女には、なんの意味か分からなかったが。とにかく、彼女が思ったのは



この子、結構可愛い子ね。



であったのは本心であり。遠くでその光景をマジマジと見ていたライラとネセリアにも、それが分かった。明らかにその可愛いは可愛いではない。なんかやばい。

薄く笑ったお嬢様は、そこから花のような笑顔になった。左目が髪で隠れていても笑っている。



「ワタクシ、教える事ができますけど。もう少しだけ、ワタクシとお喋りを致しませんか?」

「へ?」

「とってもあなたからは楽しく、面白そうな事を感じます。一曲、歌いません?」


そのお嬢様は、黒リリスの一団。リアだった。



「1分もすればワタクシの友達が、アイスを買ってきます。一つ足りませんけどね」



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