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RELIS  作者: 孤独
構築編
377/634

戦場、速攻

「そーじゃ」



藺と山羊波は確かに強い。

だが、2人の欠点は接近にあった。距離感の見誤りと言えば



「!?」

「あら」


正しい。10数mは離れていたはずの間合い、わずかコンマでやってきやがった。知っている"超人"王よりも動きが速かった。


「10秒は掛けません」



アルルエラの"独楽"。超短期決戦能力。発動すればロイよりも速く、力強い。

敵がどっちの能力を持っているか不明であったが、どちらにも時間はかけない。




バギイイィィッ



両腕がへし折れる藺。肩を外される山羊波。圧倒的な身体能力を前にし、山羊波は震えてしまった。予期せぬアクシデント。



殺される!



一種のパニック状態。脅威が自分に向けられた時、真に自分の気持ちが吹き出る。当然のことだ。その些細な変化をアルルエラは目の端で捉えた。

女は大丈夫だ。敵じゃない。

アルルエラの読みは経験からだった。どちらを先に殺すかを考え、やりやすい方ではなく、逆に殺しにくい方を選んだ。



「いった~~~」



吹っ飛び、地面に叩きつけられてもポーカーフェイスと余裕を崩さない。



「髪が」



七三分けに戻そうとした藺の行動を止めるだけでなく、より乱させるよう。アルルエラは藺の額を蹴り上げて、宙へと吹っ飛ばした。見事な一撃であり、それを目撃した山羊波が恐怖するのは事実。怖い存在に意識がいくのは当然。



バヂイィッ



「っ?……かはぁっ」



山羊波の胸部を貫いたのは夜弧の弾丸であった。不意に喰らい、倒れこみながら転がってやり過ごそうとするが、夜弧は逃してくれない。

2人には時間がないからだ。

速攻を言葉なしに、やってのける見事な動き。




「家政婦さん、欲しいですね」


痛み、血の流れ方。

平静でいられるわけがない。しかしなんだ?


アルルエラは藺の不気味さを間近で知れた。管理人とは違うし、人間であるのは確かだろう。

見た目、雰囲気、どれも凄みは感じない。生きているとも読めない。

だが、彼からはライラやアレクのように耀いた意志がある。役割を真っ当するため、生存を義務付けられた。神秘的に言えば、彼が世界に必要だという意志。



グジャアァァッ



「っ!?」


夜弧が一度だけ、藺とアルルエラの戦闘を見てしまった。

アルルエラの拳が的確に藺の顔面を叩き、凹み。血飛沫がアルルエラにかかるほどの一撃だった。藺の余裕が分からなくなる渾身の強打。

決まった。即死。アルルエラも、夜弧も、山羊波も、この一打で理解しただろう。




「あぁ~……死んだ」

「!?」



だが、確かに聞いた。アルルエラの耳に届いたのだ。



「仕事、始めます」


その言葉を最期に。藺の体は地面に突き刺さった。もう喋れないはずだ。

アルルエラの意識は藺を嫌うように、背まで見せて。残る標的。

山羊波に体を向けたのだった。



「待って!」



山羊波を助かる手段を模索する。接近はマズイ。これほど、自分が戦えないとは思わなかった。

"五月病"に侵されているはずなのに、その濃度がまだ足りていないからか。夜弧とアルルエラの動きにまだその淀みはまだ現れていない。

夜弧は山羊波の魔力の動きを警戒している。彼女は藺の能力を知っており、彼女が春藍とライラを倒した能力であると断定できた。

そのため、山羊波を殺すことに一切の躊躇はなかった。



決して山羊波に触れる距離に入らず、かといって離れすぎず。ライラが障害物までも全て壊したことで射撃の優位は変わりない。

山羊波が藺とのやり取りで負傷していたことは察して、意味のないことだった。



「あ、あ」



どうすれば助かる?どうすればいい?

何この状況?なんですか?ちょっと、私。この異世界を纏めていた存在よ。どうして、どうして?賭けすらしてないですよ?

これが戦いというのですか?理不尽な、あまりに理不尽な



「終わり……」



山羊波は錯乱しながら逝く。何も考えられなくなりそうな、



パシィィッ



「え?」


自分自身が"五月病"に侵されそうな山羊波。精神的に壊れそうな状況下で、自分を救いそうだったのは自分だった。

夜弧の背を掴んだ男。山羊波の魔力を纏い、やってきた男。


「殺させねぇ、藺は護るんだ……」

「あ、あなたは」



王震源。"五月病"に侵されているはず。しかし、彼は体を、気力を振り絞ってここまで来た。

両の手を落ちていたナイフで突き刺し、ボンヤリとする意識をハッキリさせる。

フラフラであるが、夜弧の背をとるには十分過ぎる状況だった。



バキイィッ



夜弧の背から掴み、彼女の両手首を捻り落とした。

しかし、その攻撃はまだ弱いものだった。本来の攻撃は自ら感染した"五月病"



「ッ…………」

「あんまり粘るな。諦めろよ」



夜弧も必死であったが、王は夜弧の"トレパネーション"の要が両腕であることを知っていた。このアドバンテージを活かし、先に両の手から潰したのだ。

あとは夜弧と共に意識を眠らすだけだった。



「夜弧さん」


アルルエラは王を狙わない。どう考えても、山羊波がこの感染の要。夜弧を救う時間すらもったいない。言葉だけを吐いて自分で山羊波にトドメを刺す。

女を屍に変える惨いほどの打撃の嵐。山羊波はゾッとした表情ですら、作れないほど惨く殴られ、叩きつけられ、歪められる。

痛みだけを味わって手にしたものは……



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