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RELIS  作者: 孤独
構築編
373/634

山羊波春狩の性癖と本質


ギャンブルの楽しみとはなんだろうか?


自分が血を払ってでも戦い、勝利した快感を楽しむものか?

相手を容赦なく蹴落とすことか?色々と物事を楽しむというのは人によるだろう。



「ふむ………」


真剣に藺は山羊波から出された難問の前に、頭を必死に回しているような表情で52枚のトランプと向き合っていた。

フリーセルというゲームを経験している人はそう多くないだろう。むしろ、ギャンブルの題材にフリーセルを持ってくる辺り、


「やはり困りますよ。一人用のゲームですよ?ぼっちでタダ好きの奴がやる」


その一人用ゲームに頭を回している藺の表情を山羊波は一切見逃していなかった。イカサマ防止という目もあるのだろうが、その警戒心は3割ほど。

目に宿っている魂の鼓動を藺は山羊波に問いかける、



「人を困らせるのが好きなんですか?」

「…………」

「始めてからずっと、僕のことを楽しそうに見ていて……。私、あなたのような人間は嫌いですよ?」


藺は発言するも一向にトランプから目を離さない。山羊波のことを見ていない。

目を合わせないまま、交渉を始める藺。



「あなたはそれだけの人間じゃなさそうです。ギャンブル好き。あくまで性格です。私を見抜いて呼んだのは自分の命をどう扱いたいか、相談したいからじゃないですか?」


藺のゆっくりとした口調は徐々に山羊波の性癖を和らげていった。



「あなた、苦しんで死ぬタイプじゃない。もちろん、自決するのも嫌い。このまま、ただギャンブルばかりやっていたら、本当にギャンブルもできずに死んでいく」



でしたら、死に場所を教えましょうか?



「……随分、ペラペラ喋りますね。藺さん」

「トランプばかり見てると思いました?ぶっちゃけ、考えていることはあなたを説得することだけですよ」



真剣に勝負する気がない。例えば、賭け事がポーカーや花札、麻雀といったものでなくても。藺はその手を止めて説得に使うことだろう。勝利によって得る約束なんて、少年同士のような忠誠心に欠けたやりとり。真っ当な話し合いこそがお互いの損得を明確にできる。

山羊波がようやく反論する言葉を使ったことで、少しだけ希望が見えてきた。



「死ぬのなら絶頂のまま、くたばりたい。そんなタイプ。いくら今、あなたがこの異世界の頂点に立つとはいえ、異世界の運営は上手くいっていない。元々、様々な異世界とのやり取りで存在が確立されていたところですからね」



山羊波の性格は人を蹴落とし、嘲笑うことにあるだろう。弱い者虐めが中心。

しかし、彼女の本質は無関係な死を嫌う。勝負せず、負けたくないこと。

孤立死の拒絶。



「なんでしたらあなたを救いましょうか?私、あなたのお力を信頼してますよ?とはいえ、自由にさせる気はないですが」

「私を救う?じゃあ、私を連れていくというわけ?」

「ええ。自由は多少与えますけどね」



その言葉を待っていた………。とは思えない山羊波の表情。

彼女の手が初めて藺の頬に触れた。


「そーいう顔、嫌いじゃないですわ。しかし、……」


トランプばかり目を向ける藺を無理矢理、自分の目に合わせて伝える。


「いつからあなたが私の上に立つつもりなんです?言ってみろよ。言えっつってんだよ!!殺すぞ!!」


優しいトーンから徐々に怒気を見せる山羊波の迫力。彼女に自信があるのは明らかだ。


「怒る姿が可愛いですね。私、あなたのその表情が好きですよ」


告白してみる藺。別に動揺なんざしない。むしろ、腹立たしさが湧いてくる言葉遣いだった。山羊波の怒気はそのままであるが、言葉が出ていない。


「王様気質。いや、王女様の風格がありますよ。山羊波さん。しかし、そればかりではあなた助かりませんよ?」

「うふふふふ」


藺の挑発についに表情だけでなく行動を移した山羊波。藺の首を握り締めたまま、椅子から叩き落として床に押し付ける。



「それはあなたが先でしょう?ねぇ?あなたも石ころにしましょう」



山羊波春狩

スタイル:魔術

スタイル名:五月病


スタイル詳細:

精神型の魔術。山羊波の身体から発する魔力を浴びた者は精神的に怠惰、もしくは楽を求める感情になってしまう。浴びた者の魔力をさらに媒介とさせ、感染範囲を拡大させる。



「私の家系は人を石にする、職人一家なんです。無論、知っていますよね?」


その石が"アルテマ鉱石"と呼ばれ、大変に貴重な物として扱われているわけだ。しかし、造られる過程は非常にグロテスクなもの。奇跡0の一品。



「こうして、生きるだけの人間を作ってそのまま特製のお鍋で煮るの。この時、 人間が苦しんだ表情で鍋から外に出ようとするから蹴落とすのが重要。不純物なく熔けきるまで続けるの。だから、施錠はしないの」



山羊波はその一家の中で最も優れた職人であった。人間を石ころに変えるだけでは芸がないし、そこまでの効力がない。

人間に宿る魔力を最大限に引き出させ、石ころに変える。これがアルテマ鉱石の質に関わる。生け捕りであるのが理想であり、健康的であり、精力も剥きだしのままするのが最上級。

山羊波の"五月病"は生け捕りにおいてはかなり優れた能力。



「っ……ううっ……」

「私の魔力は精神を乱す。無気力に追い込めばどんな力も封殺する。意識を失わず、反感もできない状態にするのがとても鍋に突っ込むのに適しているの」


藺は最初こそ、わずかな抵抗をみせたがすぐに山羊波の魔力に毒される。

闘志があるのならそれが大雨で打たれ、沈むのと同じ。何も考えられなくなり、焦り、不安、それを通して無駄になれば無気力に行き着く。



ぺタンッ



「私の両手に2分ほど触れていれば半日以上はロクに動けない。さぁー、石となって新たな人生へ進みましょうね」



意識を半分失い、床に転がる藺に口付けをする山羊波。

しかし、彼女は10秒後。同じ気持ちを保てなくなる。



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