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RELIS  作者: 孤独
言語編
361/634

レモン・サウザンド


レモン・サウザンド。

"文学楽園"インターシグナルにいた、唯一の戦闘要員とも言える存在。

いや、暴力装置か。



『噂は聞いていましたよ、なんでも文字を操る科学使いなんですよね?気に入りますよ』


藺兆紗と奴は言っていた。

彼が強いというわけではなかった。圧倒的な数で我々に脅迫を仕掛けた。


『どーです?私はレモンさんに興味があるだけなんです。武器を持ってあなた方を脅すつもりは得にもならないんです』


レモンは人間であり、藺を迎撃するため出撃した。しかし、あの謎の緑色の煙によって動きを封じられた。暴力は彼女しか知らなかった。彼女が倒れた時、襲われている実感から食われてしまった実感に変わった。


『あなた方の命と、ただ1人の少女の命。交換でどうです?私は契約を守るタイプですよ』


そして、力を持たない者は生き残った。





「どのようなご用件でしょうか?」


春藍達の前に現れたのは管理人がいなくなり、その後を引き継いだ人間。いつも通りの営業を続けているわけだが、不安もあった。


「人を求めているんだ」



アレクが4人を代表して話した。向こうから出向いてくれたのは嬉しいことだ。どうやら、ここの世界の住民は自分達以外を強く警戒していた。声を掛ければすぐに逃げられしまう。話し合いができても、形になってくれない。


「俺達の異世界は今、人々が言葉で通じ合えなくなった状況なんだ。ここは色んな言葉を理解でき、それを生業にしているのだろう?」

「……立ち話もなんでしょう。私の部屋をどうぞ」

「ラフツー理事長」

「悪人でもなさそうです。あの藺と似た感じはしますがね」



文学楽園、理事長。ラフツー。

現在は彼がトップとなって、異世界を回している状況だ。フォーワールドと違い、まだ流通や商業で起こる影響は少なかった。


「コーヒーを出してやりなさい」

「はっ」


ラフツーの顔は警戒ではなく、迷いに近い。


「でー……えーっと」

「アレクだ。こっちは春藍、向こうの女の子が謡歌。奥が若だ。俺が代表して話すつもりですか」

「そうですか。アレクさんですか」



まだちゃんと自己紹介をしていなかったが、事情さえ聞ければ良いという顔。


「言葉が通じ合えない。ここに務めていた管理人様も、その危機を恐れて我々に文学を仕込まされました」

「!……?」

「管理人がいなくなり、危機が訪れた。それは少し前から知っています。私共はおそらく、人と人を繋げる言葉を伝える存在ですからね」



ラフツーはコーヒーを一杯頂いて、アレクに問う。


「私共はそのためにおられる。が、協力するかどうかは人間が決めよ、と……つまり今は私ですね。私次第で付き合うつもりです」


言葉しか持たないラフツーにとって喧嘩は売れなかった。その差は確かにあった。待ち人であり、人を選べぬ状況。


「何か望む物が必要なんだな」



言葉とは大切なものであり、当たり前のように使えればそれまでの存在だ。



「藺兆紗」


ラフツーが出した答えは一人の人物。



「先日のことですが、私達はその男等に襲撃された身です。住民達があなた方に不安を感じていた理由です」

「藺兆紗……?」

「そいつって……」

「もしかして、スーツ姿の男性ですか?」



出会っていた春藍と若が、ラフツーに問いだした。あの不気味な存在が一足早くここに来ていたという事実。


「知っておられるなら少し話が進みます」


春藍達と出会った人物と同じであることを、ラフツーが頷いた。


「彼等は私達全員の命を引き換えに1人の少女を要求しました。私達には戦う力がなく、少女を引き渡して命を繋いだ身。とても情けない」


レモン・サウザンドは危険な存在だ。


「その子を救出して欲しい。あるいは、悪いように使われないよう。始末をして欲しい。それを条件とするなら君達の要求を呑もう」



春藍達からすればほぼタダ同然の要求であるが、それほど危険視する少女とは一体何者なのか?



「俺はその男に会ったことはないが、なるほど」


アレクはラフツーの言葉を聞き、とりあえず。


「その願いはできるだろう。なぜなら、俺達も異世界を移動できる身。自分の世界を守ることを中心に忙しい身だ」


その言い方はラフツーの要求に応えてやるというものではない。


「おそらく、俺達と似たような奴等がいれば激突するのは時間の問題だ。その時に救出でも、始末でもしてやれるさ」


アレクの推察は正しいだろう。


「俺にはまだ仲間が自分の世界に何人もいる。今は言葉が通じ合えないから上手く会話もできない。俺達の望み、仲間との意志疎通のためにこの世界の力が欲しい。藺兆紗をぶっ飛ばすには仲間の状態も重要だ」


今、命乞いをするべきはアレク側の方である。しかし、それを感じさせず。逆に押してしまうのが、暴力持ちという点だろう。

ラフツーを見て、アレクには分かった。



言葉では力を抑えられなかったと。

平静を装っているが、穏便に済ませたい。誰も奪われないようにする。それがラフツーの望み。本来の望みである。


「しかし、少しだけ聞きたいな。レモン・サウザンドとかいう、少女?一体なんの目的でそいつ等は攫ったんだ?危険な場合、いや。もしくは戦う場合となればその力とやらを知っておきたい」




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