クォルヴァのべしゃり会議
「囚人の身ではあるとはいえ、一管理人であるからね。色々な情報は仕入れていたつもりだよ」
その場での話し合いとなった。それはまだクォルヴァがどれだけの人物か調べるためのものであった。
興味津々に聞くのは春藍とロイ、若の3人だけ。他の3人はクォルヴァを図っている。
「若くん。君はパイスーと出会い、管理人だけでなく世界中に混乱を引き起こした。その責任は今とるべきことだ」
「いや、思いっきり。ライラにやられてもう勘弁してほしいです」
自分の姉。ライラにボコボコにされて、顔が腫れ上がっている若。
「君を野放しにしてしまった理由も……あえて言うなら、私の意志かも」
「どーゆうことよ?」
未だに。若と同じく、ライラもクォルヴァの言葉を信じられない。でも、若と自分には何かがあるとは思っていたようだ。
「捕まってしまえば私は何もできない。情報を知るだけしかない自分だ。私と似たように何か動く人がいてほしいと願っていたのかも、その時はね」
危険な人物的な発言。
RELISを作り出した本人であるし、遠因でパイスーと管理人をぶつけ。その後、ポセイドンを動いたところを含めた。
「あなたが全部悪いんじゃない?」
「言ってくれるね。ライラちゃん。そーでなくちゃ。その通りだ」
収容時間だけが刑罰とは生温い気がしてきた。反省している感じがない。
「しかし、人類はいずれそうなっていた。ポセイドンも、桂も、管理社会を続ける気はなかったはずだ。どーゆうきっかけでそれを離すべきか……」
「あまりにも急過ぎるんじゃないのか?俺が言うのもなんだがな」
アレクはタバコを吸いながら、クォルヴァにキツイ指摘と自分への批判覚悟で伝えてみた。
「ハッキリ言って、あんたよりポセイドンの方が人類について考えているよ。やり方はともかくとして、何事にも段階を踏む必要がある。今、いきなりこうなってしまったんだ」
「アレクが言っていいのかよ。お前、また……」
「言わせてもらうぞ、ロイ。管理人同士の戦争によって双方が失うという最悪の結果。あんただけが残った。俺には、あんただけが生き残るために仕組まれた戦争だったとしか思えないんだがな」
そこまで誰も考えてないだろう。妄想の領域に過ぎないが
「戦争とは参加した時点で死ぬものだ。私はそこまで考えてはいなかったけど、桂が最後にここへ必死のお願いをしに来ていた」
クォルヴァは髪を弄りながらも、桂の言葉を守りたかった。
「形はどうあれ。私のやれることは全てするつもりだよ、アレクくん。心配はいらない」
どれだけ反省してもしょうがない顔。むしろ、反省は終わった顔か?
やれることをする。たったそれだけしか、結局は罪を消せないんだから。
「俺からはいい。ライラ、何かあるか?」
「いきなしの、爆弾発言。……は置いてあげるわ」
ライラはクォルヴァの言葉を信じたとして
「桂が認めているんだから、あなたって相当優秀ってことよね?喧嘩腰なのはあなたのせいだからね」
「やれやれ、桂の育成が間違っているんじゃないかな?」
もう女の子って歳じゃないんだろうけど、女性じゃない威圧感。春藍君の方がやや女性に近いんじゃないか?
「悪いけど、全てはあなたに賭けている。人類だけが世界を回せるまでの間。あなたにはずっと補佐をしてもらうからね!」
自分に何ができるか、お互いがそう思っただろう。やっぱりというか。こーいったところが、教えじゃなく。魂の共通点。
もし。君を一から教えられたら、
「いいよ。何でもやるさ」
クォルヴァは承諾した。そして、同時に何かを思い出した。
「そうだ。誰か体を貸してくれないか?」
「え?何その発言」
別になくてもいいのだが、クォルヴァの肉体はほとんどボロボロであった。桂やポセイドンと違って、戦闘どころか肉体を動かしたのは久々だ。
「私の体は疲れやすくてね。誰かの体を借りられれば、半永久的に動くことができる」
「なんだかよく分からないけど、私は嫌だから若にしなさい」
「ええっ!?何その指名!?」
「いいじゃない!とりあえず、弟!!姉の言う事くらい聞きなさい!」
若に拒否権などない。クォルヴァは若に近づいて、優しく抱きついた。何し始めるの?っと思った連中は多いだろう。
『融合』
クォルヴァの、"エターナル"の能力。その1とも言える力。
若を離さず、クォルヴァは背からドンドン、消えていく。そして若の体が眩しく耀き出す。
「おおおぉっおおっ!?」
若も精神が壊れそうなほど、奇天烈な動きをしてしまう。意識が吹っ飛びそうだった。徐々にクォルヴァが消えていき。若の体が発した光が消えたときには完全にクォルヴァが消えた。
若の意識はぐったりとしていた
「…………」
「だ、大丈夫?若」
「クォルヴァさん!」
この状況でどっちの名前を呼べばいいか分からない。数秒後、意識を取り戻したのは
「うーっと……うーーん!成功だ!ライラちゃん、春藍くん。よろしくー!」
「若の声だけど、テンションが違う!」
「融合って奴か。若の意識はちゃんとあるんだろうな?」
「気にするねーアレクくん。心配はいらない。今、若の体を乗っ取っている状態で、彼の能力も私が使うことができる」
その言葉を聞いた瞬間。不安要素だった若の離脱がほぼ解消されたと言って良い。
「クォルヴァが若を抑えてくれるなら、ずっとそのままでいいわね!」
「ライラ。それはちょっと若に酷いんじゃ……」
「おっと。ちょっと待って」
クォルヴァは胸を2回叩いて、自分の意識を閉ざした。すると、今度に意識が表れたのは若のほうだった。
「なんだこりゃー!僕の自由は何処行ったんだーー!?」
「今度は若になったぞ」
「面白いな、見ている分にはな」
「やられる方はたまったもんじゃないよ!!」
若の意識はクォルヴァによって操作されている状況だった。再び、意識を無理矢理閉ざされてクォルヴァが現れる。
「若くん。これも君の罪の償いさ」
「5年間、"遺産もない図書館"に閉じ込められているんだから、耐性はついているんじゃない?」
「それとこれとは違うような……」
「ともかく、フォーワールドに帰ろう。ヒュール達は俺達の帰還を待っているんだからな」
春藍達はクォルヴァ達を連れて無事帰還することができた。しかし、それは唯一のあるチャンスを潰してしまった。それはまだ先のこと。
藺兆紗と王震源は、メテオ・ホールが敗れた場所に辿り着いた。
「いや~~ビックリしましたよ?あなたほどの実力者がこっぴどくやられるなんてね」
アレクとライラはメテオ・ホールを逃してしまった。致し方ない。なにせ、メテオ・ホールを完全消滅させるのは難しい。
『き、貴様ぁっ』
「ふふっ。随分小さくなって丁度いいですね。可愛いですね」
巨大な体を切り離し生き延びたが、若を脅かしたほどの魔力はもうなくなってしまった。とても小さな緑色の煙となっていた。
「王くんもなんか言ってやりなさい。私ばかり言っていたら、私だけ命を狙われちゃいますよ」
ならば、相手を挑発する言葉を遣うなよ。
人間と魔物の違いがある。それを王はメテオ・ホールに教えた。相容れぬ存在であるが、
「油断したな」
『ぐっ』
「人間を……いや。お前は戦闘を舐めている。強いと驕っていたからお前は死に掛けた。良かったよ、まだ生きててな」
教育という意味を込めて出した言葉は藺よりも遥かに人間身のあるものだった。
凡に教わるという屈辱を味わったメテオ・ホールだったが、その通りだったと理解と反省、受け入れが王の言葉からできた。
「優しいですね、王くん」
「それでどーするんだよ、藺」
「そーですねー。色々とやりたいことは分かりました。良い出会いもありましたし、人材戦争を始めましょうか」
藺は春藍達と出会っただけで争うべき好敵手達と察知した。一方でまだ春藍達には藺達が、不気味な存在としか思われず、明確な目的を掴めていない。
その差は確かにあった。これから起こる大混乱に
「私共だけじゃない」
春藍達のカードは、若とクォルヴァ。
藺には、王とメテオ・ホール。
そして、2つだけじゃない。異世界は多く散り、この大混乱を今も味わっている。優れた者達だけが生き残れる状況は続いている。