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RELIS  作者: 孤独
引継編
354/634

夜弧って誰なの?②


あなたが現れ、今の私に続くというのか。



「ねぇ、あなたも私と話したかったでしょ?」


夜弧の相手はとても絶やさない笑顔で夜弧を見つめていた。彼女はずっと、こうなのだろう。死を知る者。



「伊達・ネセリア・ヒルマン」


夜弧とはまったく関連性が見えない女性の名。今から五年前、夜弧からしたらもっと前、



「あなたは今から5年前、リアの凶弾によって命を奪われた」

『……………』

「絶命したあなたは強く願った。その願いが"RELIS"を引き寄せ、私に意志を引き継がせた」


稲妻のような衝撃だった。生きていた自分がどこかに吹き飛んで、伊達・ネセリア・ヒルマンとして生きた時間もあった。



「"RELIS"に侵されたあなたと私」


再び夜弧になったその時、あの時の自分もやってきたネセリアもいなくなったのか。夜弧はここまで事態にネセリアの胸を指差して、突いて宣言した。


「あなたがあって、今の私があると思っているつもり!?」


夜弧はネセリアを嫌っていた。それはずっとずっと前からのこと


「私にはとても重たい!あなたと会ったから、私は故郷を捨て、皆を、師を……藺様を死なせてしまった!もうたった1人しか私がいた時間を覚えてないのよ!!」

『………………』

「デカイ胸もってて、華奢な服を着て、争いも知らないで、ただずっと。ずっと楽しそうに笑っているあなたの気持ちが許せなかった」



懸命な夜弧と、その懸命さを知らないでいるネセリア。彼女の成長は夜弧に意志を届けるところで終わっている。だから、ネセリアにはもう死も進歩もなかったのである。



「戦っていることをあなたは見ているだけ!!私が、春藍様の気持ちになっているのも!私のおかげだって言うつもり!?」



何も答えてはくれない。ネセリアは見守るだけ、第二の人生。夜弧を最後まで見守り続けるという感情がない場所。



「はぁっ……はぁっ……」


世界を守るために来た。ライラと同じようだ。でも、夜弧には



「私には無理よ。辛い……。色々な物を捨てて、口を閉じて、秘密を守って、管理人からも逃げ続けた。そーしてこの状況までして。はははっ」


その資質がなかった。勇者とかそういった類には才能が含まれるだろう。しかし、夜弧の場合はネセリアというイレギュラーによってなったに過ぎない。

もっとも苛烈な時代を知り、春藍を知り、ライラを知り、アレクを知り、ロイを知る。重要なキーマンが彼女に宿ったからこそ、指令が出たのだ。



「結局、みんな帰ってこない。あなたと私だけの異世界」


10年以上も寄り添っていた場所と人間関係。辛い事もあったけど、もうその人達と会う事が叶わなくなった事実。



「"時代の支配者"を討つ為、私はここに送られた。みんなが助かる世界になるためにって……そしたら、私以外皆、いなくなって。まだその途中なのにどうしてさ」



夜弧はもう。



「私だけじゃん!!どうしてよ!あなたの……あなたのせいで!私が、酷い目にあい続ける!私は…………」



夜弧のままでいたかった。大切にしたい物もある。


『夜弧には私がいる』

「!?」


幻覚だろうと、ネセリアは言ってくれた。


『大丈夫。私がずっと、あなたの中で見守っているから。泣いたって、笑っても、良いんだよ』


ネセリアには夜弧の目的について深く考えはしないだろう。あるのは続いた夜弧という人間。この人をただ、


『頑張ろう。まだ、夜弧の力は春藍達のためになる。ずっと無理もしなくて良いから、力になれることだけをしよう』



その気持ちはやっぱり夜弧を見守ることしかできないわけだ。楽で良い。きっと、楽で良い。



「自分が何もしてないじゃん」

『ううん。私は夜弧を知っている。あなたを知っている』


今、夜弧を知るのは


『きっとこれからもあるよ。私も、皆も、あなたを信頼しているんだよ』

「………」


ネセリアだけだった。

けれど、


「これから私が今のみんなを大事にして欲しいわけね。あなたの優しさが時折、嬉しくて嫌になる」



心が許せるのはそう遠くはない。使命じゃなくなる時、自分に気付けるような気がする。




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