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RELIS  作者: 孤独
引継編
353/634

夜弧って誰なの?①


王震源

スタイル:超人

スタイル名:MIIMミッション・インポッシブル



締め技や関節技に特化した超人であり、その性質上。多勢の相手は苦手としているだけではなく、強者より強くない能力とも言える。


ロイの見立て通り、王の身体能力は決してずば抜けたものはない。

しかし、この能力に向いているのはタイマンよりもさらに悪辣な、奇襲にのみ特化していると言える力。暗殺能力に関してはロイやアレクよりも向いている力。



「なめんなぁ!!」



打撃や投げを得意とするロイ。それは自分の身体能力がかなり高いからである。事実、王の関節技をほとんど力技で解いてしまうのは真向から王がロイに勝てない証拠であった。



「力で俺の関節技を外す奴がいるとはな」



たいしてダメージはない。精神的にも、予想はしていた。


「それがお前の特技か!?悪いが、俺を締めるまでには至らねぇよ!」


立っている状態から素早く技を決めていた。もう少しタイミングが遅かったら、力技でもロイは突破できなかっただろう。

隙さえ与えず、じっくりと守りながら戦えば負ける可能性は無い。一方で手の内を先に見せた王には苦しい。負けは確実。



仕方ない。自分はこーいったところに向いている。




時間を稼ぐことに徹しようとしたその時。藺が後ろで手を叩き始めた。



パチパチパチ



「王くん、ここは退きましょう。大健闘でしたよ」

「!そうか」

「おい!俺がテメェ等を簡単に逃がすと思うか!?」



ロイの警戒は当たっている。しかし、彼の目はこの状況しか捉えられていない。藺は王がロイに仕掛けている間に別の戦場の結果を知り、不利を感じ取った。

想定外、メテオ・ホールの敗北。そして、ゆっくりとであるがライラとアレクがこちらの方へ向かってきていること。出くわす可能性はないだろうが、王がロイに敗れるのも時間の問題だった。そうなれば一溜まりもないのは明らかだ。



「私は王くんを置いて行きます、君が戦おうというのならね」

「…………」

「なんだテメェ?そいつが仲間じゃねぇのか?」

「仕事仲間ですよ。ええっ、捨てることも捨てられることも仕事なんですよ」


ただ一つ、藺達が逃げられる隙があった。


「手を退いた方が良い。あなた、このままでははぐれます。君が行かせた3人になんの目的があるか分かりませんが、君しかまともに戦える存在がいない。そーではありません?」



藺の状況を把握してしまう、その眼はとても厄介だとロイには分かる。


「王くんに勝てるでしょうが、長引きますよ?私もその間に逃げます。ここは手を退いて、あの3人を追いかけるのが両方にとって最善ですよ。ロイ。手合わせと言いましたしね」



ここの異世界に土地勘があれば藺の要求にNOと言えただろう。

メテオ・ホールとの遭遇を含めると、春藍達が危険な状況であるのは分かっている。そして、自分もはぐれれば終わってしまう。

夜弧がまだ付いているとはいえ、肝心要は若だ。彼が万が一死亡したらもう終わりだ。物語の終了。護衛としている自分だ。



「ちっ」


上手い事、藺の口車にやられたロイ。

まだ遠くにはいけてないだろうが、行かなきゃいけない。こいつ等(特に藺)は不気味だが。


「仕方ねぇな、ただ。次はねぇーぞ」



藺の心理はロイと違い、一世一代だ。仕事仲間と王を過小に扱った言葉を使ったのは、自分達を救うための話術。

ロイは警戒こそしているが、侮ってもいる。真正面からぶつかればいつでも勝てるという勘定。それは間違いなく当たっている。ロイに仲間意識があったからこそ、この絶対好機を見逃した。



「ありがたい判断です。それでは退きましょうか、王くん」



メテオ・ホールを失った痛手は大きい。とはいえ、彼がこのまま死んだとも思えず現場へ急行する。

ロイも同じだ。春藍達と合流を選んだ。






迷路のような通りを闇雲に進んでいく。


「ロイ、大丈夫かな?」

「あいつが大丈夫って言えば大丈夫なんだろ!?そうだろ、春藍くん!」



若は不安でしょうがなかった。次、強敵が現れた時。誰が戦ってくれるのか予想がつかないからだ。春藍に"創意工夫"がない今、戦闘能力はほぼない。夜弧がどーいった人物なのか、若には分かっていない。


「大丈夫、夜弧」

「!い、いえ。大丈夫です。はい」


走りながら上の空な表情だった夜弧。春藍はピンポイントで考えもせず、訊いてみた。


「さっきの、スーツの人。藺って人と知り合いなの?」

「えっ!?ええっ!?」

「どうなの。彼を見た時、夜弧の様子がおかしかったのには気付けたよ」


春藍に気付かれたというショックと、成長しているという感慨深さの入り混じり。夜弧は


「……知っています」

「え」

「とっても危険な人。いずれですが、きっと戦うかもしれません」


夜弧の答え方は曖昧。この場にいる若も含めて、誤魔化すような答えしかできない。


「きっと大丈夫です」



夜弧の口は強くない。今、藺と出会ったことで何かが壊れてしまったのは事実。

もうこの世で1人になってしまったのかもしれない。それでも……


「クォルヴァ管理人と早く出会いましょう。もしかすると、彼等もその狙いがあるかもしれません」

「そうだね。ロイやアレクさん、ライラも頑張ってくれているからね」



私がここに立っているのは他ならぬ、あなたのご指導のおかげなんです。ねぇ?

藺兆紗様。



「?なんだ?」


最初に気付いたのは若だった。通路から徐々に現れ始めた煙。



「気をつけて」

「うん」


タダならない雰囲気であるのは明らかだ。その煙が迫って来る。夜弧は拳銃を取り出し、先ほどの困惑した表情を隠した。




シューーーーッ


「一体なんだ?」


3人を襲い始めた煙の正体はこの監獄にあるトラップであった。

侵入者や脱走者を確実に逃がさないという目的で使われている煙。幻覚症状を見せ、行動を不能に追いやる特別な物。



「春藍くん、夜弧!どこだ?」


煙はまだ足元にいる時に、若の視界にはもう春藍と夜弧が消えてしまった。一人になるだけで急に心細くなる。


「おいおい……!」



やがて煙は人の恐怖を映し出す。若が先ほど恐れた、あの緑色の煙。その威圧感も本物であった。気付いた瞬間、ゾッとして後ろへ逃げる。



「うおおぉっ!?どーいうことだ!?急に現れやがった!!」


メテオ・ホール。無論、偽物である。幻覚であるのは確かである。

しかし、若にそんなみやぶりができるほど優秀ではなかった。恐怖に敏感に反応し、それに従うべき行動をとった。


「若?夜弧?どこに行ったの?」



春藍も幻覚もみる。現れ始める彼女を見て、……少し納得してしまった。

そして、夜弧もまた。




「やはり、あなたが現れましたか」

『…………』


笑顔でいるメイドがそこにいた。綺麗なポニーテールで、自分と対比するほどの美乳を持った綺麗な人。



「幻覚を起こす煙。らしいトラップ」


夜弧は現れた相手にゆっくりと近づいた。鏡のように現れてくれれば、言いたいことを言ってやりたかった。



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