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RELIS  作者: 孤独
引継編
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クォルヴァを巡る冒険④


「誰かがやってきたな」



床に寝そべって、管理人以外の来訪者を感じ取ったのは今回の本命、クォルヴァ。侵入者がいるからといって、迎撃に出る気はない。そもそも、彼自身も囚人。不自由の身。

また、ライラ達が警戒していることとが当たっており、この監獄内での人間の移動は危険しかない。凶悪犯罪者、危険種の魔物、害悪。異世界に流れ出ないよう封じられた檻の数々。


生きていれば、パイスー等の"黒リリスの一団"。ポセイドンもここに収容されていたことだろう。

そーいった兵共を閉じ込めるためのセキュリティは万全過ぎる。


「果たして、私まで辿り着けるのかな?」



待つことが楽しくなるなんて、こーゆう場面でしかないだろう。



その期待を知らずとも、両チームはこの異世界を進んでいた。

藺、王、メテオ・ホールのチーム。彼等は今、囚人達が多く容れられた檻を見つめていた。囚人達は唸った。



「出してくれぇぇ」

「おいいぃっ。なんだお前等は!?どーして、檻の外にいる!?」

「血を、血を、血をくれよ」


精神が壊れている連中。投獄生活で気が狂ったか?


「元からでしたら浪漫を感じるのですが……違いますね」

「どいつもこいつも力自慢な野郎共だな。1人1人、手強そうだ」


藺は囚人達を値踏みする。心に品はないが、その欠如を埋めた実力はありそうだ。駒としては使える方。荷物にならない数。


「値は分かりました。全員登用し、出してあげましょう、その檻からはね」


藺は不敵に笑った。

そして、奇妙な魔力が囚人達を覆い尽くした。ただ閉じ込められているだけが幸せと理解すると良い。心を叫べる喜び。


「"鉄格子の安全死デス・メタル・ザ・ロック"」



藺の魔力に包まれた囚人達は忽然と消え去ってしまった。まるで神隠し。


「何をしやがった?」

「教育実習機関に送り込んだだけです。手荒なマネをした方が、あーゆう連中は操りやすいんです」



なんか優しそうな言葉を使っているが、実際はえげつない。心をへし折って服従させるための力。果てしない時の中に意識を漂わせて、崩壊させる。

空っぽの人形にさせられる。


「良い機会です。私の力を王くんに見せてあげますよ」


藺自身に戦闘力はない。しかし、彼が扱う駒達は総じて優秀であった。

牢の中にいた囚人達が忽然と消え、さらには廊下を普通に歩く人間達がいれば静かに警報が発せられるのは当然。

ポセイドンが制作した脱走兵及び侵入者、殺害マシーン。



"KILLER MACHINE"が藺と王の前に現れた。



「そのままじゃねぇか。名札つけなくていいぞ」

「ツッコミ適性がやはりありますね、王くん」


向けられる銃器、兵器の数々。標的を絶命させるまで動く危険な科学。決められたプログラムを全うする生命体。


「素晴らしい!機械や科学の魅力ですね~~」


藺は右手を左手で弄りながら呼び出す。命令するというより、仕事を与えると言った方が良い。機械は機械。人間とは別物と括られるべきなのに、藺はその能力を持って機械でも人間でもない者に変えてしまった。



「"社蓄蘇生リビングデッド・オーダー・コール"」



藺の指示のみが聞こえ、魂を掻き消された者達が召喚される。その数、37人。どれも"超人"や"魔術"、"科学"などを手にした一流の戦士達。彼等を纏めて操って、対峙する敵と戦わせる。

生命体でありながら、機械と同じく言葉も苦しみも発せず、藺から下された命令を実行する社蓄共。絶対的な社蓄。



「お仕事です。命賭けて、殺せ」



質もそうだが、その量。圧倒的な数で敵を踏み潰す戦い方が藺の戦法。ある種のシンプルさ。健闘とも言うべき、藺の配下を26人も殺害してみせた、"KILLER MACHINE"であるが。それでも藺の手駒を少し削った程度に過ぎない。



「命が消えない限りはゾンビ以上の働きをしてくれます」


腕が切れても命が続く限りは藺の命令に忠実。

本人に戦う力がなくても、凄まじい他力本願で勝ってしまう脅威の能力。



「とはいえ、命令する側はかなり大変なので護衛は基本的に任せますよ?」


その言葉のあと、藺の配下達は幻のように消えていった。社蓄を出すだけでも藺は消耗するという。彼が王やメテオ・ホールを支配下におかないのはいざという時、扱えなくなるからである。


「あの程度のカラクリなら俺1人で十分だ。だが、大分良い物を見せてもらった。護ってやるよ」


藺は単に自分の駒を得るためにここに来たわけではない。王と同じく、仲間にできる者を求めている。

途中途中で使えそうな囚人達を強制的に手駒にしていく藺。多ければ多いほど、ストックに困らない。彼等の進行はかなり早いものであった。




一方で、春藍達。

藺達と同じく、檻の中を蠢く障害とのぶつかり合っていた。



「生物型の科学ばかりだな」



春藍とライラ、それに若を加えれば実質3人は戦力外。夜弧の持つ"トレパネーション"も、生物以外には利きが悪く、拳銃をぶっ放しても軽く弾いてしまう装甲の前には分が悪かった。

よって、早くもであったが、アレクとロイの2人頼み。



「燃えてろ」



さすが、ポセイドンの弟子。1人でメンバーを守り、襲い掛かる連中を全部焼却してみせる。



「強っ」

「さすが、アレクさん!倒した科学はちゃんと僕が修理しますね!」

「止めておきなさい、春藍!」


生物型の科学は外側からの衝撃にはかなり強いが、逆に内側は脆い。そこに熱を与えて爆破させればいとも容易く崩れる。

春藍達も囚人達に見られ、出すように懇願されているが全員無視をしている。



「クォルヴァの居場所とか分からないもんかな?」

「助けてあいつ等が襲ってきたら面倒よ」



先へ。方向の分からない、先へと向かう6人の前に襲い掛かった存在。

見えない何かに6人が同時に触れた瞬間、強烈な寒気に襲われたのは事実。




「あれ?」

「どした?」


藺も気付いた。ただ、藺の場合はどこかへフラリと行ってしまわれたと



「メテオ・ホールさんがどこかへ行っちゃいましたよ」



障害物ではなく。両チーム、初めての出会い。それは問答無用なものだった。




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