クォルヴァを巡る冒険①
クォルヴァ
管理人ナンバー:001
スタイル:魔術
"人類存亡の切り札"と、管理人から謳われている。
"RELIS"を生み出し、ハーネットの師匠。本来はライラを弟子にする予定だった。一時的であるが、"アーライア"の管理人を務めていた。
しかし、細かい事はかなり不明な人物。
「クォルヴァ?僕が知るわけないだろ」
フォーワールドに戻った春藍達。
20日という歳月が経ち、管理人がいなくなったこのフォーワールドでの主な事件といえば、供給されるべき食料の不足と、技術開発局を運営するための動力が不足していることだった。
アレクの不在時、彼の代理を務めていたヒュールは上手に全国民への配給を行なったが、少しずつ無くなってくる食料に危機を感じていた。人口に対して、適していない生存環境を持っている世界。
「私達もそのような管理人を知っているわけがないですぞ~」
若、それからヒュール・バルト等、現在のフォーワールドを支える人間に、最後の管理人の居所について尋ねたライラ達であったが、当たり前だが知るわけがない。
「桂のことだから、誰かに伝言をしているかと思ったけど」
「ライラ。やはり管理人がそのクォルヴァという人物以外、いなくなったというのは真実だとは受け止められるのですぞ。しかし、クォルヴァがこの危機を救うと言われても信じられませんぞ!」
フォーワールドだって、混乱が起きている。他の世界ならきっと大混乱だろうと把握していた。ヒュールはこの危機的な状況であっても、ライラ達との会合に来てくれただけでも相当な凄さと勇気であった。
これ以上、頭がパンクしそうな事例を抱えたくはなかった。
最後の管理人、クォルヴァの価値。ライラは集まってくれた今の仲間達に心から告げる。
「桂が託したい時代になり、その時まで若を護り続けた。その彼が力になってくれると言っている。管理人ならなおさら、この危機への対応を熟知している者のはず!」
居所の手掛かりはまるでない。
フォーワールド内にいるならば困りはしなかったが、無限に近い異世界の数々のどこかにいる1人の管理人を探す。
「きっと、私達に必要な最後の管理人です!」
訴えを飲み込める者は多くいた。ライラの言葉はとても頼もしいものがある。
「しかし、どのように管理人クォルヴァを探すのですか?」
「…………っ」
「ロクな情報がないまま、あなた方を捜索に行って欲しくないです。それはライラさん達が、人類に生きるために必要な人材だと私達は訴えているんです」
記録担当の広東が、逆にライラ達の必要性を訴えた。
異世界の事情を知るには若はもちろん、ライラ達の経験が欲しかったのだ。
「若1人に行かせたら、帰って来ないかも」
「春藍くん。心の中で僕を信用してくれないね。僕は君達の仲間だよー!」
「どうだか、俺は信用できないな」
一番困るのは若の死。人類の希望が潰えてしまう。彼以外にも、戦闘力のある者が多く必要であるのは明白だ。
動いてもダメ、動かなくてもダメ。
「仕方ないですね。やっぱり、あの人ならクォルヴァという管理人の居場所を知っているかもしれません」
考えても仕方のないこと。クォルヴァという管理人を知る者など、この中には到底いない。ただ、夜弧にはアテにできる人が近くにいた。
「夜弧?どうしたの?」
「あの、夜弧。僕の頭に触って何をする気なの?」
答えてくれるか、分からないけど。人間で頼れるのはやっぱり、いつもこの人だろう。夜弧は再び春藍の頭に"トレパネーション"を施し、春藍の中に眠る彼を引っ張り出そうとしていた。
「お、お兄ちゃんに何をするんですか!?」
「夜弧。お前、何をしているか分かっているのか!?」
謡歌とアレクが、夜弧の行動を止めようと動こうとしたが、
「大丈夫よ!2人共。あたしも、そのことを考えていた」
ライラの言葉に2人の動きを止めることができた。自分から夜弧と春藍にお願いするよりはマシだった。
「ううぅっ」
偏頭痛。春藍は座ったまま机に突っ伏す。意識が遠のいていく。
「しばし、我慢してください」
髪色が徐々に、春藍の持つ赤紫色から銀色に染まっていく。その変化から周囲は異様な警戒をとる姿勢。初めて見る謡歌、ヒュールなども、危険を察知している。
「ううぅっ……」
髪色の染まりが完全になった時、別の意識が呼び戻された。眼を開き、状況を確認する動き。彼は春藍ではない。
「ハーネット様」
「………ううっ、……夜弧か?……ライラちゃんもいる……」
記憶は錯綜している。声に出さないが、以前の自分が戦っていたアレクがライラ達と同席していることを理解できるはずもない。
「何があった?」
「それを知る必要はありません」
夜弧はとても辛辣にハーネットに対して言葉を放った。
「今、私達はクォルヴァという管理人を捜しています。あなたなら何か知っておられると思い、眠ってしまった意識を起こしただけです」
ハーネットの意識は夜弧の両腕をバイパスに、表へ出せると言って良い状況だった。自分のすべきことなど、自分自身じゃ持てない。
「……聞いてどうする?」
「その返し言葉。あなたは知っているということですね?」
「私の師に当たるお方だ」
ただ、その質問だけで。夜弧やライラ達が、最後の管理人まで頼っていること。桂、ポセイドンがいなくなったことはこのただ一つの質問だけで、ハーネットは答えに辿り着いた。
そうか、パイスー。私達はいなくなったけれど、ようやく人類は管理社会から抜けようと向かっているんだ。私達がやってきたことは無駄ではなかったよ。
その事実を悟れたハーネットは少しだけ、微笑んでいた。
とても短い意識の帰還であるが、夜弧に自分を託すよう。クォルヴァの居所。とはいえ、自分が知る限り、最後の場所を惜しげなく伝えた。
「"常世の牢獄"エンディング。監獄の異世界に、師のクォルヴァは今も投獄されているはずだ」