ここまで来てようやく、明かしたいことを書くとワクワクした
桂が逝く、十数秒前だった。
「ライラ。お前は覚えているよな?」
「え?」
「ここにある場所。"遺産もない図書館"」
死の直前に道を授けたのは選択をライラ達に任せたからだ。ここであーだこーだと言えば、人類の進歩にならない。
「そこへの鍵をやろう」
投げ渡される鍵をもらったライラ。かつて、桂には内緒で入ってこの"無限牢"の存在などを知りえた場所。かつての人類達の記録、管理人の記録が詰められた場所。まだ、ライラはその全貌を知っていない。
渡された瞬間、ライラは驚いて別れる桂に聞いてしまった。
「えっ!?いいの!?私なんかに!?」
「拙者は管理人を辞めるからな。好きに使え」
新たなステージに行くには選択が多い方がいい。少しでもそこにある物が役に立てば嬉しいと思う。そこでライラ達を待っている奴もいる。
「それから、お主達は知っているか?」
「なによ?」
「管理人ナンバー:001の者を」
管理人は全員消えた。……と、思われている。少なくとも、夜弧とアレク以外には
「ポセイドン様、桂さん、龍」
「蒲生、フルメガン・ノイド、リップル相馬」
「朴、ベィスボゥラー」
5人、冷静になってナンバーを保持していた者について考える。よく考えればこの五人にはそこまで繋がりがなかった管理人が1人いた。
「あ、……ポセイドン様は002。でしたね」
「てっきり、最高位だから001だと思っていました」
とても重要なことである。
桂はもう待てないし止められないと決めて、最後に残ってもらった管理人をライラ達に伝えた。
「管理人ナンバー:001。"人類存亡の切り札"、”RELIS”を生み出した管理人」
メッセージと同時に桂は”一刀必滅”で腹を突き刺した。
「その名は、クォルヴァ。必ず、お前達の力になってくれる」
逝くには駆け足過ぎたかな?死を止められないよう、導を最後にしてしまった。
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【桂の選択は間違っている】
時計仕掛けの小部屋だった。
桂を待っていた男はとても強面な表情で、イカついていた。どこかの誰かとよく似ている口調と、顔の形だった。
【なぜ、”時代の支配者”に従った?】
その顔が通常営業なのだから仕方がないことだ。桂は男を見ることなく、ただ向こう側の壁を見ていた。
【答えるんだ。桂。どうして……】
【いつからあんたが拙者の上に立っている?】
【……いや、それは】
表情に反して、押しに弱いというか。この男、強面の割りに
【済まなかった。感情的になってしまった。俺は戦闘向きな者じゃない】
【顔、作り変えた方がいいな】
全然、戦闘力というのが備わっていなかった。
”雷光業火”すらもう使えない桂にビクつけるほど、ハッタリのみの男。
【拙者は消えることにした、ポセイドンは消した。残るのはクォルヴァだけだ】
【しかし、続けるが。”時代の支配者”に従うというのか?時代は確実に傾いたぞ】
【心配症だな。その不安も分かるが、お主も、”時代の支配者”も、表舞台に立てる舞台がなければならない】
管理人達は”時代の支配者”の存在に気付いていたが、問題の誰かが分からなかった。時代の中に潜んでいるそいつを引っ張り出すには
【奴の時代にしなければいけない。そこで討つ以外の選択はない。でなければ、永久に拙者達は奴に怯え、人類の進歩に繫がらない。奴の毒牙の一つだった】
【では、戦える準備ができたと判断していいんだな?】
男の質問に答えられない桂。
しかし、男には桂の答えが分かったようで
【未知数と、好印象で捉えるべきなのか?】
【拙者が一度戦っていれば分かるのだがな。仕方がない】
寄ったこの小部屋は何か特別なところである。どうやってここに来たのか、話している相手が誰なのか。
【そろそろ消える。また1人で大丈夫なのか?】
【心配はない。かつての時代から人間の一人として俺は待っているんだ。孤独には慣れたものだ】
【羨ましいな。拙者は孤独が辛い。あの世で気の合う者を見つけよう】
前世でも、管理人としても、戦いに明け暮れた。相手がいなければ始まらないのが、戦いというもの。1人の戦士として、これから始まる時代を掛けた戦争に参加したいものだ。
ゴーーーーンッ
【また24時の鐘だ】
【……………】
【立ったまま、逝ったか。管理人の宿命だと理解してくれるとはな】
桂
管理人ナンバー:003
圧倒的な戦闘力を秘め、管理社会を真に解放した者。最強であるが、比べることが不可能なところに逝ってしまった彼。人類を人類に託し、この世を去る。
サヨウナラ……。