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RELIS  作者: 孤独
春藍慶介編
341/634

説得④

時代は新たなページを書き込んでいく。

握る戦いは終わった以上、次に待ち受ける混乱。



リリリリ………



鈴虫の声が聴こえる。やや騒がしくなっているのが、残念だった。


「来てくれたか」



"一刀必滅"を握り締め、外で待っていた桂に。春藍、ライラ、アレク、ロイ、夜弧の五人がやってきた。五人がやってきた時、分かっていない奴が2人。分かって覚悟しているのが、3人。


「ええ、来てやったわ!」


五人共、やってきたはいいが静かに桂を見ていた。彼の声を待っている目だ。

まるで戦うような間合いと空気に包まれてから、桂は言葉を出した。



「ポセイドンはいなくなった。これでようやく、人類は管理から離れられる時が来たというわけだ。拙者の役目は果たせた」



桂の表情は長い道のりを歩いて来た人のようだった。造られた任務に終わりが来たのだ。ポセイドンとは違い、足掻かずに締めくくる。


「だが、離れることは決して幸福が待っているわけではない。自由と引き換えに幾多の困難を抱えるわけだ」


一言、一言。

心が入っている。こーして、人類に告げられる管理人になれてよかったと思っている。



「それでも、拙者はきっと人類が強くなったと確信している。選ばなければいけない時はある。精一杯、時代から来る自由と戯れろ」



管理人、桂としての言葉は。これだけで十分だった。


「管理人としての桂はここで終わりにする」


あとは桂として、ライラ達に伝えたいことがいくつもある。


「これからはほんの少しだけ各々に、桂としての助言をしたい」


まずは、春藍の方に歩み寄った桂。


「春藍くん。君はとても成長してくれた。ライラに付き合わされた君を最初は悪く思っていたが、優しい君だからこそ支えになっていたと分かった。これからもライラのことを支える一人として、手助けして欲しい」


次に、夜弧の方に歩み寄った桂。



「夜弧。管理人としてならば君を斬っていた。だが、拙者からすれば君の存在は人類にとっては大きい事だ。これから会うだろう者にも、歓迎されるかもしれない」



次に、ロイの方に歩み寄った桂。



「ロイ。君には厳しいことを言って良いか?もっと精進して欲しい。君はまだ、もっと上に行ける。春藍くんと同じく期待をしているんだ。他者に暴で劣ってしまわないようにな。……君とは一度、死合いをしたかったのに残念だよ」



ロイは自分の弟子となる存在だった。本音を言うと、超えられる素質であるから最期に戦って教えたかったかな。


次に、アレクの方に歩み寄った桂。


「アレク殿。君に渡したい物がある。ポセイドンが"テラノス・リスダム"で死ぬ前に造り上げていたものだ」

「なんだと?」

「完成したと言っていたが、扱い方は君に託す。君ならポセイドンの意志を継げる。君の手で人を救ってくれ」


アレクの右手に渡された謎の"黒い核"。何かを惹き付ける蠱惑な耀きは可能性を広がせる。貴重などという言葉ではない。


「世界に一つだけの原石だ」

「……大切に扱うよ」


とても大切に握るアレク。

これは自分の師であるポセイドンが残した奇跡。無駄には決してしない。彼が、死を選んでも造り、扱いたかった物だ。



「最期になったな。ライラ」


ライラと顔を合わせる桂。けれど、ライラが桂を見てくれなかった。


「……寂しいか?」

「ば、馬鹿言わないでよ!ち、違うから!」

「お前とは沢山話したつもりだった。アレク殿が眠っている間、満足するだけ話したと思っていたが」

「い、言うな!春藍達の前で言うな!!」



5人の中で、ただ1人泣いて顔を赤くしている。

桂はライラを優しく、顔を向かせてあげた。


「泣いてどうする?拙者がいなくなるくらい、どうってことはないぞ」


逝くのは自分だ。


「お前は強い子だ。拙者の弟子だ。春藍くんも、アレク殿も、ロイも、夜弧も、お前がいれば何も困らない。お前の意志を絶やすな」

「……桂はさ………ずるいよ」

「?」

「あんたの方が綺麗だし、強いし、困難に立ち向かえる」


泣いている自分がとても、桂に見せられない顔だった。涙目で見る桂が眩しくてライラが表情をちゃんと作れない。

でも、ギューッと



「今度は私達がちゃんと困難を乗り越えるから」


育てられた感謝を込めた抱擁で桂に伝えた。永く、離さないつもりでギューッとした。今までありがとうと。


「ふふっ、別れっぽくないな」

「だって、桂のことは私が継ぐ。忘れやしないから」



リリリリ………



鈴虫の声が再び。

もう待っていられないと、ざわついている。春藍とロイがライラを優しく桂から離させる。ライラは大丈夫だからって、小声で言っているけどまだ震えている。

自分達だって不安はある。大きな指導者、大きな力を失った人類がどうなるかなんて、予想を超えることに見舞われるだろう。



「そろそろ、逝かなくちゃな」



思い残したことはないとは言えない。できれば、まだ人類がどのように時代に抗っていくのか。応援すらできないところに逝ってしまうのが辛いな。



リリリリ………



桂を待っている音が響いていく。

"一刀必滅"の刃は桂の身体に迫っていった。



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