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RELIS  作者: 孤独
ポセイドン編
323/634

アレクとロイ

何もなくなった世界。

桂の周囲に満ちている、身を焼き尽くす炎、凍てつく冷気、突き刺す槍、切断する刃、など。など。今、命を狩られる状況である。

そんな危機であるにも関わらず、桂は気付かない。ポセイドンだって細かくは気付けないだろう。




『す』



正確に危機を捉えようと待ち続ける桂。呼吸が進んでいる。

"テラノス・リスダム"とはいえ、奪えないものがあるようだ。その一つは温度。まだ動いていないが、桂は周囲の温度変化を感じ取って攻撃を読み取っている。

とはいえ、読み取ってもすでに攻撃が撒かれたことと同じ。普通であれば避けることはできない。


"雷光業火"を除けば。



『ー』



爆弾も、光の速さに追いつくことはできない。

ポセイドンもそれは承知している。仕掛けていく攻撃では桂に傷を与えるのは難しい。よって、待ち伏せだ。光と音がないここでは前方注意すらできず、温度も感じられない槍の壁は桂を串刺しにするだろう。

脅威的な破壊力も兼ね備えるが、所詮は突進だ。体に刺さる。



『っ』



掠めていないと言い張る子供の証言よりも、正確であった反撃。光を放たずに佇んでいる凶器を知ったと同時に、桂は刀を強く握り、ぶつかる凶器を正確に切り伏せる。

斬られることで生まれる形も、音も分からない。ただ斬っていることは伝わっている。理解できなくても、進まなければ死んでいる。




一呼吸の間で仕掛ける攻防は苛烈。

そして、互いに必殺を所持しながらも互角。

攻めているが、自らは隠れているだけで無防備のポセイドン。

攻められているが、敵の攻撃を確実に潰している桂。




『なかなか上手くいかんが、望まないだろう?桂よ』



ポセイドンは隠れたまま、"テラノス・リスダム"を使用し続ける。桂が感じ取れないようにポセイドンにも光と音を掴めない。それでも、桂の反撃を足跡として追撃を続けている。加えて、桂と違って無数にも罠を設置し、なおも増やし続けている。



『大分遠ざかったか』



移動しながら迎撃するため、桂は完全にポセイドンの位置を見失った。

遠く離れたと感じているが、なおも"テラノス・リスダム"の範囲から抜け切れていない。情報の欠如は判断を遅らせる。



『拙者の保留はライラと春藍くんの、命までだ』




ここは仲間なんて必要ない場所だ。

ポセイドンにやられたのか、それとも桂の攻撃でやられたのか。それともまだ生きているのか。

分からない、届かない、伝えられない、救えなかったかもしれない。



『それでも信じて待つのが拙者だ』



ポセイドン。

拙者はお主を高く評価している。拙者にはなにかを信じられる力がある。インビジブル、ポセイドン。2人の力を受け継いだ者達が拙者の仲間なら、必ず奇跡は起こる。




信じる力をこの局面で頼れるのは強い証拠だ。



『おいおい、アレク!何も見えねぇぞ!何も聞こえねぇぞ!』



ボロボロの身体となっている2人は今、行動を共にしている。"テラノス・リスダム"の発動によって2人も混乱していた。特にロイにはこんな出来事を予測できず、動揺して叫んでいた。

その声が生まれないこと。



シュボォッ



『馬鹿野郎、死ね。と言っても、聞こえないだろうな。ストレス発散にはいいな』

『おお!アレク!ライターを点けたのか、明るいぜ!お前と周りが視える!……あれ?俺の声が響かない?』

『やれやれ、情報が錯乱しちまう科学だな。だが、相応しい性能だ』



暗いから明かりを点ける。それができるなら当たり前にとる行動だ。アレクが、ライターに火を点けたのは当然であったが、不思議とあっさり火は灯った。

アレクは周りの状況を見ようとしていたが、ロイはすぐさま情報をアレクに求めた。


『どーゆうことだ。声が出ねぇぞ!お前の口を見ても分からない!喋れ!』

『バーカ!』

『?なんて言いやがった』


言葉が通じないと、より仲が悪くなる。

アレクは乱暴にロイを遠ざけながら、炎をユラユラと動かしながら壁に文字を作るように焼いていく。



【"テラノス・リスダム"が発動した。この世界はもう音と光、匂いといったものが無くなってしまった】



情報の伝え方は色々とある。

わずかな光を取り戻し、そして使うことでロイにも情報が届いた。だが、ロイからアレクへの情報は伝えることはできない。



『な、なんじゃそりゃ!?どうすりゃいいんだ!?』

『お前、表情が分かりやすくて良いな』


驚く表情がこんなにも分かりやすいと、以心伝心は楽そうだ。情報を読み取る側が少し、苦労すればロイの気持ちを理解できる。一方でアレクの気持ちを読めるほど能力がないロイは、常に何かを伝えるときは壁を焼いて文字を作れと言いたいようだ。



【いちいちやってられるか、馬鹿!自分で理解しろ】



『なんだとコラーー!!壁に書かれるとムカつくなー!言葉よりも突き刺さるぜ!』



満身創痍に加え、この連携がとれない2人を信じて本当に大丈夫なのか?


桂よ。


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