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RELIS  作者: 孤独
アレク・サンドリュー編
316/634

希望はなくても、精一杯を尽くして死にたい

アレクの声は春藍には聞こえなかった。悲しんでくれているのか、分からない。



ピィッ



"Rio"を破壊され、音波の攻撃も止んだ。"創意工夫"で反撃できる兵器を造ろうにも素材がもう近くにない。

この場所はもう炎一色。高熱に耐性のない春藍の体にとってはそれだけで辛かった。それなのに



バギイイッッ



ライラと同じように。アレクに痛めつけられる。

どーゆう心境でやられればいいんだろうか?思い起こす苦境は何度かあった。その時、その時、自分らしく自分なりにやってきた。結果、生き延びたこともある。だが、ウェックルスや粕珠といった時とは相手がまったく違う。



酷いなぁ。



憧れの人にこうされてしまうなんて。



「うっ、ああぁっ……」



自分の悲鳴は痛みからか、状況からきているのか。

死ねないって気持ちじゃない。どうやって、生きていけば良いのか。希望が見えてこなかった。強くなった春藍は状況をよく理解してしまうことになった。



悪くないのかな?



アレクさんと一緒にいれば僕はそれで良かったのかな?



「嫌だなぁ」



違う。嫌だって思っているのは、心からあなたに向けられる力が出ていないから。

勝てないなら勝てないなりの。死ぬなら死ぬなりの。礼儀があるはずだ。

僕はまだ戦えるんだ。


アレクさんが本気で殺しに来るくらい。もっと、力が欲しい。もっと、技術が欲しい。


心だけじゃなく。その実から力を。



「まだ、嫌だ」


魂を賭けろ。後戻りをするな。立ち止まったら、アレクさんもライラも救えないんだ。僕は泣いて諦めるな。縋って、削って、人間の僕を信じろ。

人間じゃなくなる僕へ。託す。



「創意工夫!!」



本来、不可能だ。使用者の僕は分かっている。でも、縋れる素材は僕しかなかった。

胸に自分の"創意工夫"を填めている両手を押し付ける。



ドオォォッ



身体が電気ショックを浴びたように跳ね上がった。どう転ぶか分からないが、成功しなければもう誰も護れない。

なんでもいい。とにかく、アレクさんを超えられる力を引き出させてくれ!

人間という極上の素材から強さを出させて。



「僕を強化しろ!!」



"科学"は精神に呼応として力を呼び起こすことはない。

安定しているが、造られた最大限の力でしか対応できない。春藍は自分の"科学"に全てを託し、命を賭けて放ったにしても所詮は道具。

分からない問いに、鉛筆に答えを訊ねるようなものだ。



バギイィッ



春藍が求めている力があまりにも高すぎる故、"創意工夫"にヒビが入り始めた。

それでもなお、自分を信じて改造を推し進めた。諦めを一切失って突き進んだ信念。


見苦しくもあるが、悪くはないな。



ボオォンッ



両手に填めた"創意工夫"は裂け、使い物にならなくなった。

その事実は結果的に誰も救えないという結末なのだ。春藍はその理解に到達できないほど、知能を欠如した。しかし、強さだけを信じた春藍が手にしたものはある。絶望を忘れたほどの力。

ボロボロにやられた身体の傷が治った。



「僕はまだ」


ふらふらとしながら、立ち上がる。

戦えるとは良い難いコンディション。感覚が欠落している。一つだけを信じているような目でアレクを向き合った。



「あなたを殺せる」



誰がここまでやれと。思ってしまうことはいくつもあるだろう。

春藍もその1人だ。そーゆう馬鹿なところも、好きだった。



「惜しいな」



自信というより、使命感のみで立ち上がってきた春藍にやや残念さを感じるアレク。

"創意工夫"を失い、春藍の脳にもダメージが出るだろうハイリスクな行動。命を賭けた行為に対して与えられたのはローリターンだった。



ドゴオォォッ



「あれ?」


春藍の視界はアレクの拳をもらう前から揺れていた。聴覚も遠のいて、再びに地面に転がったことを知ったのは時間が掛かった。

燃え盛る地にいるのに熱を感じられなくなった。

何かを知るという術をどんどんと剥ぎ取られていく。



「殺すんだ」



ただ一つを信じ、実行するため立ち上がる。それ以外が分からなくなってきた。

意識はハッキリとしているが、身体がついていかない。

そんな状態ではアレクを超えることはおろか、先ほどまでの自分にも勝てない。希望を信じるだけ、向かっていくだけでは、手にする事はできない。



ドゴオォッ



「そんな………そんなの」



アレクの打撃を味わいながら、自分の状況を理解していく。

色々と失いながら何も手にする事ができなかった春藍。それがどんなに苦しくて、痛みよりも悔しかった。

希望は潰えてしまった。現実は非情であった。




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