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RELIS  作者: 孤独
アレク・サンドリュー編
313/634

師と弟子

「え?なんで……アレクさんが……」

「困った顔をするな。語れないことは多い。お前には時間もない」



春藍の記憶が正しければアレクはまだフォーワールドで眠っていたはず。しかし、あれから大分、寄っていなかった。行く機会がなかった。

その間に抜け出した?でも、……あれ?変なことが色々あるような、ないような。



「おかしいよ。アレクさんがここにいるわけがない」

「おかしくはない。どうする気だ?お前はこれから俺が、本当かどうか悩んでいるのか?時間が過ぎていく」



強くなったと思ったが、まだまだのようだ。

まぁ。疑ってくれるじゃないか?



「春藍、お前はこう考えている。俺は偽物であり、ライラを傷つける者じゃないし、俺がこんなことをしているわけではないと、希望を願っている」

「!っ」

「俺を敵に回したくはない。信じているからこそ、状況を考えている。優しい男だな」



アレクの発言はまさに図星だった。

春藍は必死にアレクが敵ではない理由を探し回った。しかし、敵であることも、現状味方であるという理由もなかった。自分の考えを読めるなんて長く、自分を知っている人ではないとできない。



「お前と接した俺は決して幻想じゃない。ここにいる」



彼が、アレク・サンドリューだという証明は完璧だった。それを否定する手段が欲しかった。



「残念だがな。俺は俺のためにいる」



アレクが春藍の考えを理解できるように春藍もまたアレクを理解できる。あそこに立っているのは正真正銘のアレクであり、嘘を言っていない。

だから、彼が偽物であるという証明が欲しい。



「あ……待ってください」



迷っている場合じゃない。でも、大切なのは……どっちだ?



「いやぁ……無理だな」



きっと、訴えは言葉や心では足りないと。アレクの目は言っていたと感じる春藍。次に起こった出来事は春藍にとって、二者択一。

こんなことをするわけがない。本当のアレクさんはしない。絶対に……。



ドオオォォォッ



「あっ」



春藍の目の前で、アレクによってライラの身体が炎に包まれた。発火と同時に体が跳ね、意識もなくそのまま焼かれ続けるライラ。

現実を背け、希望を求め続けた春藍に強大な絶望が現れた。タイムリミットなどもうなく、救える状況にないと見せ付ける炎と、



「春藍、もう一度聞く。俺と一緒に来ないか?もう、ライラはいなくなった」



アレクの、真っ当な精神状態から繰り出された攻撃。

春藍に絶叫はなかった。アレクは同じ質問をより強調した。



「春藍、俺と一緒に来い!"科学"の頂点まで来るんだ!!」



だが、春藍はアレクの言葉を聞いていなかった。2人共、大切な支えであり、どちらも失ったという状況に両足が崩れそうになっても、



「……取り戻します」



ふつふつと込み上げてきたのは強欲な希望が身体を支えた。平和主義者という名を持つ、エゴイスト。全力で絶望から逃げ切って、導いた春藍の答えはアレクの想像を超えていた。



「アレクさんを倒し、ライラを助ける!そして、僕の本当の……アレクさんも取り戻す!僕がアレクさんの野心を砕きます!!」



片方を選ぶなんてできなかった。時間的には早いほうであるが、状況から言えば遅いぐらいの結論。すでにライラは絶体絶命に陥り、アレクも本格的に戦う姿勢を見せる。とても嬉しい表情で、宣言を受け入れた。



「そうか、ならやってみろ!俺もお前を力ずくで取りに行こう」



自分を取り戻したり変えようとするなら敵ではなく、これまで弟子として育ててきた春藍にしてもらいたかった。そうしてもらうまで戦い続け、柄にもなく誰かの下に付いたままだった。

2人共、精神が高揚し続けていた。激しい魂のやり取りの中、無言で横から割って入ってくる者。フラフラとした足取りであるが、少しでも優位に進めるための援護。



パァンッ パァンッ



「むっ!」

「え?」


身体を燃やされたものの、すぐに近くにあった流氷で炎を振り払った夜弧が、この戦場に辿り着いた。真っ先に春藍を援護するため、アレクに射撃を開始した。だが、ダメージがかさんでおり、腕が震えてまったく当たりもしなかった。



「援護します!春藍様!」



とても、助けになれそうにない声と結果だった。それでも、ダネッサを倒した彼女を評価してアレクが春藍と同じだけの意識を持ったのは当然だった。そこへ、この中で一番身体に負担を追っていた者がライラを、閃光に等しい速さでかっ攫った。



「あつっ!だが、取り戻したぞ!春藍!」



春藍の治療により回復の兆しを見せたロイだ。炎に包まれているライラを抱きながら、地面に転がって炎を鎮火する。



「次から次へと」



アレクは目障りそうにやってきた2人に視線を送った。人質というアドバンテージはなくなったが、まだ時間の制限はある。ロイがライラを救ったとはまだ良い難く、妨害も兼ねてとった行動は春藍との距離を詰め、治療を不可能にする攻撃だった。




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