人への冒涜
生き残るため、人が知恵を手に入れたという可能性はあるんじゃないのか?
万物の証明は人というものが居て初めて起こったのだ。
そして人は今、知恵を有して武器を作った。文学を作った。魔法を作った。法律を作った。平和を作った。戦争を作った。
神と呼ぶ崇める空想をも、表したこともあった。
時代と進化とともに人は変わっていったのだ。そして、人とは外れた存在へと変わっていく。人という種族名だけを残して、変わっていく化け物。
「せ………ん……」
機械は人の結晶だろう。
時を重ねるごとに弱っていく肉体を補うため、薬を用いたり、道具を用いたりしていた。人がそれらを必要とする時代はすでに存在していた。
「め……つ………」
命を繋ぐため、道具を用いる。別に間違っているわけじゃない。だが、その繋ぐということを選んだとき。そこに魂が込められているかは話が別である。
人間の姿さえなくなり、魂までもなくなっている。そいつは起き上がってきた。
「て、てめぇ」
ロイは春藍をすぐに避難させた。頭を吹っ飛ばされてもなお、戦う命令を組み込まれている胴体と頭はロイ達を殺そうとしていた。
「どこまで人を冒涜してんだぁぁ!?」
生きている事を嫌がる人間がいる。
「命令で起き上がってくるんじゃねぇよ!!」
ならば死ねという言葉を使って良いではないか。ただそこで死ねない人間は、本当は生きたいのだ。このくだらない環境に晒されて死にたくなって、消えて欲しいと願っているだけなのだ。
本当にそれで死ぬ奴は本当に絶望している。
非情に重く感じている。
「心を理解できねぇのか!?この機械は!?」
ロイはさらにそこから胴体を蹴り飛ばし、リアの頭も踏みつぶして砕いた。
嫌がり、辛くなっているというのに、機械はいつもの如く体に命令して戦おうとしていた。頭も良いはずだ。諦めるべきだと……。だけど、そんなプログラミングは絶対に発動しなかった。
「おおおっ」
ポセイドンはリアから可能性を引き出すことができた。
機械となれば人間以上の生命寿命を作れる。パーツ交換のみで老化や劣化に耐えうることができる。人間が最終的に成り果てるのかもしれない地点に、彼女は立っていた。
しかし、それを人間とは認められないロイが完全に破壊する。
「大暴拳闘!!」
リアの胸を砕く、突き。子宮を潰す、蹴り。鎖骨部分を狙った、肘打ち。鳩尾を突き刺す、膝蹴り。もう一度地面に倒すための、頭突き。
必殺の五連打。
ドゴオオオォォッ
人を遊びすぎている事にキレたロイの、"大暴拳闘"が今度こそ完全にリアを粉砕した。それは彼女が最初に死んだ時と同じようなほど、粉々にやった。
「女が嫌だって言ってるんだ!なに勝手にしてやがる!」
この台詞はリアをこんな目にしたであろう奴に言っていた。
「機械に魂を奪われちゃ、人間なんかやれねぇよ!」
ロイ VS リア。
リアの身体を弄んだことにより、ロイの怒りが爆発。彼女を粉砕し、勝利する。
「死んでしまったか。少し残念だ」
ダネッサの死とリアの完全な死を、研究所から感知したポセイドンはとても残念そうだった。
「できれば二人共。"SDQ"への対抗実験まで持って欲しかった。しかし、仕方あるまいな。どちらかに希望が持てれば研究が進むと思っていたが……」
部下達の死を悲しむというより、実験に支障が出たという感情を吐露する彼は人間を管理していたとは思えなかった。
「しかし、戦場で散ったと考えれば二人に希望は持てぬか」
だが、それも覚悟の上で言っている。
「戦況がヤバくなってきたか」
いよいよ、ポセイドンも動き始めようとしていた。彼がこの間に行っている研究はまだあと少し時間が掛かる。
ライラ達が研究所を襲ってくるとなると、台本とやや違ってきてしまう。ポセイドンは最後の1人に、ライラ達を任せる気だった。
「お前も我を悲しませるんじゃないぞ」