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RELIS  作者: 孤独
ロイ編
299/634

人ならざるもの

格闘センスというよりかは、修行の成果を見せたようなファイトスタイルであった。



「リア」


春藍は彼女を呼んだ。姿と形が変わっていても、彼女の身体が使われているからそう呼んだ。


「今は、別の名前を持っているの?」


色々と話したいことが春藍にはあった。リアを拘束しなかったのはあの時を思い出すからだろう。


「どうして、君はポセイドン側についているの?管理人は……嫌いと言ってなかった?僕も同じだったんだよ」


答えないのなら沢山質問するしかなかった。どれでも良いからリアの声を聞きたかったのだ。

そんな期待を裏切るようにリアは起き上がってくる。



「システムの修復。開始」



リアの目にはしっかりと春藍が映っているだろう。青く光始めると同時に、目からレーザー光線を春藍に向けて放った。

しかし、春藍はそのくらいの攻撃手段を読んで、容易く避けてしまった。反射神経ではなく、リアの目から離れるように身体を事前に動かしていた。



「なんだかさ」

「敵を発見、殲滅します」



リアは確かにそこにいる。でも、こうして戦って会話をしてみて。上手くいかないでいると、不安でもあるのだ。



「リアだよね?」



リアに銃を向けられていても



「リアだよね……?」



春藍は何度でも尋ねようとしていた。



「リアだよね…………?」



三度尋ねて、四回は涙を落としていた。認めたくはないからこうして何度も訊いていた。だけれど、リアはまったく春藍に躊躇しなかった。彼女の銃撃が始まった。

弾幕の嵐から逃がれながらも春藍は呼び続けていた。



「戻って来てよ!リア!」


リアが春藍と戦う理由はあるのかもしれない。だけれど、その理由じゃなくて別の意味で戻って来て欲しかった。


「君はそんなことを望んでいない!君はその冷たい手を嫌っていて!自分を人間だと言い張っていただろう!?戦いよりも、静かな日を好んでいるはずだ!!」

「殲滅☆」

「今はまるで機械じゃないか!!お願いだ!!戻って来てくれ!」

「殲滅☆」


春藍の叫びがまったく聞こえていないのか。リアは標的である春藍達を殲滅することだけに没頭していた。しぶとい鼠に苦労するも、春藍の言葉には何も響かない。



「今の君はリアじゃない!リアはそんな人じゃない!」


彼女がどうやって戻ってくるのか、模索しているわけだが。それ以前に彼女がどこにいるか分からなくなる。



「お願いだよ……リア。戻って来てよ……」



春藍は弾幕を避けつつも、精神的に傷付きつつあった。

奇跡的にも出会えたわけだが、出会えた人はまったく違っていた。人ですらなくなってしまった。彼女から人間というのを教えてもらったようなものなのに……彼女が人間ではなくなったという事実が重かった。



「僕を殺してもいい。忘れてもいい」


ただ、人間であったことを思い出して欲しい。



春藍の戦意が悲しみによって堕ちつつあった。

必死に叫び続けてみたが、リアはまったく反応してくれない。心を取り戻すという技術力なんて、創造を超えている。現在に至っても存在しない技術だ。

自分の力量では救えないのか?



「何をしているの!」



ライラは春藍の説得失敗に、怒りを出しながら雷をリアに落として、動きを封じた。当然、雷は春藍にも被弾した。むしろ、計算をしていたのかもしれない。



「ぎゃあぁぁっ……ライラ?」

「あのね」


雲の上から説教をするとは思わなかった。やっぱり、強くなっても春藍は精神的にまだまだ脆い。


「あたしはリアについて分からないけど。まずはリアを楽にしてあげなさい!」

「え?」


"敵が減る"のは良い事だけどさ。使って良い言葉じゃないけどさ。


「機械となったリアを殺すこと!……それが春藍とあたしの役目!もうそいつはリアじゃない!」



非情なスクラップ指令を出すライラに、春藍はあの時を思い出していた。救ってやると言ったけど、


「でも!」

「あんたが死んだらそれこそ、リアを救えないのよ!?」

「……でも」



リアを粉々にするなんて、春藍にはできない。

死線にいながら、後戻りが怖くなっているのだ。ここでリアを倒して動けないようにしたら……彼女は二度と来ないのかもしれないと、自分の技術に自信が持てなかった。

まず。彼女の心を取り戻すことはできないだろうと、非情な現実を見たからだ。



「リアを壊すなんて」

「言ってる間にリアが復活してくるわよ!」



ライラもまた臆病だった。今ならライラ1人でも勝てるはずだが、春藍がどのように心が壊れるか心配で手が出なかった。

大事な人だって理解も分かるからさ。それをあたしが壊して怨まれたら、あたしだってキツイ。まだ希望があるんじゃないかって、思っていたい。



「再度、殲滅開始」

「リア!止めてくれ!」



壊すという選択を嫌った。それ以外の選択を何度も選んでいる春藍であったが、リアはそれにまったく応えてくれなかった。



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