問いかけ②
『このワタクシにもう一回、人生をくれないのですか?』
死が近かったリアは僕に言っていた。
今のリアは望んでそこに立っているのかな?そうだったら、僕はそこにいないって事だよね?そうなら、今の君が分からないよ。
僕はリアを今でも覚えているし、信じているよ。
五年ぶりに君と出会えた。きっと、奇跡なんだよ。けど……だけれど……。
あの頃の僕も、あの時のリアもいないんだ。楽しく、人間として生きていた君には見えないよ。
僕は。
「いくよ。リア」
春藍とライラは地上と空中の二手に別れた。空中で戦えるライラと地上で戦える春藍だ。また、リアの戦闘に対する意識の分散も狙っていた。
リアに埋め込まれているデータは強い奴を狙う傾向があり、空中を自在に移動し、弱点である雷も発生させるライラを狙ったのは自然であった。
少しも観てくれないリアに、春藍は少し下を向きながら銃撃の横から突っ込んだ。
ダァンッ
あのリアから容易く、戦闘に適した殴り合う間合いに入り込んだ春藍。
さすがのリアも近づき過ぎた敵に意識を向かせ、迎撃準備を始めた。
ガァァンッ
「っ!以前よりも硬い!」
ロイの拳さえ、まともに通さなかった鋼鉄以上の身体造りだ。春藍の拳など通じないと思われたが。握っていた"創意工夫"が反応し、リアの身体を変型させてダメージを通す。錆化させ、動きを鈍らせた。
「あの時は君から逃げてばかりだった!」
リアに記憶があれば春藍の"創意工夫"も警戒したはずだ。しかし、無警戒で春藍の攻撃を負ったということは、やはり今のリアに春藍の記憶はない。
「だけど、今はあの頃の君を救えなかった事を糧にここまで頑張ってきたんだ!」
「はははは?」
ライラをレーダーで確認したまま。春藍との一対一を受けるリア。これだけ近い距離ならば、ライラだって迂闊には雷を落とせない。落とせば春藍にもダメージが通る。
リアとこうして殴り合うなんて、春藍も想像していなかっただろう。それだけ今の自分は強くなれた。
銃を締まって腕を人間と同じようにする。
「っと」
鋼鉄の拳が直撃すればそこで終了だ。
ロイほど速くはないが、危険という認識が強く避けることに徹した。が、思わず尻餅がつくほどの避け方だ。
バヂイィッ
地面を叩いて、変型させて武器を製造する。リアの変型と同じくらい早く、なおかつ片手で生み出す攻撃。
リアの近くに現れる大砲。
バギイイイィッッ
本当に実弾込みでぶっ放すことができる春藍の創造力と想像力。虚を突く攻撃は効果的であるが、生身がやはり鋼鉄以上であると、
「奇襲も意味ないかな?」
少し怯んだ程度のリアは春藍のことを真似るように手を巨大なハンマーに変えて、押し潰そうと狙った。
ドゴオオォッ
ライラは心配しながらも、春藍とリアの戦いを空から見つめていた。彼の言葉からも感じていたが、春藍はロイの指導などもあって相当強くなっていた。息を呑みながらリアとの接近戦を演じていた。
動き方はもう戦ってきた者の動き。
「春藍、ここまで来たのね」
あの時から決意して、目的はネセリアやリアを失わないための強さだった。それを今実践するようにリアと戦っている。もしかすると、取り戻せるのかもしれない。
今の春藍はそれだけ気持ちの入った戦い方をしている。
「やぁっ!」
春藍の稽古の相手が、ロイであったことはとてもリアとの戦いでは大きかった。彼女の動きが広く、遅く見えていた。"創意工夫"とも相性が良く、触れる度にリアを錆化させていく。
錆の足枷は徐々に重くなっていき、より春藍が優位に戦える状況を生んでいる。
バギイィッ
「ぐうっ」
リアは追い込まれる。兵器の変型速度も鈍り、思考も鈍く単純なものへと変わっていた。春藍の両手に触れるのはマズイと判断している。
そこへ春藍が思い切って、素早い回し蹴りをリアに叩き込む!
「これしき!」
メギャアァァッ
錆付いた身体にクリーンヒットする。リアが鋼鉄以上の身体になっていても、春藍の両足だって人間の物ではなく造られた固い足だ。
「っっ!くっ……」
リアの膝が折れかけたところ。
春藍がリアの顎を跳ね上げるアッパーカットで宙に浮かして、地面に墜落させる。
ドゴオオォッ
ここで春藍がまず。リアを倒した。




