問いかけ①
利用できそうな素材をポセイドンは収拾した。リアの色々なパーツもその一つだった。
あの"黒リリスの一団"との戦争でもちゃっかりしていた。
「確かに欲しい素材であった。生まれながら機械の人間とは興味が沸いていた。朴、蒲生、龍に破壊されて残念がっていたが、よく回収してくれた」
「俺は子の気持ちを知っているもんだからな」
「子?」
提供者はタバコを吸いながら、ポセイドンと取引をしていた。
「どんな形でもいい。直せるか?」
「愚問だな。だが、死んでいる魂まで造れるかは……」
「そんなところまで気にする必要はない。お前がしなくても、科学に魂は宿るものだ。本来なら俺や春藍でも良かったが、お前に譲ってやる。お前の方が適任だ。力量じゃなく、春藍のためにな」
好きにも色々ある。叶えたいようで、叶えたくない。複雑かつ難解。それが心だ。
「任せた以上。よろしく頼む」
「引き受けよう。……しかし、貴様は我の部下のくせに生意気だな」
「うるせぇな。いちおの"師匠"。ここでは秘密事項だろう?」
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これから戦う者達は誰も知らないことだった。
しかし、それは知らなくても良いのかもしれない。
「リア!」
不安と疑問を、吹き飛ばす声で名を呼んだ春藍。しかし、リアにそんな気持ちは届いていなかった。彼女には名もなく、リアという記憶も、意識も、人間性までも失っていた。
なにせ、五年前に彼女は死んでいるのだ。春藍が助けなかったという一因で。
「殲滅☆」
両腕を機関銃に変え、呼びかける春藍にめがけて放った。それは春藍のことを怨んでいるより、知らないという意識だった。
衝撃で一帯の建物が揺れた。
バギイイイィィッ
「馬鹿!何しているの、春藍!」
「で、でも!ライラ!!あれはリアなんだよ!間違いなく、リアなんだ!」
「はぁっ!?」
ライラの雲で緊急回避した。
ハッキリ言って、ライラにとってはどーでもいいというか。昔の女を掘り下げるなやとツッコんであげたいところ。しかし、それよりもまず。春藍の胸倉を掴みながら、
「今!そんなことを言ってる場合じゃないでしょ!?」
復活してしまった殺戮マシーン。こうして言い合っている間にもリアは春藍達に狙いを済ませていた。
「仮にそうだとしても!さっきからあいつはあんたに目掛けて何の躊躇もなく、撃ってきたのよ!殺しに来たのよ!私達も殺すつもりで戦わないと殺されるわ!」
ライラの言う事はもっともである。しかし、ライラのような人物からすればそうなのだ。春藍にとってリアは違っていた。その違いが、ライラにとっては怒りマークを作り出していた。
「それでも!僕は……今のリアを救いたいんだ!」
あの時、救う事ができなかった1人。
「だって、僕は今。ライラと一緒にいられるのはリアのおかげでもある。とても僕の今の気持ちは苦しいけど」
それが今何かの奇跡でやってきたというのなら、助けることが踏み止まっていなかった自分のやるべき行為だ。
「僕に託して、ライラ。リアを救いたいんだ!」
ライラは春藍ほど浅く考えていなかった。どうして、ポセイドン側にリアがいるのかが分からないし、あれがリアなのかも疑わしい。危険な相手を1人で戦わせることはできない。
「馬鹿!」
訊かなかったけど。そもそも、リアを救うって具体的に何?
「春藍ねー!あんたに、リアは任せるから!戦うのは一緒よ!」
「ライラ……」
分かんないよ。
相手は自分達の事なんか忘れているような心を剥き出しにしていて、それを救うって思い出して欲しいって事?
「ありがとう」
「いいのよ。ともかく」
まず救うために必要なのは
「リアを止める必要がある。少し傷つけるけど、殺さない程度に痛めつける。痛んでいるあいつを直すのが春藍の役目!無理はしないでよ!」
リアの暴走を超える力と、その暴走を超える力以上の修復能力だった。




