5年ぶりに出会った人の心はそう変わらないはず
「殲滅☆殲滅☆」
新入りはライラ達が生きていると理解し、すぐにその方向へ砲撃をかました。
強力な破壊兵器を携えていてもライラ達のところまで届くのに、多少であるが威力と精度が落ちる。
ドゴオオオォォッ
「この距離でこんな威力なの!?」
「ひ、ヒビが!僕の要塞にヒビができてる!」
それでもライラ達の予想を超える破壊力が健在。
破壊衝動の強い新入り。そのことはまだ彼女と出会っていないライラには、手に取るように分かっていた。新入りの殺人衝動からはライラの雲を蹴散らすという選択はなかった。ここは春藍の力で耐え、雷雲が新入りの周りでしっかりと形を成せば……
「飛雷雨」
ライラの合図と共に、新入りに撃ち落される雷の雨。
バヂイイイィィィッ
雷雲が消滅するまで雷が落ちまくる恐怖の雲。
注意を怠っていた新入りは避ける術なく、直撃。
「ぎゃばばばあぁ」
エラーと奇声を起こしながら、次々に落とされる雷を喰らう新入りは地面に転がり、兵器の暴発まで浴びる始末。
ドゴオオオォォッ
「やったかしら?」
「爆発まで起きたね」
ライラの雲では位置が分かるだけで、殺しているかどうかまでは読めない。感触は十分であるが、確かめる必要はある。
「行くわよ!」
激しい攻撃が止んだ今の内に接近するライラ達。当然、ライラは雲を新入りの周囲に飛ばし、雷雲の準備をしていた。少しでもおかしな動きをすればぶち込む考えであった。
思いのほか接近をすることが順調であった。あと少しで春藍だって戦える間合いになる。
ドクンッドクンッ
「……………」
春藍の鼓動は近づくに連れて、奇妙な予感を察知していた。それがなんなのかは新入りと出会ってから分かる。
「もうすぐ見える」
ライラに言われたとき、新入りの姿を早く観ようと首を前に突っ込んでしまった。
雷に撃たれて力なく倒れているメイドであり、機械で造られた女性。
「………え……」
ライラは何も感じなかったが、春藍は新入りの姿を見た瞬間。
『似てはいない』であるが、『同じではある』という不可思議だが同義の意味を作った。
「あいつ、生きてるのかしら?」
春藍の表情が怯えていることにライラはまだ気付かなかった。ライラには新入りが分からないからだ。普通、分からない。
足を引いた春藍を見てから、ライラも異変に気付いた。
「どうしたの、春藍?」
「え。……あっ……」
「春藍!」
春藍にライラの言葉は届いていなかった。今出会った彼女のことに意識を奪われていた。姿、形が変わっていても、春藍には分かるほどの存在感を放っていた。
「な、なんで……?」
全然変わっている。あの時、死んでしまったと思っていた彼女がここに立っていた。
「ちょっと!春藍!いつまで、ボーっとしてるの!?」
ライラが意識を春藍に集中し続けたあまり、新入りの動きに気付くのが遅れた。ゆっくりと立ち上がり、システムの修復を行ない始めた。
「システムの回復を図ります」
気付く春藍に対し、新入りは春藍と出会っても何も抱かなかった。分かってくれないのかな?っと思っていた春藍であった。一方、ライラは新入りが立ち上がったことに戦意を向けた。
「やっぱり立ち上がるのね!」
「!待って、ライラ!」
今なら勝てるというのに、春藍はライラの攻撃を止めようと身体を抑え込んだ。
「いい加減にしなさい!」
「待って!お願いだ!待ってくれ、ライラ!」
「!?」
春藍が何を伝えたいのか分からないライラであった。彼女と戦う意志を見せているわけもなく、助けようとしている?
必死な顔にライラは躊躇し、攻撃を止めた。一方、春藍はまだ心中を整理できていなかった。とにかく、待ってくれと人間的な本能でライラに伝えたに過ぎなかった。
よーく観て何度も確認した。
姿が違っても、ところどころ新しくなっていても、あの触れた身体が彼女にあった。粉々にされて、自分は何もできなくて、ただ泣いて悲しくなっていただけ。
「……リア……リアだよね?」
春藍は震えながら、かつての人の名を呼んだ。
その変わり果てた姿と魂に、春藍はどうしていいか分からず心身共に震えていた。
「システムの修復が完了しました」
その戸惑いの時間で、リアはライラに負わされた傷の修復が完了した。
「再度、殲滅を開始します」




