表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RELIS  作者: 孤独
ダネッサ・オルトゥルス編
290/634

捨て兵②

夜弧は空を見上げるしかなかった。



「ああ、お天道様」



倒せる手段があるとしたら、銃撃よりも確実な。"トレパネーション"だ。

しかし、両手で長く触れる時間も間合いも作れない。



「賭けじゃないわ」



銃に握り締め、隠れ続けられる状況じゃないことを認識している夜弧。

勝ち負けよりも時間が彼女の選択を狭めて、ダネッサの前に姿を現した。自分に目がいくように銃声を出した。



バキュンッ



「あ?」

「もう逃げられないわ」



その言葉は自分に言い聞かせた。

左手で自分の頬を撫でながら、自分に暗示をかけていく。



「やってあげるわ」


ダネッサを超える強さを引き出す暗示。科学的な肉体改造とは違う、魔術的な肉体強化を行う夜弧。



「直接戦っても、私はマジで強いから」



潜在能力の覚醒。

一時的な"超人"を引き出す夜弧。一方、ダネッサは夜弧の姿を確認した時点で昂ぶり、襲い掛かった。伸ばさずとも通常のリーチまで縮めるダッシュ力。それから風を貫く、神速の突きまで動作する。



「!おっ」



会心の突きを横っ飛びで華麗に避ける夜弧。さらに自分の背中から両翼を生やして空中へと飛んだ。

追いかけるダネッサは地上から空を舞う夜弧に向け、槍の伸縮で貫こうと動く。また夜弧もこの機を狙って、ダネッサに向け銃撃する。



槍の突きを繰り出す時ならば、いかにダネッサでも避ける動作にならない。



バヂィッ



「っ!」



ダネッサの突きを空中で避けながら、一発だけダネッサの足にぶち込んだ。

しかし、ダネッサの動きはまったく鈍らない。やはり一撃では足りなかった。



「うおおぉっ!」



手数ではダネッサが上回っている。夜弧には弾の補充が必要であり、その暇はまったくダネッサが与えなかった。目を離さない距離を保ちながら追い詰めていき、夜弧は避けるので手一杯。



「どーしたああぁっ!?上手くなったのは避けるだけか!?」



全力で逃げているのに追いつかれる。"魔術"による肉体強化の疲労ももうすぐ襲ってきた。夜弧が絶対に決めていることは、ダネッサの攻撃をもらわないことだ。



フッ……



逃げるための両翼も消えて、地上に落ちる夜弧。勝機を逃さないダネッサは彼女に飛びかかったのは言うまでもない。



「これで終わりだ!」



しかし、夜弧の表情はまったく絶望していなかった。

自分1人じゃ勝てないと分かっていたから、感謝を込めて名を呼んだ。



「ライラ」



ドゴオオオォォッ



息を合わせたかのように上空から無秩序に落とされる雷は、ダネッサの肉体を黒く焼き尽くした。不意に喰らった攻撃は彼の動きを止めた。



「ぐおっ……雷っ!?」



ライラはこの近くにはいない。しかし、彼女は自分の雲を散らせて偵察に当たらせていた。ライラだけは正確に誰が、どこで戦っているかが分かっていた。

一番近く、春藍も向かっていることからロイの方に向けて足を運びながらも、夜弧に対しては自分の雲を飛ばして援護に向かわせた。

この広大な戦場では、ライラの"ピサロ"は非常に強力な能力であった。



ジャギイッ



「言ったでしょ?」



弾の補充を終えた夜弧はご丁寧に、撃たれに来てくれたダネッサに銃を向けた。



「私は強いって」



降参なんて言葉は存在しない。

動けなくなったダネッサにトドメを刺す、銃弾8発。



ドォッ



地に倒れる音と、静かに身体から流れる血の音。頭、腕、胸、足。念入りに急所を正確に撃ちこむ。夜弧の射撃の腕前はなかなかであり、冷徹さも光った攻撃だった。

圧倒的な強さを持っていたダネッサが、夜弧の前に倒れた事実。



「ライラがいたから勝てたけどね」



しかし、勝負は決したのか?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ