可愛いのに強すぎるのは最近のテンプレだろ
ロイ VS 新入りの格闘戦。
もっとも速く、パワーもあった戦いを繰り広げていた。
ロイの速さやパワーとは身体能力、技のキレ、腕力と。比較的分かりやすい格闘戦のイメージがつく。
「お前のそれは格闘じゃねぇ!」
一方で新入りの速さやパワーは。体に内蔵されている銃火器の性能、殴打のためのメリケンサック、棘付きの腕、鋼鉄以上の肉体。
格闘経験などなくても、備えられた武器でロイのパワーに対抗していた。"超人"からすればそんな装備をつけているだけで、格闘戦をしているとはいえない。
バキイィィッ
「ちっ」
拳が相手の硬さに慣れてきたが、打撃はやっぱり効果が薄い。ビクともせず、反撃もしてくる。
ロイの思考は戦闘になっていくとかなりまともになる。
速さでは自分が上回り、攻撃という点では五分。体の頑強さは新入りが上回っている。3つの要素で考えるならば2人は同等の力を示していると言えるだろう。
闇雲にパワー勝負を持ち込めば、手痛い一撃をもらうこともありえた。
「抹殺☆抹殺☆」
テンション上げながら変型を始める。腕から銃火器を生やしてロイを撃ち抜くというより木っ端微塵を狙った火力。
バヂイイイィィィィッ
格闘戦には向かない銃火器でもお構いなしの攻撃選択。自分に反動が来ているにも関わらず、絶えず攻撃を繰り返している。
近くても速さではロイが上回っている。
「そいつは喰らわねぇって、学習がねぇのか!?」
ロイが選んだのは技だった。
硬さから敵の重さを知れた。新入りがどのような構造でできているかは分からないが、物理法則が変わるわけじゃない。
相手の体重を武器にする投げ……いや、ゴリ押し。新入りの足元からタックルをかまし、そのまま抱え上げる。
「うおおぉぉっ!」
高速タックルからの跳躍。相当な付加にも関わらず、高いジャンプ力があった。同時に抱えている状態から新入りの頭を硬い地面へと向けさせる。
ガシイィッ
ロイは新入りの顎を左足で押さえて、抵抗をできなくさせる。高さと重さを、新入りの顔面に与える攻撃。女には絶対にできなかった攻撃だ。
「天昇地簾」
平たく言うと、相手の着地を失敗させる技。勢いの吸収さえさせず、己の体重をモロに頭に浴びせる。かなり言うと、パイルドライバー。
ドゴオオォォッ メギイィッ
新入りのパーツがいくつか折れた音がロイには分かった。手応えは十分だった。
頭が地面に埋まった新入りは身動きがとれなくなり、頭を抜こうとわずかに動作を起こした。衝撃でスカートがズレ落ち、ややエロいところが見えて、ロイがそのままにするわけがない。
「ビッグチャンスだ」
その言葉は戦闘に対して放ったことだ。真面目だ。
新入りの両足首を再度掴んで、優しさを見せて地面から引っこ抜いたと思ったら……。その勢いをさらに上げて、彼女を振り回しながら周囲の建物にぶつけさせる。鋼鉄以上の身体は決して壊れなかったが、ダメージはロイの打撃より入っていた。
「旋風門外」
女かつスカート付きの相手にかますと、パンツが見える。
不純な技でもあるが、それを抜きにしても遠心力と連続性の高い投げ技(打撃に近い)で、ビルに突っ込めばかなりの威力となる。
バギイイィッ
爆弾や銃火器がなくとも、ビルが崩落していく。その光景と同じ威力が新入りに当たっているわけだ。
「がああぁぁっ!」
さらには技の終了時に掴んだ足を離す事で、敵との距離も離せる優れた攻撃。
この状況に持ち込むのはかなり大変な作業であるが、それに伴っているリターンがある。ジャイアントスイングじゃねぇか……。
ドゴオオォッ
「ぐっ………システムエラー……」
ロイの連続攻撃を浴びながらもまだ起き上がってくる新入り。だが、頭に深刻なダメージが入っていた。硬い身体を持つ相手だからこそ、ロイは一点に集中して攻撃を集めていた。
「パンツ見えても嬉しくねぇな」
女との戦いは燃える方だが、リードするにはちょっと荷がある相手だ。ロイは膝に手をつけながら休息をとった。
「それだけの相手ってことか?余裕ねぇな」
とにかく、相手にダメージを与えることができる手応えは掴んだ。あとは積み重ねてスクラップ行き。お楽しみなんかしてる余裕もなさそうだ。
力ではなく、技で勝てるというロイの選択は間違いではなかったが、やや侮っていた点があった。
「学習装置起動」
朴との戦闘で教訓したポセイドンが、自動格闘学習システムを新入りに施していたこと。あくまで試作型であるため、実証できるかは分かっていなかった。
"超人"とは非なる技を持っている"科学"は格闘戦においても発揮される。




