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RELIS  作者: 孤独
ダネッサ・オルトゥルス編
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悪意の満ちた炎

「出てこいよ、隠れる柄じゃねぇだろ」



ラッシも無事に辿り着いたわけだが……。敵はらしくもなく、物陰に隠れたままだった。何を待っているのか、ラッシには分からない。

敵の位置が分かっていれば隠れている壁ごと破壊すればいい。ラッシは両手を祈るよう握り、敵の方へ向けて捻った。



「愚者の祈り(ジュリエット・ポーリーン)」



竜巻と雷撃が敵の隠れる壁を粉砕かつ、その先まで貫通する。直撃すればどれだけのダメージかは見て分かる。

新入りほどの派手さはなかったものの、十分気を引くインパクトだ。



「くくく……」



バズーカを背負った黒い龍の仮面の博士が、腹黒く笑いながらラッシの前に立った。警戒が強い中での奇襲は失敗しやすい。



「やはりお前。なかなかやるな」

「人間風情に評価されるほど落ちぶれちゃいねぇ」



ラッシにとっては幸運かもしれない。最終的にポセイドンは殺すとして、その部下の誰かとは戦うはずだった。その1人が間違いなく、クロネアを殺した奴。一番、殺したい奴だった。

殺意の表情を作るラッシに対し、相手は意外な言葉を放った。



「別の誰かが乱入されると、困るんだよ」



彼が奇襲をせずに待っていた理由は、新入りの開戦にあった。彼女の破壊力は嫌でも目に付く。春藍もライラも、ロイの助太刀に向かっており、ラッシの方向とはまったくの逆。彼はタイマンを求めており、それでならば奇襲せずとも勝てる。そう感じてる。



「それはこっちも望んでいるぜ」



ラッシもまた気持ちはほとんど同じ。



「テメェをぶっ殺すのは俺だと決めてる。他の誰にも殺させねぇ」



ラッシの両腕に溜め込んだ魔力。左腕からは風を、右腕からは雷を。



「逝っとけクソ野郎!!」



黒い仮面の博士のバズーカからは強力な炎を。



「お前も仲良く消し炭になってろ!」



魔術と科学の違いはあれど、ぶつかり合えば単純な押し比べになる。

バズーカから誕生した炎の龍はラッシの風も、雷も飲み込んでなお突き進む。



バヂイィッ



「なっ!?」


しかし、炎の龍でも消化できなかった雷と風が突き破って彼を襲った。炎に対し、風と雷は不利とまではいかないが、完全な防御は難しかった。一方でラッシも少しは炎を浴びて、体の一部が焼けてしまった。



「あぁぁ」


ラッシは項垂れる。

奴の炎の直撃はかなりマズイ。雷と風で少し押していなければやばかった。その炎でクロネアを焼いたのか。



「痛かったろ」



怒りと悲しみがもっと欲しかった。ポセイドンが最大の敵だとしても、ここで朽ちて良い。それだけ許されないことをあいつはやった。お前がより黒く焼けるべきだ。

体の奥まで眠っている魔力を、心の暗さで引き出し始めるラッシ。



ヒュウゥゥッ



ラッシの体を中心に発生する竜巻。突っ込んでくる炎を逸らすだけの風力が帯びており、奇妙な磁場も生まれていた。精神的なリスクを引き換えに伸びる戦闘力は"魔術"特有のものがあった。

10~20mの間合いで撃ち合い。ラッシは攻めるという一托をこの時点で決めていた。



「この痛みはテメェが味わえよ!!」



突きを繰り出す動作から竜巻と雷撃の発生。速さと威力、貫通力はあるが、ほぼ直線で向かってくる攻撃で読みやすく、連続性も高い方ではない。

ラッシは明らかに手数で勝負する戦い方。捨て身の戦闘思考。



ゴゴゴゴゴゴゴゴ



捨て身が作り出す攻撃は甚大であり、彼の正面に立っていれば危険であった。



「怒らせたか」



頼りない壁を盾にしながら身を隠す。

ラッシは戦闘を考え、彼は戦場を考えていた。まだ戦いが始まったばかり、余力を残しながら戦う必要はあった。無論、こんなところでくたばるわけにいかない。



「ふむ」



ラッシの攻撃は直線が目立つ。風の防壁もあって、生半可な炎では打ち破れそうにない。"魔術"であるラッシを相手とするのなら消耗戦に持ち込むのは当然として、多方向からの攻撃は有効と見た。

属性と称した方が分かりやすい、炎や雷、風。

それらの相性は確かに大事であるが、戦い方にも一工夫があれば幅が広がる。



ドゴオオォォッ



バズーカから打ち上がる炎の龍は先ほどと違い、意思を持って行動することができる。形を保ち、操作できる時間はそれほど長くはないが、複雑な動きを備えていた。これがラッシの直線的な攻撃とは非なるもの。



バヂイィッ



空中で10つの炎の小龍に変わって、ラッシにめがけて様々な方向から襲い掛かってくる。



「しゃらくせぇ!」


ラッシは自分の周囲に吹く竜巻で軽々と小龍が消し飛んでいく。炎はラッシの前に散ってしまった。しかし、地面に残る炎となれば風に消えぬよう、燃えまくる。



「"科学"こそが何よりも優れている」



燃える炎は壁よりも頼りになる目暗ましとなってラッシの周囲に残ってくれた。


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