10人の覚悟
10人の覚悟。
『必ず私も行きます!待っていてください!』
夜弧はそう言って、春藍と別れた。迂闊に春藍達と会いに行けばラッシに見つかって面倒だ。
「ありがとね。春藍」
「僕にはこれくらいしかできないよ」
ライラはこうしてみんなが生き残れることを考えている。相手が相手だ。"黒リリスの一団"を髣髴とさせる戦力であるのは間違いなかった。
「おーぅ!2人きりはずりーから俺が来たぞー!」
「ロイ!」
「あんたは来なくてもいいわよ」
「冷たいなー。ライラは………」
ロイは戦闘でしか取り得がない。こーゆう戦場でこそ、ライラ達の期待以上の働きをしなければいけないと課した。ポセイドンは無理でもその配下達を最低2人。討ち取る気迫を内に秘めていた。
「ったく……1人酒は不味いぜ。クロネア」
相席に日本酒を置きながら、ビールを頂くラッシ。親友の死を、無駄にしたくはない。
それを深く胸に打って最後の酒を飲んだ。
「標的、5人確認……?」
新入りはメンテナンスを終えた。新たな標的を打ち込まれ、その1人に奇妙な感情抱いた。
「春藍?………春藍?」
1人の標的に首を傾げながら、この迷いの答えを探すも見つからなかった。機械である彼女は"見つからない"という答えに迷いを削除した。
「まだ来ないのかよ。早く来いよ。寝るぞー」
いつでも戦えるよう配備していたダネッサであったが、まったく来る気配がなく。少し離れた物陰で一眠りを始める。メンテナンスが完了した"櫓図"を片手で握りながら、最後くらいは一暴れして朽ちていきたかった。
自分の役割もまた、管理人と同じく果たされようとしていた。
「ようやく、お前の出番が来たぞ」
桂は無事に寄りたかった場所に辿り着いた。そこで待っていた人物は……。
「我はまだ時間が欲しい。ダネッサと共にここに来る敵を排除してくれ」
「ならなぜ、あいつ等を呼んだ?」
「それが本来の、"お前の仕事"だ」
「ちっ」
「盗まれたらたまらんからな」
ポセイドンは研究室に引き篭もる。とても大切な実験を続けるため、黒い龍の仮面の博士を遠ざけるべく、ライラ達を呼んだに過ぎない。
彼等と戦闘をしている間に実験を終わらせ、最終段階に行く。
「一体なんの"科学"なのか……。終わり次第、それを拝ませろ」
黒い仮面の博士は仕方なく配置につく。
ポセイドンが完成させてからでも悪くない話だ。
また、それとは別に感じていることもある。あの頃、決まった時からいつかは来ると思っていた。
「……春藍。ここまで来たんだぞ。お前は知らないかもしれないが、取り返せないほど時代は進んでいる。お前もこっちに来てくれ」
目的はいくつもあった。それでも、たった1人を連れて行きたかった。
「なんか不安だなー……」
春藍は雲に隠れてしまった月を見ながら、この戦いが自分にとって過酷なものになるのはこの時から感じていた。
自分にできること。自分が選ぶべきこと。そして………。捨てるべきこと。
実際に起きなければきっと、選択も、思考もできないだろう。
誰も考えないからだ。
10人が感じ、味わった夜。時間を大切に使った。
日が昇り、腹を満たし、添える程度の身嗜み。
「行くわよ」
ライラの言葉から全員の緊張が高まった。各々、戦闘準備を整えたまま。
「みんな、無事を祈るわ」
ドンッッ
"科学の頂点"ブライアント・ワークに、ライラ達は飛び立った。




