お前はそーゆう奴じゃん?
「それでどうするの?」
ライラは一回だけ質問をする。しかし、腹の中は決まっていた。
「ポセイドンがいる世界にいける"科学"は、ここには4つしかない。つまり、誰かがここにいなくちゃいけない」
春藍、ライラ、ロイ、ラッシ、桂。
この中から、戦場を考えての精鋭4人を選ぶとなったら……。戦力を考えれば桂は大本命。柔軟かつ回復もこなせる春藍が次点。広大な戦闘範囲、索敵能力も高いライラが次。
そう考えるはずであったが、ライラが宣言する。
「アンタが残りなさい」
彼女が指差した相手は……
「拙者が?」
「そうよ。実際、桂だってこれを使いたくないでしょ?」
ポセイドンがわざわざ居場所を教えてくれているが、どう考えても使えば罠があることは明白だった。
「少なくとも位置は知られる。奇襲が得意な桂にとっては最悪でしょ?」
「失礼だな。……しかし、拙者もそう思っていた」
戦略の話はした。
しかし、そんなのは関係がない勝負の決め方がある。
「拙者の"雷光業火"で奇襲が決まれば、"テラノス・リスダム"など敵ではない」
「敵として戦ってから、それは言いなさいよ」
命の取り合い。タイマンはその手段でしかなく、正攻法も奇襲も必殺にこなせる。
ライラは桂を選んだ理由はまだある。
「桂はポセイドンの前に消耗して欲しくないし、桂とラッシは管理人。異世界の場所さえ判れば移動できるんじゃない?そーゆう"科学"はあるでしょ?」
桂がこちらのジョーカーであり、管理人であるからこそ。ライラ達が先陣を切ってから桂を踏み込ませる。
可能であるならばそれが最良の選択。不安があるのは……
「ポセイドンともいきなり戦うかもしれんぞ?」
「覚悟するしかない。少しでもダメージを与えることに注ぐのよ」
ライラ達側に死者が出る確率が高くなる。しかし、勝つためには死者の云々なんて計算はできない。桂を無事にポセイドンのところまで届ける。それがライラ達の役目でもあった。
「春藍、ちょっと」
「な、なに?」
ライラは春藍を呼んで耳元でお願いする。
「夜弧にポセイドンのいる異世界を教えてきなさい」
「え?」
「春藍にしかできないわ。ほら、行ってきて!」
春藍の背中を押して、夜弧への伝言を頼んだライラ。自分の話が長くなるため、桂もラッシも足止めできる。彼女は管理人とは出会いたくないって言っている。ナイス判断であった。
「帰りに飲み物を5人分持ってきて!」
「ええっ!?」
「で、続けるわよ」
春藍が部屋に出てから話を再開するライラ。何かの企みを一掃する言葉を添えて話を続けた。
「ともかく、使えば罠はあると思うの。でも、使わなきゃ私とロイ、春藍は行けない。私達はこれで行く」
どんな異世界かも分からないが、事前に話せることは多くある。
まず、その異世界に辿り着いたとしても、みんながバラバラの位置に落ちるという予測。そうなった場合、4人は敵と戦うよりも先に合流すること。
もう1つ、敵の情報を共有すること。
ポセイドン、ダネッサ。この2人は敵として確定。もう1人は、あの黒い龍の仮面を付けた大男(博士)。こいつはライラもラッシ、ロイも対峙しており。生き残っている可能性が高いのは分かっていた。
「ふむ……」
桂は"彼"のことを考えながら、ライラ達にも情報を流した。
「最後の1人は女だろうな」
「女?」
「拙者は斬ったつもりであったが。ともかく、あのメイドも強いな」
新入りの姿を伝え。ともかく、敵の姿というのは大体分かった。
向こうもポセイドンを経由して、能力を伝えているだろう。
「た、ただいま~」
「あ!おかえり」
話が纏まってきたところで春藍も戻ってきた。夜弧に伝言をし、飲み物まで買ってきてくれた。夜弧がどのように異世界を移動しているかは分からない。ここまでできるのかも怪しい。しかし、望みはあると思っている。
「拙者が後から行くわけだな」
「不満あるの?」
「いや、都合が良い。言っただろ?拙者にも寄るところがまだあるのだ」
作戦は決まった以上。決行するにはもう少し緊張を解く必要があった。
「しっかりと休んでから行くんだぞ。ライラ」
「わ、分かってるわよ!」
「ラッシ。この4人を頼む。居場所の通達もな」
「桂さんはどこへ?」
「心配するな。戦場には間に合う」
春藍が持ってきた飲み物にも手をつけずに部屋を出て、どこかの異世界に行ってしまった桂。ポセイドンと同じく、まだ何かの企みがある。
「ま。行くのは明日にしましょう」
「時間掛けていいのかよ!?」
「美味しいものを食べたり、眠ったり、リラックスしたいのよ!それにもう夕方になろうとしてるし、こっちと同じ時差なら戦闘が夜戦になって私達が不利だわ」
戦うなら昼間。そう思っているが、どーゆう場所かも分かっていないのにテキトー過ぎる理由だ。




