表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RELIS  作者: 孤独
ラッシ編
281/634

"科学の頂点"ブライアント・ワーク

「んん?」

「目が覚めました?」



少しの間、寝ていたような気がしていた。けれども、自然に何をしていたか思いだした。


「あ。……ああ。もう、戻らないとね。ライラが怒るかも……」

「はい」



寝ていたという違和感すら消えてしまった。


夜弧は非常に残念そうな顔だった。けど、どーしてそんな顔をしているのか。春藍には分からなかった。

春藍の記憶は今、夜弧が作り出した記憶を流し込まれ、行動していた事になっていた。ただの散歩、食事、釣り、山菜取り、温泉、……そーいった事をしていたと感じていたが、本当の出来事は散歩以外全部なかった。夜弧がずっと、苦しい表情で記憶を弄っていた。



あの時はなかったことになった。



「!……春藍様。ごめんなさい」

「なに?」

「私。管理人には会えません。桂さんがいるような気がしますので、私はこれで少し、退きます。情報があれば私に伝えてください」

「あ。ああ……そっか。うん!バレないように夜弧に伝えるよ!」



そして、一時的に夜弧も離脱。宿から少し離れたところで待機することになった。




ガシャアァァンッ




「なーんで、あいつはライラちゃんなどと一緒の世界にいられるんだ。しかも、脱出できずに閉鎖空間でいやがって」

「知るか。バーカ」

「許せねぇ……春藍の謎の運を許すことができねぇ!」

「んなことより、桂さんがここに来てる。ライラもここにいる。合流するぞ」

「あーー!おい!ラッシ!俺を置いていくな!」



クロネアの伝言を受け、異世界に逃げていたラッシとロイも到着。傷を癒し、万全に戦える準備をしてきた。

それと同じく、ここにやってくる客人。



「どーやら、敵地に突入しちゃったか?」



桂だけではなく、感じてきた強者達の気配を察知するダネッサ。

遣いでやってきただけというのに、なんだか危険が一杯である。軽々引き受けるものではなかった。



「"櫓厨"もメンテ中で困るぜ。いや、マジで」



桂の存在感はとても大きかった。ワザとそうしているのかもしれない。それに誘われるように色々な強者が集まってきた。宿屋に入れば真っ直ぐ、そこへ向かって入ってくる連中。



「よく来てくれたな、ラッシ」

「クロネアに頼まれちゃ、嫌でも桂さん側だ。俺からも桂さん側」

「ロイ、無事で良かったわよ」

「うぉぉー!ライラ!久しぶりー!」

「傷はないみたいだね。よかったー」

「お前に対する嫉妬が増えたぞ!春藍!」



桂、春藍、ライラ、ロイ、ラッシ。……そして、外で待っている夜弧を加えればたった6人の、反ポセイドン派。

だが、それよりも数が少ないのがポセイドン派。死亡者があまりにも多い。っていうか、ブライアント・アークスの死者はほとんど桂が殺している。



「これで全員か?」



ダネッサはこの面子を前にしても動じずに足を崩して座っていた。向かい合うように五人が彼を見下ろしていた。



「遣いで来てるだけだから、戦うのはそこでしような。制止してくれよ、桂さん」


殺気向き出しのライラとロイを警戒しながら、桂に頼みながら話をするダネッサ。口は上手い方じゃないからポセイドンから渡されたキャリーケースをドーンっと、机に載せるのだった。



「ポセイドン様から渡された物だ。開けてくれ」

「承知した」



罠を警戒せずに桂がケースを開ける。そこにあったのは4人分の折り畳み傘と、電子画面を持った科学の二つ。傘の方はライラには見覚えがあり、おそらく異世界に移動できる"科学"と見ていた。



「4人分しかないじゃない!」

「だって、俺達が残り4人しかいねぇんだもん」



4人も6人もそんなに変わらないけど。


「そっちが5人もいるとは思わなかったんだろ!」

「まぁ、慌てるなライラ。逆に向こうの人数が分かって良いじゃないか。この男、嘘をつける性格ではない」



桂はもう一つの科学に手を伸ばし、スイッチを入れた。この中にポセイドンの伝言が入っている。メールのような形で文章が表示される。



桂へ。


ついに雌雄を決める時がきた。遣り残しはないだろうな?

管理社会が崩壊し、人類に大きく影響が出る期限はあと5日。

戦争の舞台と準備は整えた。

我の秘密基地。"科学の頂点"ブライアント・ワークを戦争の舞台にする。


もう一方の、科学にデータを入力している。使えばすぐにその異世界に辿り着ける。

こちらはいつでも戦う準備ができており、期限以内には来てくれれば戦争となる。



我から逃げるんじゃないぞ?





「誰がそんなことをする」



最後の一文はあちら側に言いたい。

しかし、桂も気になる異世界の名があった。


「ラッシ、この異世界を知っているか?」

「いや、聞いた事がない」



管理人である桂もラッシも聞いた事のない異世界。管理人でそれはどうかと思っているライラとロイ。

しかし、相手がポセイドンならば一度破棄していた異世界を借り、一から作り出していてもおかしくはない。書類を改竄すれば誰にも気付かれず作ることもできるだろう。



「お前達の秘密基地か。後先考えず破壊するにはとても都合が良い」



どんな罠があるか分からないものの、桂は敵地での戦いならば問題ないと言っている。この承諾にダネッサも立ち上がってホッとした表情を作って



「成立か。なら、俺は先に帰らせてもらうな。誰でも良いから強いのが来いよ」



宿屋を後にして、先に秘密基地へと戻っていくダネッサ。



「あいつのあれを奪えば全員、移動ができたんじゃない?」

「ライラ、礼がなっていないな。ここで戦っても向こうで戦っても変わらないだろ」



担っている大将がズバ抜けて強い。お互い協力者が複数人いても、大将同士のタイマンになる事は読める。ここでダネッサを討ったところで状況はあまり変わらない。


「戦略が少し必要だ」


桂の方が戦闘特化であり、ポセイドンをよく知っているため戦略を全員に伝える。



「ダネッサの言葉通りなら。ポセイドンは拙者が、……ダネッサを含めた3人をライラ達が戦う形が望ましい」

「それが理想ね。相手にもなれそうにないし」

「ライラ達は敵を撃破した後。ポセイドンの科学、"テラノス・リスダム"を探し出し、これを破壊すること。でなければ、拙者とてポセイドンを討つのに長期化する。ポセイドンと直接戦うわけではないのなら、お前達でも十分にこなせるミッションのはずだ」



"科学"使いは、本体が壊れたりすれば無力になる。"魔術"や"超人"とは違って、ライラ達にだってポセイドンと戦う術は少なからずある。



「不覚であるが……。拙者もラッシも、"テラノス・リスダム"の本体を見た事はない。敵を倒してからで良い。その世界を探ってくれ」

「ポセイドン様の、その能力はなんですか?」

「"世界の構築"。とにかく、なんだって創造し変革させる科学。知らない方が良い代物だ」



詳しく語れるほど、知っているわけでもない。



「ポセイドンは拙者が引き受ける。まずは各々が敵を撃破することだ」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ