正義の独裁②
みんなの意見を取り入れよう。全てが繫がることは良い事なんだよ。友達を増やそう!協力し合えばきっとより良い世界が生まれるんだ。
………
んなわけねぇだろ!バーカ!!そんなことになったら、全滅するんだよ!みんなの幸福、みんなの意見、みんなの気持ちが、一緒になったら吐き気がする!生きられる気がしない。
この世に協力という言葉は、利があって成立する。利とは儲け。儲けとは平常、誰かが損をしてでも得を求めること。
在り来たりなルール。何気ない買い物が、小さな世界を作っていたんだ。
「あいつなりの正義の独裁」
弱き者、適合できない者、敗者、廃人、無能、クズ、カス、馬鹿。
役に立たない?おー。それは間違いない。自分を含め、クズ共はこの地面に目一杯広がっている。むしろ、クズを見つけられない世界なんて存在しない。
クズの下にクズがいる。クズの隣にクズが沢山並んでいやがる。
足し算しても、掛け算しても、クズは成長しなかった。当に成長できる希望がなかった。
「思想に正しいも間違いもない。なにせ感情が源。あるとすれば、対象者に利があるだけさ」
ポセイドンのやる事は彼が思っているクズ共の一掃。彼が思うクズは頭が良い悪いとか、そーゆう意味で決められるわけじゃない。決定権の全てが、彼にある。
"科学"のみの世界を造り上げること。
管理人という絶大な力を持ち、それを支配者として振るう時が来た。
「時間が経てば掲げる物は固まっていく。潰すなら今しかない」
別に桂は自分以外で、ライラやロイなどの"魔術"や"超人"、……もしくはそれ以下の本当のクズ共を救いたいからという理由はなかった。
ただ、ほとんど気に食わないからという理由に過ぎない。
そんなに大切に思うわけないだろう?いくら管理人でも、クズを救ってどうする?
一番の理由はただ、ポセイドンが世界の全てを握ることが気に入らないだけ。でも、それが政治や思想の根源。桂はなにも間違っていない。
「協力してくれないか?ライラ。ブライアント・アークスも、ポセイドンの配下。奴等が危険であるのは分かってくれるはずだ」
もし、その未来が幸福と訴えるのなら全員がしてくださいと言うだろう。
しかし、管理人内のいざこざ。このことを知っている人間達など10も満たないだろう。
みんな何かがあったと、感じているだけだ。
「はぁ……」
ライラは溜め息をこぼした。
「そんないきなり……」
ライラの心の中は荒れていた。言う時はとても強くなった。
「あんたは何を考える!?桂!」
「色々と考えている」
「具体的に!これから先!管理人がもう少ないのにその数を、……よりによってポセイドンと戦う!?はぁ!?」
人間は管理人から解放されたいと願う者は多い。それはあくまで緩やかに管理人がなくても、やっていけるよ!……っと、骨折の際に付けられるギプスをとるみたいな感じの傾向が望ましいのに。
「唐突に、「はい。俺達消えます」……なんてされたら!世界中が大混乱よ!少なくとも、あんたはポセイドンよりサイテー!」
戦争が起きるとする。
ポセイドン国は、『お前等を幸せにするため統一する』と発言する。
一方、桂国は、『ポセイドンが気に食わないからあいつ等潰す』と発言する。
この例えがまさに今だ。ライラからしたら……。ポセイドンの思想なんて彼女は望まないが、思想が感じられない桂に協力するなんて難しい事だ。
未来が見えていない。桂は"黒リリスの一団"と似ている。
「拙者に高尚な思想などない。あるのはやはりそれだけだ」
「……協力とかしなさいよ。あんた達……馬鹿?」
「馬鹿じゃない。それなりに拙者にも奴にも考えはある。だが、拙者の役目はない。人類の役目だ」
桂に思想は感じられない。
桂が握る、この後の世界なんて未来がないと自分自身思っているのだろう。
「人類は意見も出来ず、ポセイドンに従うのか。拙者はあくまでお前達に権利を与えているに過ぎない」
空蝉だった。
世界を知らずとも生きている連中の意見を作ろうというのか。
桂の空想。人間の無関心。
「その権利を行使できるのはお前だけだ。ライラ」
世界の分かれ目を突然、握った一人。
正解なんて出るわけがない。ライラだって、こうして話す桂だって、分かっていない。
普通の奴なら沈黙に落ち着くだろう。正解がないのだから……。
しかし、ライラは違った。
怒った顔を鎮めながら、
「分かったわよ」
答えることができた。




