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RELIS  作者: 孤独
ラッシ編
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春藍とライラと夜弧のデート②

クロネアの遺言を聞いてから4日が経った。

そして、5日目に迫ろうとする4日目の夜。ライラは宿屋の屋根から夜空を見ていた。黒い雲であるが、雨は降らないその雲。黒猫を見つけるのと同じくらいの縁起の悪さ。



「………………」


吹く風もどこか肌に悪い嫌な風。



「ロイは無事かしら」


春藍が夜弧を治療している間、ライラはロイの捜索を続けていた。これだけ捜しても見つからないということは、ラッシか別の管理人に連れて行かれたか、別の誰かに殺されたか。後者はロイの実力を踏まえればありえないとライラは思っている。



「その管理人は来てくれないし」



一体いつまで待っていれば良いのか。こっちはカードを持っていても、逃げてしまうかもしれないカードだ。

その、キーマンと言えるカードがライラを捜していたかのように、宿屋の屋上に上がって来た。


「隣、良いかしら?」

「なによ、夜弧」



左足はまだ完全とは言えない(春藍談)らしいが、すでに夜弧は歩き回り、こうして昇ることもできるようになっていた。左足が元に戻るというだけで奇跡である。


「左足は大丈夫なの?」

「足手まといにはならない。もう平気。ここまで再生すればあたしの"トレパネーション"の自己治癒でくっつけられる」

「ならいいけど……春藍を不安にさせないでよね」



2人で眺める夜空。並んでみると、あまり居心地は悪くなかった。


「夜弧はこれからどうするの?」

「ライラこそ、どうなの?」


お互いの目的は秘密にしている。けれど、ライラの目的は微妙に迷走している。また寄り道が必要だと感じていた。自分の周りが、走っても追いつかないほど変わっていく。時代の動きを見ずとも、ライラには分かっていた。

夜弧に声を掛けたかったのは春藍よりもこっち側の人間であり、仲間だからだ。



「私は……」


自分から言ってしまうのは決断しろって事なんだろーな。



「戦ってみるわ」

「なにと?」

「これから先の未来と」



具体的には分かっちゃいない。これは良くないんだけれど、良くないなりに知らなければいけない事が増えている。

夜弧の目的は何か分からないけれど、その先は似ているのかもしれない。


「私、5年くらい前は世界を救いたい一心で故郷を飛び出した。そこで春藍やアレク、ロイと出会って色々な厄介ごとと戦っていた。今もその続きなんだけど」



ちょっと辛いことを言える関係で良かった。



「戦うべき事は敵じゃないって、最近気付けた」

「敵じゃないって……?」

「色々あるの。この世界の問題はきっと。根深いところからある」



以前のライラは"SDQ"だけを止めたいと感じていた。でも、今はそれ以外にも気を遣えるようになったと思う。戦うべきものはそれだけじゃなかった。色々の問題が世界に生まれる予感はしていた。



「今度。夜弧に余裕があったら、私達の世界に来て一緒に行動しない?」

「お誘いですか……。私に余裕があったらですよ」

「うん。きっと、その方が春藍も喜ぶと思うし」

「!ひ、人で釣らないでください……もう……。でも、いつかそーなることを私も思ってますから」



春藍は鈍感だから分かっていないと思う。

これからきっと、とんでもないことに巻き込まれると二人は感じている。何なのかは口にしなかった。言われなくても分かってる。



「一つの時代が終わるのかな」


それは歳を重ねて感じることと、時を重ねて感じることの二種類があった。ライラもこの歳で初めて後者を感じていた。


「戦ってくれる?」

「ええ。私の目的はそこにもあります」


どーやって戦うかも分からない。それも理由なんて、きっと後なんだろうと思う。こんな戦いに命が懸かるなんて……。

でも、それが自分の決めた事か。前の自分はとても浅はかだった。

世界を救うって、滅亡を回避して終わりじゃない。それからも続いていくの。



「…………あ」

「?どうしたの?」

「そうだ、約束を思い出しました。というか、それを言いに来ました」

「?なんの約束よ、夜弧」

「ほら、あの時。私の左足が直ったら春藍様と、1日お付き合いしていいという約束ですよ。忘れましたの?」



その約束をスッカリ忘れていたライラの表情はとても面白かったと夜弧は思った。


「あ、あんた!?やっぱり足を故障してなさい!」

「嫌です!私にも……いつ、離れてしまう転機が来るか分かりません。命が懸かる戦争を控えているならなおさら!そーゆうわけで明日から!ライラはどこかへ行ってください!邪魔です!」

「じゃ、邪魔ってどーゆうことよ!?」

「2人きりって約束です!思い出してください!」



明日、春藍と夜弧のデートが決まりました。それを羨ましそうにライラが覗くのであった。



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