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RELIS  作者: 孤独
龍編
262/634

ポセイドンのカード

「あー。ともかく1人は消えた」



フルメガン・ノイドは死んだ。しかし、彼がいた地点の"ラ・ゾーラ"の空間を解除した瞬間、彼が蘇る可能性があった。

相手の抵抗を完全に奪う即死であるが、その空間を持続するリスクは龍にとってはかなりの枷であった。ただでさえ、巨体を持つフルメガン・ノイドを消すにはかなりの魔力を消耗する。



シュボッ



「……げほぉげほぉ。……ベィスボゥラー。すぐに向かうぜ」



タバコを吸って切り替えていく。

ポセイドンに集中するためには先に周りを削った方が良い。ポセイドン側でまともに動ける管理人はもうリップル相馬のみ。他は朴のファイジャッパーから逃げ回っているだけ。龍がリップル相馬に負けるわけがない。


このまま、ポセイドンに対して3人で立ち向かう態勢にしていく。



「ふ、フルメガン・ノイドが消えた………。な、何が起こったってのー!?」

「……龍が来れば分かるさ。もちろん、リップル相馬が体験して分かるんだけど」



戦況の悪化。

リップル相馬1人では場が持たない。戦うという時間稼ぎでは龍には効かない。


「くそっ!勝てるわけがないっての!」


ここは逃げの選択で時間を稼ぐ。"ラ・ゾーラ"の空間に入らなければ龍の攻撃手段はない。リップル相馬の判断は間違いじゃない。翼のコスプレを装着し、上空に逃げる。

誤算だったのは今対峙している相手が、



「ピッチャー!ベィスボゥラー!」



球史に残る大投手であった事だった。



「渾身のストレート!」



バギイィッ


野球ボールを空に逃げるリップル相馬にめがけて投げ込む。かなりのスピードボールがリップル相馬の体に直撃し、よろめきながら撃ち落される。



「くぅっ」

「逆転優勝だ。それもまた、"ペナントレース"さ」



龍に殺された方が幸福だったかもしれない。



ピィィッ



ベィスボゥラーの指から赤い光が発せられ、リップル相馬の頭に何秒も当てられた。

この光を通してベィスボゥラーの役割である記録のデータが、リップル相馬に流れ込む。頭脳が膨張し始める。



「!!ああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?いやああああああああああぁぁぁぁぁっっっっ!!?」



コップの限界量からはみ出るように注がれる水。

しかし、それはまだ優しい記憶の送り方だとベィスボゥラーは思う。自分の能力はコップから溢れる水が部屋を多い尽くし、コップの全てを水で覆ってあげる。



「やめてえええぇぇっ!!?」



窒息に似た苦しみがリップル相馬を襲い。



「いいいぃぃぃっ!!」



何かに気付けた時。爽快な風を感じた。



バゴオオォォッ



リップル相馬の頭脳は容量を超えて破裂した。綺麗なコスプレを纏いながら頭だけ吹っ飛んで逝った。消えるよりも残酷で、苦しんだ死。死に幸福を感じたほどの痛みだった。

リップル相馬。ベィスボゥラーと戦い敗れ、死亡。



「残念………だね」



ベィスボゥラーはスコアブックに書き込む。



【またユニフォームのデザインをして欲しかったよ】



それをリップル相馬の隣に置いて、龍との合流を図る。まともに戦っていたら負けていた相手だった。それと勝っても嬉しくない相手だった。



「なんだよ。お前も今終わったのか?」

「ナイスチャンスメイク」

「?は?俺が何かしたか?」

「龍のおかげで倒せただけさ」

「まぁ、なんでも良いさ」



龍とベィスボゥラーには、リスクがあるも一撃必殺の技がある。

一発逆転が可能な技というのは強敵を殺せる実力があるということ。2人よりも強いポセイドンを殺せるカードがある。



「朴の援護に行くぞ」

「うん。決着をつけよう」



ポセイドンは数、質ともに不利となった。ブライアント・アークスも桂の手によって援護が来る可能性はかなり低い。少なくとも、今は………。

フルメガン・ノイドを倒せるかどうかで勝敗が変わっていただろう。



バギイイィッ



「……戦略の図としては、お前が我を抑える役目だったか」

「舌、噛みますよ」



いきなり、ワールドクラスの技でエクスピーソーシャルを戦争後に廃棄させる一手を打った朴であったが、その後はポセイドンを抑えつつ龍の援護に回っていた。駒という機能でいえば龍やベィスボゥラーよりも大変なポジションであった。

フルメガン・ノイドとリップル相馬の死はポセイドンが朴を止められなかった事が、敗因の一つと言えよう。



「うむ」



高い壇上から戦況を見るポセイドン。桂はどうやら自分の部下達に抑えられたようだった。元々奴等は対桂のために造られ、教育させた人間(科学)達と言ってもいい。それができなければ自分の敗北だと認めただろう。

朴の防御を短時間で破るのは容易ではなかった。攻撃力の高い龍。さらにはベィスボゥラーまでこちらに向かって来ており、命が危ういことを知る。

もちろん、朴の相手だって命のやり取りがある。



「"暁狩り"でもお前を倒せんか」



自分で対朴用に作った科学ですら、このレベルでは通じなかった。相性なんてそもそも弱者が謳った考えか。長く試みたいが戦争に暇な時間は使えない。

ほぼ1人となったポセイドンは自由に行く。自由に暴れる。自由にこうして……裏切った。



「やはり我が動くとするか」

「!!」



戦争では朴の作戦勝ちであった。おそらく、これから先もそうだろう。

ここから先は誤算でもなかったのだ。

実はポセイドンにとっての誤算はなかった。敗北もなかった。

彼等3人の活躍は本来の目的に関係のないこと。桂さえ抑えれば十分。なにせ、ポセイドンにとって強敵と感じる管理人は桂ただ1人。




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



「あれはパイスー戦で使った……」

「"一輪の向日葵"(サン・ザ・サン)」



別にタイマンでいるつもりはなかった。そのつもりなら全てを焼き尽くしても良かった。派閥の仲間など捨て駒にして、燃やして良かった。



「くっ」


朴はすぐにポセイドンから目を離し、カスタネット・ギバンで龍の位置へ瞬間移動する。龍とベィスボゥラーの防御力は蒲生やフルメガン・ノイド、リップル相馬にも劣る。護らなければ焼死してしまう。



「そうだ。お前等ならそうする。全て分かっている」



ポセイドンはそれを待ってからこの爆撃を防御する装備を身につけた。朴が命を賭けてポセイドンと戦おうとするわけがないことを理解している。

この爆撃を煙幕として扱うポセイドンの戦闘は朴達よりも深いものだった。




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



燃える。燃える。燃える。全員の視界は、炎と煙に包まれた。再びの戦場は終わる世界の10数分からだった。



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