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RELIS  作者: 孤独
”酪農平原”モームスト編
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サヨウナラ、モームスト


スゥーー



とても平和な世界に降りて来たものだ。四人の目的地は決まった。

イビリィアもモームストでもそうだけど、僕達は異世界に居られる時間というのはとても短かった。目的も決まった以上、ゆっくりなんて事はないんじゃないかな?


「くぅー」

「すー」

「…………」



ライラ達はまだ眠っていた。疲れをとろうとして、グッスリ眠っているんだろう。けど、僕は眠れない。もう少しだけなんて。



キィィッ



部屋を抜け出して、ただなんとなく。夜空を観に行こうと外の方へ出た。

フォーワールドの星空とここの星空はどう違うだろうか?と比較しようにも、僕は星空なんて正確に見た事はない。

上に広がっているのはただの空。どこでも見かけている空だった。異世界とは思えない、フォーワールドと同じ平穏な空だとは分かった。



「ライラの言っていた事って、本当なのかな?」



こんな平和そうなところが終わるかもしれない。そんなことはありえないだろうと、僕には思える。

僕の本音は言えなかった。

ただみんなといれて、今日みたいに楽しい事や貴重な事に触れて行きたい。ネセリアもそう思っているんじゃないかな?けど、彼女には悲しさを感じなかった。

明日この世界から出る(予定)と分かっているのに、ここにまだ居たかったとごねたいような気持ちがなかった。満足している顔をしていたのかな?

あー見えて、ネセリアは僕よりも年上だから気持ちが割り切れているのかな?

もしかすると、また次の世界で楽しめるかなって気持ちに膨れているのかな?三人共ずるいよ、僕にはそんな気持ちがまだ。


「…………うーん」


戻ろう。朝は早いから、しっかり起きないとライラに怒られる。

布団の中に入ればすぐに僕は眠れてしまった。




◇     ◇




朝。みんなは同じぐらいのタイミングで起きて、顔を順番に洗ってから一緒に食堂へと向かった。今日、お別れです。なんて言う旅行客はいないだろう。

食事を作ってくれるおばちゃん達は何も知らない。これから僕達は別の世界へと行く。



「美味しい朝食」



ネセリアが言葉にするように、ここの料理は驚くほど美味しい。

こんな食事が続かないかなと思うのは、四人共きっと同じだろう。とてもゆっくりとした朝食で、しっかりと味を堪能しようと噛んでいた。

食休みもとって馬も借りて、四人はゆっくりと管理人が拠点とする場所へと向かった。

拠点と言っても常に誰かがいるわけではない。年間に一度か二度。管理人達がそれぞれの仕事の結果を集計しにいくという場所だ。まずいないだろう。

とても大きな木にポツンと付けられたドア。そこが管理人達の拠点だ。四人は辿り着いたが、ドアには鍵が掛けられている。



「そこは僕に任せて」


春藍の"創意工夫"で、鍵穴に合う形の鍵を外で毟り取った雑草を変化させ、一度だけであるが鍵として全うできる物に作り変える。



ガチャァンッ



「春藍の科学って応用力が相当あるでしょ」

「そうかな?」


ドアを開けて、中に入る四人。


「お、お邪魔しま~す」


恐る恐ると言った顔で入るネセリア。だが、春藍達は特別に不安がらずに入った。その中は


「ふ、普通だね。資料らしき物が綺麗に棚に収まっている」

「こんなもんでしょ。世界のデータを大切に納めているわけだから」

「紙媒体には用はないぞ、春藍」


どこにでもありそうな家。この世界が牧場やら畑ばりの家と思えば結構変わった中だと思うが、四人にとっては違和感がなかった。

四人で一通り調べるも、ほとんどが本や資料。あとはこの世界では珍しいレトルト食品が置かれていた。管理人も食事をするのは聞いていたけど、レトルトなんて凄く残念ではないかと思う春藍。



「うーん…………!」

「…………………」


紙媒体には用がないと言っていたアレクさんだが、管理人の資料の一つに目をやっていたのが見えた。何を見ているんだろう?


「っと」



ガゴオオォンッ


「!」

「?」


大きな音が鳴って、そこに向かった春藍とネセリア。ライラが何かを見つけた。というより、何かを動かしたに近い。現れていたのは、


「隠し階段(昇り)を見つけたわ。さすがに家の中にそのまま放置するわけには行かない代物でしょーからね」

「ライラ。よく見つけるね。すっごい」

「ふふん、行きましょ」



三人で階段を昇って。資料しかなかった1階とは、あんまり大差がない場所。また資料室のような場所だ。しかも、古そうに埃が結構ついている。


「ここのは随分古そうだね」

「そうとは限らないかも」

「え?」


一階と比べると古い感じがするが、床は綺麗なところと埃が被っているところがハッキリと別れていた。ライラは綺麗なところを少し見て、床を調べ始めると。



パタァンッ


「!」


随分と古典的なスイッチをまた見つけて、押す。



ガゴオォォンッ


「また階段が」

「さて、次はどうかな?」



3階に相当するところまで上がっていく三人。3階には資料などが一切置かれてなく。堂々と置いているのは誰もここまで来ないと思っていたからか?


「これ、桂のところにもあったものとおそらく同じね」

「この形は……」

「その」



物体ではない。分かりやすい形はなんだと聞かれたら、春藍とネセリアはこう答える。この"科学"の形は


「クローゼットだね。とっても大きいんだけど」

「お部屋全体が"科学"というのも珍しいというか、初めて見る形ですね。この科学の名称は……"JP空断.VER.CROWZT"…………?随分と長い名称(略称込みで)ですね。最初の方はどう読むんでしょうか?」



重々しいクローゼットを開ける。広さは四人が入るには十分である。そして、クローゼットの裏側にはボタンなどがいくつも付いたのがある。それも裏にビーーッチリとつけられたボタン。


「な、な、なんですかこれは!?気持ち悪いボタンの数です!」

「う、うん。大きい"科学"にしてはこれはとても複雑過ぎる代物だね。僕達にはまだこれを解読する能力はないな」

「そ、そ、そこを何とかしなさいよ!」

「大丈夫!こーゆう時にアレクさんならなんとかしてくれる。きっと大丈夫!」



その肝心なアレクだが、遅れてこの場所にやってきた。



「なんだ、見つけたか」

「遅いわよ、アレク。さっさとこの"科学"を見て頂戴」

「ああ」



クローゼット型の科学。これが管理人達が使う、異世界へ移動する"科学"なのか?色んな科学を小さい頃から作り出しているアレクをもってしても


「……このタイプはどーゆう技術なんだ?」

「アレクにも分からないっていうの!?」

「それはない。初めて触れるタイプの科学だと言う事だ」


アレクはボタンを不用意に押したり、クローゼットの下にあるこの"科学"の動力炉を開いたりした。解体とも取れる行為に三人はガクブルしてしまった。


「壊れたらどーするのよ!!」

「心配要らん。ちゃんと覚えている」


これが"科学"だというのは分かったが、どんな働きをするかは分からない。

使っている素材についても知らないのが多い。小さな画面を見つけ、押すボタンによって読む事ができない文字列が切り替わっているのも検証できた。


"科学"というのは二種類の動き方がある。春藍の手袋型の"創意工夫"やネセリアのCD型の"掃除媒体"、アレクのライター型の"焔具象機器"などは、それその物にも力があるが、使用者の力も必要である。ライラに言わせれば魔力というのが無ければ動く事がない。三人には魔力など無いに等しいレベルであるが、無いにしても作り出した"科学"がとても燃費が良くて、ガンガン動かせるのである。自分達の魔力で"科学"のスイッチが入ると考えると分かりやすいと思う。


もう一つが、本体のみで十分動く"科学"だ。イビリィアで改造した鍛冶屋の"科学"などは魔力なども必要なく動く。モームストで修理した牛の乳搾りの"科学"も電気だけ動く。

本体と使用者の力で動くタイプの"科学"は大規模な改良が比較的容易い。本体のみタイプでは、修復こそしやすいが大掛かりな改良は望めず、同じ能力を持って性能を良くする場合は一から作り直す事が多い。


っと、二種類の動き方が"科学"にはあるのだが、その二種類の動き方とは違う動きをしている。クローゼットが"科学"であるが二つの"科学"を一つに纏められている。

アレクの見つけた動力炉で動いている科学は、クローゼットが持っている"科学"をメンテナンスする"科学"に繋がっていた。クローゼット本体にはまったく力が入っていない。魔力で動くタイプでもない。




「…………」



使用された形跡もあるのに、どう動くんだ?



「!」



この科学の発見が、アレクにとって大きな好奇心を生んだ。

管理人達が握っている"科学"、異世界を分断している"無限牢"という物、アーライアという異世界。想像以上に



野心を燃やしてくれる。科学の力ってすげーってな。



「大丈夫だ。動かしてみよう」

「行けるの!?アーライアに行けるの!?」

「さすがアレクさん!!カッコイイ!!」

「こんな複雑そうな物を触ってすぐに動かせるなんて」


ポリポリと髪を掻いてから、アレクはみんなに指示をする。


「クローゼットの中に入ってろ。これは閉じたら即座に動き出す」


アレクの指示で三人はクローゼットの中に入り、アレクはこの科学を操作する。三人にとってはまだ意味が分からないボタンの数々。特別に詳細が書かれているわけでもないのに、アレクは早い手付きで操作を始める。



ピポポポロロ



画面に出てくる文字群の数々。



「……………」


アレクはその文字群を見ながらボタンを押して行き。


「飛ぶぞ!!」



ガチャアァンッ



自分もクローゼットの中に入って、クローゼットの扉を強く閉めた。

その瞬間。



「ひゃあぁぁっ!?」

「うわああぁっ!!」

「何これぇ!!!」



ライラの移動とはまるで違うやり方。下に引っ張られるような感覚があり、上から押し潰されるような力も加わっている。


「うわあぁぁっ」



ドギャアァァンッッ



春藍達はモームストから別世界へと移動した。その移動方法はまたも、管理人には映らない移動であった。



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