ベィスボゥラー VS リップル相馬
「むっ」
「ち」
ベィスボゥラーとリップル相馬は舌打をしながら、お互い同時に同じ方角へ走り出した。
間近で戦いを始める龍とフルメガン・ノイドの戦闘。
「倒すには惜しいカッコよさだ!」
「むぅんっ、吹き飛べ!」
"ラ・ゾーラ"と、フルメガン・ノイドが繰り出す兵器はあたり一面を大きく荒らした。
風、揺れ、爆発、衝撃、どれをとっても危険。
ガゴオオオォォォッ
「まともな接近じゃないと戦いにならないねー」
「このくらいで大丈夫かってのー。ほら、行くよ!」
動きにくそう。そう指摘したベィスボゥラーだったが、自分と同じ速さでここまで逃げ延びるリップル相馬。
「コスプレには魅力ありってのー!」
役に成りきることで能力はより強靭なものになる。
フルメガン・ノイドがロボットならリップル相馬は魔法剣士のイメージ。
「リブラバ」
黒い衣装から放たれる黒い色の光線。様々な軌道を描きながらベィスボゥラーを襲う。光に突き刺されば刃と同じ傷が生まれる。
ガギィッ
「と、危ない……って」
自慢のバットでいくつもの光を叩き落とすベィスボゥラーであるが、武器であるバットが一瞬で欠けてしまう。
「まいったな」
光で援護し、ベィスボゥラーの注意を散漫させたところでもう一つの武器であるレイピアを用いる。急接近し、ベィスボゥラーの胸をそのまま狙う。
バギイイィッ
「グリップエンドで止めるか!」
「ただの偶然だよ」
ゆっくりとベィスボゥラーはリップル相馬の頭に向けて指さそうとする。指の先端は赤くなり、レーザーポインタのようになっていた。
危険な指であることはリップル相馬も重々把握している。
「!ッ」
「"ペナントレース"」
膨大な記憶力を持つベィスボゥラーは、リップル相馬に向けて頭がパンクするほどの記憶を流し込もうと狙った。
これを喰らえば即戦闘不能になることは分かっている。
「あ、危ないってのー!」
「なんだ避けちゃうの」
接近だろうと遠距離だろうと、こうして向き合っていればベィスボゥラーはぶち込める。
絶対の攻撃力であるが、上手に頭を指ささなければ記憶が流し込めない。あくまで脅し。
リップル相馬の戦闘力と、その性質から瞬殺や圧勝を感じさせない。
あくまで朴の引き立て役。
スゥゥッ
「バットの予備はいくらでもある。粘り打ちだ」
バギイイィッ
金属バットとレイピアの打ち合い。ど突き合い。激しい攻防でも肉体の損傷はどちらも少ない。答えは出ている。
「ふんっ!ベィスボゥラー!気付いているんだろ!」
「……………」
「あんたじゃ、アタイに勝てない!あんたがアタイを倒せる武器は"ペナントレース"のみ!けど、それをやすやすやられるほどアタイは甘くない!」
精神的に圧すリップル相馬。無言ながらそれを理解しているベィスボゥラー。彼はたとえフルメガン・ノイドと戦っても負けていただろう。
「今は守備さ」
「あ?」
「私は君を龍にも朴にも近寄らせない。彼等が勝てばすぐに飛んで来る。分かるね?一刻も早く私を倒さないと、君も死ぬんだよ?」
逆に押し返せるベィスボゥラーの胆力。守備という奥深さを野球でよく味わっている。
辛抱強く護ってこそ、反撃のチャンスは来る。




