表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RELIS  作者: 孤独
クロネア編
252/634

夜弧の看病②

チャポンッ



「怪我人が温泉に入っていいのかしら?」

「大丈夫です。ちゃんと春藍様の許可もとってますし、左足以外は健康ですし、癒されたかったですから」



まだ片足のまま、夜弧はライラと共にこの世界で有名な温泉に入っていた。

傷を癒す効能もあるそうだ。



「もし痛んだりしても、私には"トレパネーション"があるので応急処置だけはできます」

「便利だけど、応急処置止まりなのね」



ライラは夜弧の監視も兼ねて一緒に入浴している。



「夜弧ってさ」

「なんです?」

「ホント、胸。平らよねー。改めて見て実感したわ」

「!!っ、わ、私のウィークポイントをォ!どこ見てるんです!?この年増!年齢危ないでしょ!」

「!!はっ、は、ははは。あんたねぇ!まだあたしはギリギリで20代だ!」

「四捨五入したら30じゃん!私、実は春藍様と同じぐらいなんですー!」



女の陰険なところを言い合う2人。



「誰だって年齢を重ねるものよ!貧乳だろうが、巨乳な私でも当たり前のように年をとるの!けどね、年ごとに成長が続くわけじゃない。だから言える。お前の胸は一生成長しないし、たぶらかす事もできないんだよ!」

「じ、じ、自分の、胸が大きいからなんです!?若い方が良いでしょ!同年代の方が親しみやすいです!それに、あなた。私と比べてるだけじゃないですか!?パッと見、平均からちょい上ぐらいでしょ!色気はどんどん落ち込む一方じゃないですか!」

「あ、あーんですって!?」

「戦いますか!?」



温泉という癒しスポットでも、2人の仲は良くならない。

お互い狙っている男がいるわけだ。互いに、良いところを見つめるよりも弱点に目が届くのは当然だ。バチバチと火花が散り、魔力が浮遊し始めている。



「元からあんたの道具を奪えれば解決する!」

「こっちだって、あなたの味方になるつもりはないわ!」



お互いの感情が動いているのは1人の男。

重要な人物が戦場になりそうな、この温泉に来るわけもなく…………



「ライラ、夜弧。凄い殺気がしたけど何かいたの?」

「へ?」

「え?」



普通、女湯には来ない。という常識がこの天然助平には通じなかった。

当たり前に不安だから来てみたよ、という顔でこの場所にやってきたタオル一枚、湯に浸かりながらここに歩いて来た。



「もしかして喧嘩?」

「な、な、な、……なんであんたがいるの?」

「は、春藍様!ここは女湯です!」

「え?でも、混浴時間もあるんだよ。男湯と女湯は繫がってるし。2人が入っているなら僕も入った方が良いし、夜弧も心配だし……」

「…………は?」



ベキイィッ



殺気は一瞬で消え、別の怒気が生まれた。ライラが代表して、春藍に近づいて頭を引っ叩く。



「いたぁっ」

「なんで言い争っていたか、あんたには分かんないでしょーけど」

「?……?……」

「普通、女湯に堂々と来る男がいるか!?」



さらにもう一発殴るライラ。

春藍には殴られる意図がまったく分からず、少し涙目であった。なぜ分からないのか?


「あ、あの。男湯と女湯が繫がっているのは、……たぶん。普通逆ですよね?そーゆう意図ですよね?」

「だいたいそれね。女が男のとこ行くあれ、女性の方が権利で守られていることが多いから」

「???」

「でも、いいですねー」

「ま。この際、春藍が来たからちゃんと決めましょうか」

「???あ、あの。2人が何を言っているのか、僕には分からないけど」



喧嘩2人だったが、突然お互い顔を見合わせて笑顔になった。そして、春藍を強引に引っ張って二人で挟んであげるライラと夜弧。


「?」

「実はさっき、その色々と話をして揉めてたの」

「女性としてのお話をして、ライラと言い合ってたんです」

「……うん」

「で、やっぱりこーゆうのは男がビシッと決める方が良いと思うわけ」

「はい。春藍様は率直にどちらが好みなんですか?」



リアルで、両手に華状態で春藍に迫られた質問。


「どうなの?あたしと」

「私!どっちが好みですか!?」

「えっと…………」


春藍はお互いの顔を見てから少し考えて、閃いた!と言った表情で



「どっちも好き!全員好きだよ!」



選べって言われているのに選ばない!同時に欲張りに思える発言。

ライラからしたら、春藍にはこの手の問題は選べないと分かっていた。夜弧もまたそんな感じだとは予想していた節がある。



「ライラは綺麗だし、夜弧の素顔も可愛いから。僕はどっちも好きだよ。仲間じゃん」



最後が余計。

ライラと夜弧は同時に湯を春藍の顔面にぶっかけた。



「ぷはぁっ!」

「春藍らしい答えだけどね!」

「いつか、私を選んでもらいます!」

「??」



3人で温泉に浸かりながら夜空を見上げていた。この風景だけを切り取れば羨ましい……だけではなく、戦争とは無縁の平和な時間であった。

苦労を忘れられる至福な時だった。



しかし、

春藍達が身動きとれない今でもすでに、世界は着実に動いていた。

それを3人が理解してても、もうどうすることはできなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ