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RELIS  作者: 孤独
”酪農平原”モームスト編
25/634

宿舎にて、ライラは自分の目的を話す


ウォンウォンッ



牧場内の番犬の鳴き声がすると、もうこの世界は月が出て夜になった事を示していた。



ウォンウォンッ


寝床を働いて借り、今日の四人はここで過ごす事となった。夕食は昼食と同じ食堂で食べに行き、働いた後の食の旨さに四人共感銘を受けた。

ちょっとだけのサプライズであったが、畑で収穫したじゃがいもや大根。そして、春藍やネセリアは少し退いてしまったが、今日捌いた牛の肉で作った料理が出てきた。


「い、頂きます」

「美味しく、残さず、食べます」


必死な顔をして牛を食べた二人。舌は美味しいと叫んだだろうが、心の中では少しだけ辛い気持ちを隠せずにいた。

だけれど、ちゃんと噛んで食べてしっかりと消化した。これが食ベる事だ。


夕食を食べた後は、借りた部屋にあった1人用のお風呂で四人交代に入っていった。

まるで家族のような感じだった。ネセリアが入り、ライラが入って、春藍、アレクと続いて入った。一人風呂で会話らしいモノがなかったけど、1人でのお風呂も気持ち良いものだと体感した。

アレクがお風呂に入ったと同時にライラとネセリアが布団を持ってきて、室内に4つ並べた。あとはもう寝るだけという状態だった。



「風呂は良い物だな」

「アレクさん。出たんですね」

「おう。春藍はいつものパジャマか、寝る準備が万端だな」

「疲れちゃいましたからねー」



そう言って布団に入り込むネセリア。

まだ灯はついているのだが、目を閉じて眠りに入ろうとした時。


「待って、ネセリア。悪いんだけど私から話したい事があるの。春藍にもアレクにもね」

「!」

「なになに?」



その言葉に三人はライラの方に身体を向けた。

ライラはアレクに座るようジェスチャーし、アレクが座ってからライラは、まず頭を下げて感謝の言葉を言った。


「フォーワールドから、イビリィアへ、そして、このモームストまで。アレクのように強い意思があったり、ネセリアのように無理矢理巻き込んでしまったり」


人の巻き込み方を改めて、反省しているライラであった。だけれど


「元の世界、フォーワールドにはもう帰れないかもしれないのに。私を何度も助けてくれてありがとう」



いつか話さなければいけない事を伝える準備はできた。



「感謝の気持ちになるか分からないけれど、私にはあなた達の力が必要なの。だから、私がこんな危険な旅をしている理由をみんなには聞いて欲しいの。どう説明すれば良いか、難しいところもあるんだけど。できれば、三人の気持ちと私の気持ちが一緒になれたら嬉しい」

「ライラ」



春藍とネセリアはライラの話にちょっと興味を持って神経を集中させ、アレクはタバコを咥えるだけでライラをずーっと見ていた。ライラは一呼吸してから、かなり管理社会の機密事項を語ろうとした。罪に問われることもある情報だ。



「私が旅を続ける理由は、多くの異世界を守り続ける"無限牢"と呼ばれる存在をよく知り、その崩壊を防ぐことなの。まだ私の情報も不足しているけれど、世界がそれぞれ分断されている現象は"無限牢"の力。様々な異世界があるのも、そのおかげ」



製造者及び、現所有者不明。

スタイル:科学

スタイル名:無限牢


詳細:

監獄の形状と推測される科学。ただ、科学なのか魔術なのか。あるいは複合化された代物ともされる。

多くの異世界を、中で管理と隔離している存在。



「”無限牢”が造られたのは"管理人"達が現れるよりも前の事。なぜそれが作られたかは私にはまだ分からない。何百億年も前の話らしいわ」



言える事はこの"無限牢"という物が、数え切れないほどの異世界をそれぞれ分断していて、普通では交じり合う事がないようにされている。世界を共有してはいけないようになっている。



「フォーワールドの一番端まで行った事はある?アレク」

「…………ないな。地図の最北まで興味本位で行った事があるが、管理人達が何かを張っていて先に行った試しはない。向こう側にはまだ大陸が続いていたのをこの目で見たんだがな」

「そ、そうだったんですか?」

「確かに学校とかではあまり触れられてませんでした」

「その先に行っても結局は、"無限牢"の見えない空間で進む事は絶対にありえないでしょーね。見えていた景色はただの背景みたいな物よ。とりあえず、"無限牢"というの何百億年以上も前からある空間管理は今、老朽化していると言えばいいのかしらね?」



まだ"無限牢"についての情報が少ないため、その言葉が適切だとライラは思っている。



「ろ、老朽化……」

「何百億年も稼動していたら老朽化じゃ収まりませんよ」

「そーよねー。って話を戻すけど。今、その"無限牢"にはあるシステムが動かなくなり始めたの。誰でも持ってる。私も持ってる"これ"なんだけどね」



ライラはみんなの近くに作り出してみせた小さな雲。だが、雲が原因ではない。



「大まかなのは"魔力"なんだけど。さらに根本を言えば、”無限牢”にある一部分の異世界では"あらゆる力を失う機能がなくなり始めた"のが問題なの」

「あらゆる力を失う機能がなくなる?」

「それは常識的に、どー思えば良いんだ?どんな事が起こる?」



アレク達の問いにライラは分かりやすく教える。


「私が作った雲、触ればちゃんと感じるし。思いっきり叩けば消えるわ。けど、さっき言った事は絶対に消えずに、永久に残ってしまうの。魔力が失なわない異常な事」



その状態でライラの雲に触れれば決して離れる事はなく、思いっきり叩くと雲という性質は失ったとしても、原動力の魔力が残ってしまうから自分にも大きなダメージがくる。


「アレクのライターだったら、もっと酷いでしょうね」


一度温めたり、冷やしたりした温度はそのままに保たれて永遠にそこは代わる事はない。けれど、熱などは物に伝わってどんどんと広がり始める。失うという機能がなくなっているから、世界全体が100℃や-100℃を記録するような住む事ができないものになる。

熱だけではない。重力や引力もそうだ。途切れる事ができないから落ちた林檎は地面に落ちてもめり込みながら沈んでいく。

"無限牢"が囲っている異世界の安定した生存及び活動が行えるシステムが今、限界に近づいて世界を終わらせようとしている。



「力を失わないから、ドンドンとそれが広がっていき。隣の異世界との空間の壁を破壊して隣の異世界もやがて滅ぶ。いずれ、全世界が"無限牢"と共に朽ちていくわ」



それを止めるために自分は旅に出てる。


「って言っても。三人はピンっと来ないでしょ?」


実際にこの目で見たわけではない。自分の世界も入れて、3つも見た世界を考えると。


「そ、そんな事ってあるの?」

「あまりにも想像を超えた馬鹿な目的の旅だな」

「ア、アレクさん。ライラに言いすぎですよ!」


三人の反応はありえないとか信じられないというよりも、ライラの発言が妄想に思える。

"無限牢"なんて単語やら力のなんちゃらなんて言われても。

夢でしょ?アホでしょ?って言葉しかでない。

妄言と思われてもしゃーないって、顔を出してライラは


「その言った事が、実際に今現在進行形で起こっている世界があるの」

「!それって」

「"アーライア"という世界が今、その状態に陥っているって、半年前くらいかな。桂から聞いて飛び出して来た。行って何か一つでも、私はそれを解決するものを得たい。どれほど先の話か分からないけれど、いずれ必ず。起こる出来事に覚悟するのもそうだし、生き残る事も、伝える事も必要でしょ?」



自分のとんでもない行動理由は自分自身も行った事も見た事もない。ただ。彼女の隣にいた管理人から得た情報によっての行動だと春藍達が知った時。



「管理人の言葉を信じているんだね。全然、違う世界。きっとライラにも僕達にも関係がない、一部分だけの世界での話なのに」



三人共思えたのはライラが管理人、桂に対して強く信用している事だった。

普通、信じられる事ではない。意味が分からない。そんな言葉でも正しいだろうと思ってライラは飛び出した。


「そーゆう事が許せないの!!」

「!」

「"管理人"ってのはムカつくけれど、人間達を保護するためにいる存在なのよ!!私や春藍に関係ない世界だとしても、奴等はその現象には抗えないと分かって放棄してるの!!許せないから私が行動してるの!世界はこんなにもたくさんで広がっているのに!」



感情優先。

春藍とネセリアはライラの荒げた言葉に驚いてしまったが、アレクは冷静に聞き返した。



「"管理人"達が無理だと手を挙げているのにお前は自分1人でなんとかなると思っていたのか?」

「!っ……」

「俺は"管理人"がとてつもなく嫌いだ。ラッシだったからというのもあるが、俺からすればお前の行動は無謀以上の事だろ?無謀のせいで迷惑をかけたのも事実じゃあないのか?」

「だ、だからってそのままにできないのよ!あんたはそれができるの!?」

「ふー」



アレクはライターをつける。布団に引火しないか不安そうな顔で春藍はアレクを見ていた。アレクはホントに、心の声を実現させるように


「お前は馬鹿だな、ライラ」

「うっ………」


だが、


「しかし悪くはない。むしろ、良い話だ。ただ、金をもらうだけの決められた仕事にも飽きていた。さっき言ったが、俺は"管理人"がとてつもなく嫌いだ。あいつ等が諦めた事を、人間の俺達がやるのは格段に気分が良い」

「!」


そんな馬鹿過ぎるお話に、アレクは


「まだ俺もお前も分からない事ばかりだが、その"アーライア"ってところに行けばどんな物か分かるんだろ?なら、俺もまずそこに行く」

「アレク、ありがとう」


ライラの意志と同じとは言えないが、目的はアレクと一つになった。


「春藍とネセリアはどうだ?」

「ど、どうだって言われてもアレクさん。私はその。けど、みんなが行くなら、私も行きます」


ネセリアにはまだ迷いを出しているような声で。


「僕はアレクさんが行くなら、付いて行くまでです。ライラにも僕のできる限りの力で協力もしたい」

「決まりだな。俺達の先の目的は、"アーライア"に向かう事で決定だな」



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