ブライアント・アークスの目的③
「はぁっ……はぁっ……」
「動けるか、ラッシ」
クロネアは賢明にラッシに声を掛ける。全員がボロボロの状態でも、ラッシだけなら逃げられると判断した。
「クロネア。悪い。くそ……守れなかった」
「いい。そんなことはいいんだ。立ってくれ、走ってくれ、そして、生き延びてくれ」
「?そういや、あいつは……」
「"クロツグ"でグルメと共に止めている。だが、あまり長くはない」
ラッシがまともにクロネアの顔を見た時。ドーピングによる疲労感がとても伝わっていた。
クロネアもまた、まともな精神でいられなかった。
それでもメッセージを残すため必死に伝える。
「これからポセイドンは欠番補充のため、管理人の改革を行うはずだ。そこで戦争を起こす可能性が高い。もうすぐそこまで来てしまった。止めることはできない。いいかい?人間と管理のため、絶対にポセイドンのところへ行ってはいけない。向こうはその戦争に合わせて戦力を整えているんだ」
「はぁ、はぁ。何を言ってる?クロネア。お前、まさか」
ラッシには相棒を失うことを理解できなかったし、理解もしたくなかった。
「ポセイドンのやり方を間違いだとは言い切れない。あくまで私達の回答であり、世界中の答えじゃない。止めるべき者は必ずいなきゃいけない。それがラッシであり、人間達だ」
「おい…………冗談よせよ」
プスゥッ
クロネアが持っている"鏃穏"の中には自分の能力を底上げするダーツが予備で2本あった。
戦闘能力よりも、捕獲能力などが高いクロネアにとって本当の戦闘が始まった時に使用する。
しかし、それは猛毒であり使用後には酷い痛みを伴う。それを2本同時に使って瀕死の体を元気にさせている。終われば命は無くなる。
ラッシに伝えているクロネアの切り札であり、ラッシは止めることすらできなかった。
「殿は私が務める。行け!ラッシ!ポセイドンから人間と管理人を護ってくれ!」
「っっ…………」
クロネアの決意。同時にもう相手の方に顔を向けてしまった。その時の顔が、ラッシにはよく見えなく
「クソがああぁぁっ!」
大声を上げて、気絶しているロイをなんとか担ぎながらこの場から逃げ出した。言い争いもできないと悟り、止めることがクロネアの意思ではないと分かっているから。泣きながら走っていた。
必ず、役目は果たすと誓った。
「後は全部、頼んだよ。ラッシ……」
グルメと共にかけていた"クロツグ"がようやく切れ、時間は動く。
バギイイィィッ
グルメの体は心が生きていても死を教えている姿に変えられた。それが一瞬で起こるほど、相手の身体能力は"超人"以上であった。
ギュゥッ
「!?」
「道連れだ」
とても不恰好にクロネアは黒い仮面の博士に捕まえた。後ろから左足を捕らえている光景はまるで奴隷のようだった。
「"時の棺"」
自分もろとも、"クロツグ"をかけることによって、内外から解除すら困難にするクロネアの切り札にして自爆技。使用すれば自分も相手も未来に行っている状況になる。
ピタッ
お互い、体と意志が動き出すのは当分先。
全員がブライアント・アークスから逃げるまでには十分な時間であった。




