ブライアント・アークスの目的①
戦争に必要なのは犠牲だ。分かっているな?
「ふん、性に合わんが。ダネッサ達の取りこぼしを逃すわけにもいかんな」
黒い龍の仮面を付ける博士が地上からライラの雲を撃ち落していた。炎の龍は雲を食い破っても止まらずに旋回し、さらにライラ達を追い詰めようとしていた。
黒い仮面の博士は一度ホームに戻ったのだが、ポセイドンからの指示を受けて再びここに戻ってきた。それがヒタスとの戦闘を避けたという幸運もあった。
「食え」
スタイル:科学
スタイル名:紅蓮燃-℃
詳細:
バズーカ型の科学。強力な炎を吐き出す科学。ポセイドンが使用した科学と似通っているが、現在使用しているのは彼が造り出した物である。
炎の龍は落下するライラ達を飲み込みながら地面に突撃した。そして、龍は消滅しながら周囲に炎を撒き散らした。
「!む」
直撃したはずだったが、空模様が突如変化し始める。ライラにまだ意識が残っている。生み出された炎を一気に鎮火しようと、強烈な豪雨を呼び寄せる。
彼には地面に落ちたライラの位置は掴めないし、ライラからも彼の位置を掴むことは難しい。
「お前は俺の炎と遊んでいるといい」
彼がライラを狙ったのは彼女を足止めさせるためだ。
残された者達の中で、山中での大移動が可能なのはライラの"ピサロ"のみ。彼女の動きを封じれば山の中は監獄と化す。
「ふぅー」
土砂降りが来る前に黒い仮面の博士はタバコで一服。
本命は
「取り逃がしたのは、クロネア、ラッシ、新橋、グルメ……以上だな」
管理人。
"黒リリスの一団"とは違い、復讐という意味ではなく、この先で起こる戦争の引鉄としての犠牲が欲しかったのだった。
特に最近任命された、010~020の管理人達。こいつ等に狙いを絞っていた。
「行くか」
仕組まれた罠。最終段階が始まる。
「な、何が起こった!?」
「デカイの炎の龍が雲を飲んだぞ!」
索敵要員を消されたことで下山途中のクロネア達には、突然出現した敵の正体を掴むことはできなかった。
敵がいるという情報だけは確かでも、遠方から放たれている炎の龍を見ただけでいつ狙われてもおかしくないという警戒は生まれた。
「雲の変化…………ライラに何かが?」
「!っ」
ロイは今すぐ、ライラ達が炎の龍に飲まれたらしき場所に駆けつけようとしたい体を、心で抑えつけた。
管理人を連れていけば夜弧に何か問題がある。
「急いで降りるぜ!今の状況じゃロクに戦えねぇ!」
咄嗟の言葉。
事実がとても的確で、グルメもクロネアも頷いて急いだ。
「ラッシと合流しましょう!彼に魔力が残っていれば迎撃できる!」
「そうだな!……って、"超人"2人!頼みがある!」
「なんだよ?」
「ドーナッツをくれるんですか!?」
「違うわ!私とクロネアは足が遅い!君達が担いだ方が速いだろ!」
急いで逃げるため、ロイがクロネアを背負い。新橋がグルメを引き摺りながら走って山を駆け降りる。
「痛い痛い!どんな担ぎ方!?私が地面にぶつかっている!」
「ドーナッツ、くれないからです!」
頬を膨らましながら、新橋は仕方なくグルメを引き摺って加速。これがグルメの足よりも速い。同時に大ダメージを負っているグルメ。
「街まであと10分もかからねぇ!」
「い、急げ!」
あと少しで街へと辿り着くというところで阻み。かつ、この中でもっとも厄介な存在をピンポイントで撃ち抜く。
ドガアアアァァァァッ
「あれ?」
新橋の上半身の大半が燃焼され消滅。わずかに繫がる首と頭、胴から下が地面に転がり燃えながら落ちた。
「うおぉぉっ」
新橋を失ったグルメは逆に山から転がり落ちるように投げ出されてしまった。
左からの砲撃。"超人"2人のスピードに対抗できる脚力。さらにはバズーカを持ち、しっかりと敵を撃ち抜いている。
「殺害困難な新橋をまず消せたのは大きいな」
ロイ達3人の前に姿を見せた黒い龍の仮面の博士。




