急襲
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
「なんだ?火山の勢いが弱まったのか?」
街を守るために残っていたラッシ。
「一旦退くぞ。テメェ等!」
「言われなくても分かるさ。ここから戦闘なんてできないよ」
「デュフフフフ、九死に一生」
ヒタスが死亡に至るまで三つの勢力は考えなどしなくても、戦闘を打ち切った。
「火砕流が止まった。じゃあ、ヒタスは死んじゃったんだね」
「ホント……。助かりました、同時にお悔やみ申し上げます」
飲まれた火砕流から這い出たグルメと新橋。管理人側がもっとも被害をこうむった。
「ドーナッツを奢って欲しいです!」
「暢気にお願いする状況じゃない!」
ブライアント・アークスの死者は結果的に0。
ヒタスの暴走で1人くらいは道連れできれば良かったと、グルメは考えていたが。痛みだけを浴びた最悪の結果。生きている管理人を探そうとした。
「お!生きてる奴、発見!」
「グルメさん、新橋さん。無事でしたか」
「クロネア!……と、確かロイという人だったな」
ロイに背負われるクロネアと合流を果たしたグルメ達。
「他の管理人は皆、ブライアント・アークスにやられています。希望はないと思います」
「ば、馬鹿な!あれだけの戦力が全員死んだというのか!」
「間違いないでしょう。我々だけが生存者です」
クロネアは無念そうに現状をグルメに報告していた。しかし、その戦力についても伝え、決して無駄ではなかったことを示した。
「ともかく、下山しようぜ。街も、春藍達も心配だしな」
「ドーナッツ奢って!」
「それはもういいです!……分かりました。とにかくこの事は上に報告し、緊急以上の対処を要請します」
クロネア達は真っ直ぐと山を降りて行く。ロイは3人に気付かれないよう、見張りながら降りていた。
ラッシを含めておそらく4人の管理人に夜弧を会わせてはいけない。クロネアを拾う前にライラから伝言を授かっており、彼等の見張りを行っている。
「あいつ等、降りているみたいね。しばらくは大丈夫なはずよ」
山の上からロイ達が下山していく様子を確認したライラ。近くには夜弧と彼女を治療する春藍がおり、周囲に気を配らずにホッとした表情を作る夜弧。
「本当なんですね?」
「嘘は言わないわ。でも、管理人側が捜索隊とか作ったら面倒だから、ある程度治療が終わったら下山するわよ」
「ええっ!?なんで私がそんな危ないところに」
「ここでゆっくりできると思ってるわけ!?だいたい、私達まで捜すためとか名目付けられたらあんたを隠せる余裕はないから!しばらく、あんたを隠しながらこの世界で過ごすから!」
夜弧を逃がさず、夜弧を管理人にバラさずにやるにはこの世界で一時的住む事だとライラは考えていた。
「いたっ」
「ご、ごめん!もう少しだけ我慢してて。ちゃんとした左足を造り出すから」
春藍の"創意工夫"は失った夜弧の左足を完全に蘇らせようとしていた。
自分が付けている義足は今でも定期的なメンテナンスが必要であり、春藍は夜弧に義足なんて付けられなかった。よって、一から細胞の一つ一つを作り出す必要がある。
「しっかり直すのに2ヶ月以上は時間をとるよ」
「そ、そんなに……」
「でも、ちゃんとした左足が生えるのに2ヶ月以上だから。きっと、その方がいい。僕は両足が義足だから少し不便も分かる。どこか行くかもしれないなら、不安がない方がいいでしょ?」
春藍の言葉にライラは自分に反省するような顔を出し、夜弧もまた春藍の言葉がよく伝わったのか。重そうに頷いた。
「わ、分かりました」
「良かった。分かってくれてありがとう」
夜弧の理解に答えよう春藍の腕にまた熱が入る。
ヒタス戦で付けていた義足がなくなれば機動力が激減する。まず、逃げられるということはない。春藍に夜弧の監視もさせられる。
治療まで2ヶ月と診断する期間、夜弧を隠し通せるかはライラとロイの仕事であった。
「じゃあ、そろそろ街に降りようかしら」
「も、もう!?」
「夜弧を隠し通せる場所も確保しないといけないし、春藍が満足に治療できるところにした方が良いでしょ?フォーワールドは無理よ、異世界行くために管理人が必要なんだから。それに絶対バレるし」
宿屋がとれればいいが、管理人達が自分達に会いに来る可能性を考えれば別々の部屋。
え?春藍と夜弧を同じ部屋で、私とロイが同じ部屋……ムカつく。
私と春藍と夜弧で一部屋。ロイは離れでいいわね。それだったらね。夜弧が春藍に何をしでかすか分からないしね。
「一緒に降りるわよ。いちお、雲に乗せてあげるから!」
全員が生き残った街の方へ向かっていく、これで一段落したと誰もが思った時だった。
まずはライラ達が乗っている雲から彼の襲撃が始まった。
ガァァッ
独特な機械音の後。
ドガアアァァァッ
火山とは違っても、熱量を発する強い爆発音が響いた。
空に浮かぶ雲にめがけて放たれた炎の龍はライラの雲を食い破ったのだった。
契れとんだ雲から落下する3人。それに気付いたクロネア達には彼等を助ける術はなかった。




