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RELIS  作者: 孤独
ヒタス編
245/634

支配の家系図

伝統だ、秘伝だ、口伝だ、言い伝えだ。

ルールだ、法律だ、常識だ、教育だ。



「世界とは生き物だ。支配の中だけでしかもう生き残れないヒタス様だ」



最初はきっと歯車だったのかもしれない。

ある時は平和を暗示、ある時は戦争を暗示。ある時は管理を暗示していた。

ヒタスの体は死亡したが、その意志を伝染させて自分の偽物を造り出して今なお、生き延びる。



おかしな話だ。凡人には縁がない。なにせ、俺の意志を継いでいる者を造り出すなんて……意味あるのか?



可哀想だと思う。意志を継ぐとは自分の意志ではなく、ヒタスの意志。

一族の仕来りを病魔のように続けて、続けて、続けて作り出したのが、支配だ。自由とは真逆の…………。



「凡人が何ほざいてんだ。なぁ、おい」



…………………………………………………



「支配を悪と決めたのはお前等だ。良いか、お前の馬鹿な発言。馬鹿な行動。しかし、そんなお前が存在している時点で遺伝子がある。お前という奴を作り出した存在が必ずいる。ゴミ同然のお前にだ。お前は支配されちゃいねぇが、自由とも違う。ただの馬鹿で凡人。流れに遅れている存在」



…………………………………………………



「支配された方がマシだと思える日が必ず来る。幸福という支配も必ず存在し、わずかな自由を与える支配もある。気が狂っているのはテメェの方なんだぜ」



支配とは悪を漂わせる言葉だ。しかし、多くのマスメディアや仮想、虚言が造り上げた形。

管理され続けた人間が本格的に支配に立ち向かうのはまだ先のことだ。

今は管理人の中で、支配を司っていたヒタスを倒す話。




ガギイイィィッ



「あーやばいね。そして、不思議だ」


ケチェリと大塚はヒタスに立ち向かったが、あえなく倒されてしまった。

残ったのはグルメと新橋。仲間であるはずのヒタスの化け物っぷりに命の懸かった王手を決められた。ギリギリでまだ生きていられるのは新橋の"隅土"のおかげである。

女の子と手を繋ぐと、男はちょっとだけドキドキする。(ただし可愛いに限る)

しかし、なぜ。なんでだろうか。別のドキドキがしている。男性ホルモンじゃなくて、冷や汗タップリ。


火砕流に飲み込まれながらも、新橋と共に背を地面につけて弾き飛ばす。



「"隅土"はどんな攻撃も防ぎます。私と手を繋げばその者にも"隅土"が連動します」

「…………けど、私達はこの火砕流から出られるの?」

「知りませんけど、立派な時間稼ぎですよ」


ダメじゃん!



完全な無事を確保したが、二人も戦闘不能と言えよう。ヒタスの前には手も足も出ない。同時に2人は生きていながら、火砕流によって視界を防がれたと言って良いだろう。それでも念には念を入れて霧が生まれていく。ヒタスと向き合った次の相手は2人の女性。



「ロイの治療からあたし達のケアまで頼むわよ。春藍」

「……こいつはやはり、死んでいるそうね。なら大丈夫かも」



ライラと夜弧。

なんやかんやで揉めたりもしたが、こうして2人で戦うのはどこか慣れている光景が分かる。

ロイ、ダネッサ、大塚、ケチェリなどの強者を次々と倒したこの怪物であるが、今までは相性の良さがあった。触れれば火傷必死であり、単純な打撃ならば治療(正確には違うが)可能。

ヒタスが敗れる要素はまったくなかった。

ただ違うのは夜弧だけが、精神を操れる能力を持っていたこと。

知能はなく、機械に近いヒタスの思考ではそこまで考えることができない。



「あたしがひきつける。その間にしっかりと接近して!」

「近づくって、あなたの攻撃は雲を使ったものでしょ!」

「体を張るわよ!」


夜弧が無くした左足は仮の足だった。あってもいつも通りの動きはできない。ライラが稼ぐ時間はかなりのものが必要だった。

霧はより濃くなり、一滴一滴が鏡のように綺麗な反射を生み出していく。

光の屈折によってライラの体は割れるようにいくつもの分身を生み出した。



「幻影雲!」



あくまで視覚だけに残る分身。嗅覚や聴覚に富んだ者ならライラと夜弧の位置は割れてしまう。しかし、今のヒタスにはそれら活かせる知能がない。映る敵を攻撃しては霧で作られたライラが裂けるだけだった。


「冷えなさい!」


溶岩であるヒタスの体を冷やすために強烈な寒気も呼び込み、さらに夜弧を援護する。ヒタスの動きが若干鈍り、周囲の警戒が減った。



「もう大丈夫!」



その最中に夜弧はヒタスの頭上に乗り、両手でヒタスの頭に"トレパネーション"を打ち込んだ。

"支配"という形で生き続けたヒタスの終わりが来た。



ズブズブズブ



「ウウゥゥ」


強く込められた願いが霞んでいく。続けられた伝統、記憶、ルール。それらが徐々に薄れることはヒタスの死。抗うように悲鳴を上げた。



「アアアアアアアアアアア」

「悲鳴を出しても無駄!」



遙か昔から続くことを変わらずに受け継ぐ事も良いことだろう。問題なのは、良いと悪いが判断できる時代であるかどうか。



プツゥンッ



「一時的に記憶を消したわ。けど、もうあなたは戻れない。死んでいるんだから」



火山を支配したヒタスの力は完全に消滅し、ただの瓦礫のような存在に変わり果ててしまった。多くの犠牲を出したものの、無事にこの世界は守られたのだった。


「思想だけで魂を継承しないで!」


悪しき支配は彼方へと消えていった。

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