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RELIS  作者: 孤独
ヒタス編
243/634

時間稼ぎの戦士達


「あー…………」


なんで雲が……いや、灰が舞っている空の日に私が死ぬのだろうか。


「……よし、ここはクロネア!任せた!」

「!は、はい!」

「私は新橋を捜しに行く!(逃げたい)戦力は1人でも増やさないと時間は稼げない!(逃げたい)」


臆病さとまともな策略を兼ね備えている。グルメはクロネアの返事の前に全力で背走する。新橋もきっと、火砕流に巻き込まれて出られないだろうと推察。最悪、死亡しているかもしれない。捜索しても無駄だろう。そんな気持ちが多いから、早く逃げたい。



ビキイィッ



「くっ……弱りましたね」



そろそろクロネアの魔力が尽き始める。火砕流を防ぐため、この戦地に来るまでクロツグを使い続けている。毒のダーツである"鏃穏"で動きを止められそうもない相手でもある。

とすれば単純な身体能力による時間稼ぎ。超人であるヒタス相手に、それはないと言いたいが。そうしなきゃいけない。



「仲間に殺されますか」



ピッ



クロツグが解けた瞬間、ヒタスはクロネアに襲い掛かった。一撃目、二撃目は経験と間合いの差から避け切ることができたが、それ以降はもうなかった。

大地で練られた腕がクロネアを飲み込む打撃を繰り出した。

ヒタスは機械と同じように支配を増やそうとしていた。さらに大きな力を要求する。でなければ押さえ切れそうにない獣が二人、体内にいるからだ。



バギイイィィッ



「海パン野郎!ここは一時共闘だ!」

「こいつを片付けたら次はテメェだからな!」



ロイとダネッサ。一時はヒタスの支配にやられそうになるが、精神力でヒタスの支配を振り払う。体の感覚が分からなくても、ロイには肉体が、ダネッサには槍が。見えずとも信じられることがあるからだ。火山灰から脱出すればスッキリとする。

時間稼ぎなどをする話は当然、2人には聞こえていない。ただ力任せ、野蛮にヒタスに挑んだのだ。この2人ならばひとまず、ヒタスにダメージを与えることができる。それだけの戦闘力がある。

反面、決定打は生まれない。今のヒタスとは相性が悪い。破壊してもほとんど再生されてしまう。ヒタスの核らしい部分も見当たらない。



バギイイィッ



いくら蹴散らしてもキリがない。


「ち…………」


ロイはまだ体力的に余裕があったが、ダネッサは先ほどから連戦続き。ライラの雨で体が回復しても無理がたたっていたようだ。すぐに息切れし、立ち止まってしまった。



「ふぅー……ちきしょー…………雨もいつの間にか止んじまっている」



動きが鈍くなったところでヒタスはダネッサに怨念を込めて殴り飛ばしてKOにする。



「!ちっ、しょうがねぇ海パンだな。けどな、サシの方がやりやすいぜ!」



ロイがたった一人でヒタスと戦う。耐久力の差はあるが、ロイの方がやはり素早い。魔獣姿のヒタスよりも早く、拳もしっかりと目で追える。時間稼ぎにおける最大の功労者である。また、ダネッサとクロネアにも目を向ける視野の広さ。戦場においてロイの戦闘力は総合的に優れている。ヒタスの注意を自分にだけ惹きつけつつ、2人から遠ざけている。



バヂイィッ



「あち、…………」



ロイの拳は焼け始めた。ヒタスの体がかなり熱くできているからだ。相性の悪さが響いている。上空を見るも、ライラがいない。ライラがどこにいったかはロイには分からない。やられたとは思わない。

状況の情報不足だったが、熱を冷ますのは水だろうという単純な思考からライラの帰還を待つために時間稼ぎを選んだ。

信頼がなければこの結論にはいたらない。



「来るか?」



戦っている間にヒタスの体内でまた噴火の準備を始めている。熱量の上がり方、呼吸と同じように吐き出す火山灰の量。一度巻き込まれた経験から、避けるか逃げ切るかが必要である。

次の打撃で確実にロイを巻き込む大爆発を発生させるだろう。ヒタスのその気がなくても、膨れた風船みたいな形成になっていればロイでも分かる。ロイは距離を離していたクロネアの方へと足を運ぶ。

大爆発の範囲は全方位であり、動けなくなったクロネアを助けるには抱えた方が良い。ダネッサは知らん。



ゴポポポポポ



溶岩と火山灰の噴出が始まり、火砕流がヒタスの体から現れた。ヒタスの攻撃は非常に単調な組み立てだ。インビジブルを知るロイはヒタスの思考に心がないことを見抜けた。生命力は立派だが、



「お前にできる事は少ねぇな」



とはいえ、火砕流を噴出したら少しの間は近づけない。クロネアを紫電一閃で掻っ攫い、火砕流が届かない高所の安全地帯まで逃げ切ることに専念する。

火砕流の発生はヒタス自身にも負担が掛かっている。胃に詰めたものを吐き出すような所為。空腹と似た不幸を味わった。そして、吐き出した不幸を喰い溜めようとヒタスの喉は動いた。火砕流を吐き出し、それを戻す事を繰り返されたらキリがない。


ロイはヒタスから噴出する火砕流が止まった瞬間、自然に抗ってまで彼に近づいた。



「俺はお前側だからよ」



火砕流を再び起こすまでにヒタスの命を奪おうとしていた。



「拳でやらねぇと気がすまねぇ」



化け物となっているヒタスに対し、拳法で立ち向かうロイ。一撃でヒタスの体の一部を破壊する。一方で拳はヒタスに直撃するたびに熱くなっていった。

ロイがヒタスと激戦をしているころ、




ガゴオォォッ



「デュフフフフ。生きているか~。大塚ぁぁぁ」

「く……お前こそな…………このデブ…………」

「お互いボロボロだ。おそらく、ダネッサもやられた」



火山灰に押し詰められた大塚を救助したケチェリがいた。お互い、ダネッサと同じくらいのダメージを背負っていた。


「もう少し頑張るぉ」

「お、お前は元気そうだな」

「薬を飲んだからな。ま、気休めでしかない。お前も飲め」

「とっくに飲んでる」



大塚とケチェリはヒタスがいる方へ歩き出す。今は同じ敵だからだ。そして、グルメも彼女を見つけ出してしまった。というか、見つかった。


「あー!グルメさーーん!!」

「!ぶ、無事だったのか!」

「どーなっつが……ドーナッツが……………全部食べてなくなっちゃったんです!どーするんですか!」


唯一、無傷でいた新橋。ドーナッツがないだけで泣き叫んでいた。

っていうか、こいつ。強いのに何してんだ。


「……ふーぅ…………なんで見つかるのかな?」

「?はい?」

「新橋さん。ヒタスを殺すため、引き返しますよ」


グルメは彼女を連れて、腹をくくった。本音は逃げたいのだが、管理人とはいえ女性を置いていくほど男はやっていないからだ。


4人がヒタスの眼前に現れた時、体中を焼かれたロイが近くで横たわっていた……………。




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