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RELIS  作者: 孤独
ヒタス編
236/634

"ライブラリー・マインズ"と"隅土"

「デュフフフフ。負傷した…………」



ケチェリはヒタスが強いということは理解した。それと同時に自分とヒタスとでは相性が悪いことも察知した。おそらく、打撃戦ではよほどの実力者でなければヒタスに勝ち目はない。


そこまで思考があり、離れたところに移動していた奴に眼がいった。そして、眼があってしまった者は苦い顔と声を出してしまった。



「げぇっ」


やべぇぇぇ。眼をつけられた。あのデブ、俺を見やがった。狙ってるじゃねぇか、あの眼。ヒタス、助けてくれ。頼む。そのまま1対2で勝ってくれぇぇ!


「デュホオオォォ。相手を変更だ!」


転がるようにグルメに走っていくケチェリ。グルメの願いはまったく叶わなかった。ヒタスだって、2人より1人に集中した方が楽であり、自分の間合いも考慮すればグルメを守りながら戦うなんてできない。そもそも守る気ねぇし。


「私と戦うつもりか、このデブ」



なんて、挑発をしてみる。しかし、そんな挑発があるなしは関係なかった。

太い右腕が自分の顔面にやってきた時。


「ちょっとタンマ」


表面上は冷静さをアピールしているわけだが、中ではとんでもない焦りとパニックを出している。戦闘においては…………。殴られるという痛みを味わうのは久しぶりである。



バギイイイイィィィッッ



一撃で修行時代を思い出した。あの苦しみを思い出す。そして、苦しい顔を出していなかったことも思い出した…………。

完璧に決まった右ストレートに吹っ飛んだグルメ。



「デュフフフ、完璧」



体中が痛いと叫んだグルメであったが、ある時を境に不自然なほど地面に張り付いた。



「?」


この高くて木が一切ない岩だらけの山から突き落とすくらいの勢いで殴った。それなのに思った以上に吹っ飛ばない。吹っ飛んだというよりは倒れたという感じ。

そして、殴ってからわずか数秒で何事もなく立ち上がり始めるグルメ。


「!?な、なんだとぉ~!?」

「ふっ……その程度の拳では人は殺せない。無駄な肉ばかりだな」

「うぬぬぬ。立ち上がるとはやる。しかし、次は全力中の全力!」


とケチェリも言っているが、さっきの一撃はとうに全力である。再び、右ストレートがグルメを襲い、またその場に倒れこんで……。何事もなかったのように立ち上がる。傷が生まれず、表情もまたまったく変わらない。


「しまいか?」


カッコイイ言葉を言いながら、ケチェリを威圧する。


「ぬぬぬ。まだまだ!」


それが怒りに触れたのか、ケチェリは一撃ではなく。立ち上がらせないほどの連打をグルメに浴びせる。自分の息が途切れるまで、彼を痛めつける。しかし、連打を喰らいながらも



「だから、こんな拳じゃ私は殺せない」

「!」



グルメは平然としていて、そして、ケチェリの攻撃をモロに浴びていた。


「ぐっ……………」


ケチェリにはグルメがとてつもない強敵に思えた。これほど殴っても倒れない相手がいるなんて初めてだった。そして、今分かったことだが、グルメの魔力の総量がとてつもないということ。これだけの防御力が攻撃に転じてもしたら、自分がやられるという予感が伝わった。

しかし、グルメの心の中はとんでもなく違っていた。



「ふふふふ、軽いパンチばかりだな」



痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い、死ぬ~~~~~~~!!そんなに殴るんじゃねぇぇ、俺が死ぬ~~~~!ちょっとタンマ、止めよう!マジで止めて!俺、戦えないから!ホント戦えないから弱い者虐めは止めよう!教育に良くない!

ホント止めて!俺は能力で痛みを外見に出していないだけで、中身はすげぇボロボロだから!痛すぎて馬鹿な事しか考えられないから!




グルメーダ・ロンツェ

スタイル:魔術

スタイル名:ライブラリー・マインズ

詳細:

衰え知らずの能力であり、究極のポーカーフェイス能力でもある。歳は一定期間を境にとらなくなった。

全力疾走は速くないが、体力に限界がないためずーっと最高速で走れる。ずーっと業務が行えるなど、社蓄の塊。覚えた知識は鈍ることなく使用できる。

衰えが外見と肉体に現れないが、その分魔力と心の中が酷く傷付き消耗する。心が痛いと叫んでいても口にすることができず、平然とした態度をとってしまう。

人間として、魔力の総量は圧倒的であるが、攻撃ができる能力ではない。また、防御面に向いているわけでもない。(端から見ると、防御が凄そうと思えるがグルメは凄く苦しむ)




「私に苦戦するようではあなた死にますよ」

「!?」

「一対一でヒタスに勝てる者はいません。彼の者が敗れたら、次はあなたです。そして、私もまだ本気を出していない。出すまでもなく、時間を稼いでいた方が良いのでこうしてますがね」



痛みを味わいながら、その自慢のハッタリを見せ付ける。殴られながら言葉はまったく止まらない。



「数で言えば我々が優勢です。私はあなた方を殺すより、捕縛することを考えております。ヒタスやその他の管理人がここにやってくればあなた方は全滅です」



これ、自分がケチェリを殴っていたらカッコイイんだろうけど。おもっくそ、殴られてます。グルメがやられそうなんだけど……。



「だから、無駄な抵抗はよしなさい。今、仲間の連絡が来て二人ほど脱落したそうですよ」

「!?」

「2人で9人を相手にするなんて無謀なこと。そして、その9人がこちらにも近づいて来ている」

「ぐっ!」



そーだったら良いよな。全然、あり得ないんだよな。全然、来る気配がない。しかし、これしかいいハッタリがない。奴等にはこの戦場の情報を入手する術がない。足止めに回した連中がどーなっているのか分かっていない。そこをついて、このデブと海パンを追い払う!それしか俺が助かる道はない!

魔力が切れたらあの世に逝く。ていうか、逝かせてくれーー!苦しいいいいぃぃぃっ…………!ヒタス、早く海パン野郎を倒せーーー!





グルメがひたすらサンドバックになっている間、ヒタスとダネッサは死闘を繰り広げる。知と暴が入り乱れている間、2人からまだ近い戦場では食が始まっていた。




パクッパクッ…………



「あのー。あたし、静かにして欲しいと言いましたよね?」


地面に背をつける仰向け体勢でドーナッツを頬張っている新橋。


「休んでるのに勘弁してください」

「お前やる気あんのかぁぁ!?」


やる気がまったく感じられない新橋に次々と攻撃を繰り出す大塚。一切、攻撃する気を見せない新橋に嫌気がさしていた。だが、やる気が感じられないスタイルからグルメ以上の防御を見せる。

それはさておき、大塚の科学。"ALL・TYPE・NOBODY"が再び起動した。



大塚

スタイル:科学

スタイル名:ALL・TYPE・NOBODY(愛すら食い尽くす)

詳細:

引力型の科学。実体はなく、破壊することも大塚以外には使用不可能という科学。(実質、魔術に近い科学)

全てを大塚に引き寄せ、くっつける。大塚とくっついた物には引力を発生させる力が生まれ、科学扱いになる。




ポセイドンによって人体実験を受け、肉体の強化を行ったダネッサやケチェリとは異なり、全身が"科学"そのものに改造された。リアのような銃火器が仕込まれているタイプの科学ではなく、春藍の"創意工夫"や粕珠の"グローミ・シソーラス"を内臓しているといった感じだ。ポセイドンは大塚を、"科学"によって魔術を再現した者だと表現している。



大塚は転がっている石ころをいくつか拾い、いろんな方向へ投げ飛ばした。石はある地点で止まった。



「WHIRLING CURRENT」



大塚によって石には引力が付加された。石は掃除機のような音を立て、周囲の物体を引き寄せ始める。別の石が引力を付加した石にぶつかれば、その石もまた引力が付加される。感染するように周囲の物体を引き寄せ始める。



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



感染の広がりはパワーの増大でもある。小さな石で巨大な岩をも引き寄せ、くっつけてしまう。並みの人間が周囲にいればきっと石に引き寄せられ、最終的には押し潰されるだろう。



グモグモ…………



「おいしー。このドーナッツ。新作だ~」

「!こ、これでドーナッツ、6つ目だと…………」



並の能力であれば大塚の能力によって倒されるだろう。だが、新橋もなかなかやる。ニートスタイルを貫くその仰向けで、寝転がり姿勢のまま。ドーナッツを食べながら、大塚の放った引力にケロッとしている。

蒲生が認めた"超人"の1人は態度と姿勢が変わっているが、強かった。



新橋

スタイル:超人

スタイル名:隅土

詳細:

背中を壁や大地につけているだけでどんな攻撃も防ぐ条件型の超人。新橋の手に触れていると連動し、対象物や対象者にも同じ効果がでる。ただし、対象者は新橋と同じ面で背中をつけていないと無敵状態にはならない。新橋自身もならない。



グルメよりも堅実とした防御重視の能力。条件さえ整えば蒲生の一撃すら防ぐ性能は管理人内でも一目置かれるだろう。

まだ本人はそこまで戦う気を見せていない。大塚さえ、足止めすればグルメとヒタスがなんとかするだろうと思いながらドーナッツを捕食していた。(つーか、それはどこに隠しているんだ?)



「こ、こ、このふざけた女め………なんで俺の引力にやられねぇ!?」

「ふ~ん。うみゃ~い」



大塚は新橋を見逃すという作戦もあるが、彼女の態度に怒りを感じて始末したかった。絶えず、自分の引力を増大させて新橋を襲っている。そして、ある時。



「あ」



新橋はドーナッツを落としてしまった。それもたった少しの量であった。本来なら汚いから捨てようという判断が生まれるはずなのだが、彼女は違った。食い意地が違った。ドーナッツが大好きだからだ。落ちたドーナッツは大塚の引力に飲み込まれていく。一瞬で自分の手が届く範囲から出てしまった。

新橋の顔は絶望していた。餌をとられた鳩みたいな目をし、口がぽっかりと開いた



「…………どー………なっつ…………」



元気が…………ない。この戦場では彼女の活力源であるドーナッツ。それを奪った大塚。



「どーーーなっつーーーーー!!」



子供の名を叫ぶ母親と同じくらいの声量を出しながら、新橋は大塚に立ち向かった。……否、違う。立ってなどいなかった!

ゴロゴロゴロゴロ音を立て、高速のローリングを行って大塚に急接近。しかし、徒歩より少し速い程度!


「な、な、なんの真似だ!?」


大塚はその奇妙な接近に驚きを出していた。新橋の破天荒と思える行動が大塚の油断を生んだ。



ドンッ



ローリング状態から素早く立ち上がり、タックルまで敢行。大塚を地面に倒すまで風のように速かった。食べ物の恨みは恐ろしい。



「ドーナッツ!!返しなさい!!」



彼氏を殺されたかのような声を上げて、大塚にサブミッションを実行。"隅土"の絶対的防御から、この素早いタックル&サブミッションを使う新橋は完全にタイマンという戦場かつ、対人間に長けていた。骨と筋肉が極められる音、感覚。甘い女性の匂いを発しながらも、蛇のように大塚を巻き込んでいた。



「極!!」



掛け声と共に大塚の背骨を極めて、折ってみせる新橋。



「ぐぉっ……………」



苦しいという声すら上げられない激痛が大塚を襲い、立つ事すらできなかった。それが原因か、先ほど投げて使用していた石ころへの引力も消え去った。大塚の戦闘不能を確認した新橋は立ち上がって再びドーナッツを取り出した。勝利後のおやつは最高であった。



「ふーっ………グルメとヒタスを追わなきゃいけないかな?」



あくまで大塚の戦闘不能は新橋の見立て。彼女は頬張っているドーナッツ以上の甘さを持っていた。あろうことか、大塚の意識がまだある段階だというのにスルーしたのだ。



「ま、待て……………」

「んー?ドーナッツはあげないよ」



この2人の対決は寝転んでからだった。



「潰れてから死ね」



大塚はわずかな意識から反撃を繰り出した。




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