夜弧をとっ捕まえるお話
ピルルルルルル
「!」
未だにメイドカフェにいるわけだが、大塚に伝言が一通届いた。ボスであるポセイドンからの指令。ハーネットの資料を持ち逃げした夜弧の居場所を掴んだという情報。
「行くぞ、キモイデブ」
「デュフフフフフフ」
「………………」
「新入りさんも来い。狩りの時間だ」
大塚、ケチェリ、新入りの三名は夜弧がいる異世界へ足を運ぶ事になる。3人いるわけだが、まだ戦力的には不安がある。ポセイドンはもっとも信頼を置く者も、すぐに飛ばすことに決めた。
キイイィィッ
「よー。遅かったな。早くこれ外してくれよ」
「まったく、なぜ捕まっている」
ロイ達に捕らえられたダネッサ。ポセイドンは彼の救出に黒い龍の仮面の博士に指令を出した。ライラ達が不在とあってはダネッサ自身を抑える力はあっても、外部から来る敵を抑える戦力はなかった。
彼からダネッサの武器である櫓厨を渡される。
「…………ポセイドンがお前を必要としている。行って暴れてこい」
「分かってる。次はヘマしねぇ」
ダネッサも大塚達と合流しようと、ポセイドンから頂いた科学で別の異世界へ飛んで行ってしまった。
ブライアント・ワークスの戦闘員は4名。
「"無限牢"に不審な振動をキャッチ」
「何者かが空間を飛び越えていると思われます!」
いつまでも不正な移動を見逃すほど、無能な管理人ではない。ダネッサや大塚達が何回も移動を繰り返している情報を掴み、彼等を追ってその居所を掴んだ。
すぐさま、グルメと龍、クロネアに連絡が入った。ブライアント・ワークスの居場所、さらにはハーネットの資料の在り処も分かったような物であった。
「龍管理人はここにいてください」
「!な、なんだと!?」
「私達、11人でなんとかしましょう。対策だってされているんですから」
と、カッコイイ事を言う弟子であるが…………
「では、急いでヒタスや怨北王子さん達に連絡を入れましょう。"フレンズ・リンク"の起動をお願いします」
師匠ーーー。ホントは師匠が一番心強いんです!でも、11人でなんとかするって言った私のクソ馬鹿!クソなジレンマのせいで、師匠を連れて来れないなんて最悪だーーー!どうすんの!?ヒタスを倒した奴と私、戦うの!?無理無理!死ぬ死ぬ死ぬ!やっぱり管理人なんかやりたくない!
「行きましょうか、クロネアさん」
ここで『クロネアだけ、行って来いよ』って叫びてぇーー。俺も家の中でゆっくりしたい。自宅に引き篭もりたい!死にたくない。戦いたくない。殺されるの怖ぇぇ。
「それでは龍管理人。失礼します。ポセイドン様には気をつけてください」
グルメ。クロネアと共に、ブライアント・ワークスを追う。龍の弟子であり、外見や装いはとても知略家を思わせるのだが、中身はとんでもない逃げ腰とハッタリの天才。類稀なポーカーフェイスの持ち主。
「ああ。分かったぜ。……今度はぶっ潰す」
クロネアの連絡からヒタスは真っ先にその異世界へと向かった。敗北が相当キていたようだ。
以前の管理人達とは違って、非戦闘員であろうと全員が参戦。真面目さだけはかなりのものだろう。
「デュフフフフフ。これは激しい争奪戦の予感!」
「なに捕まってんだよ、ダネッサ」
「あいつに言われるのはいいが、ガキに言われるとムカつくな」
夜弧が安静している異世界にブライアント・ワークス、管理人が同時に襲来。大きな二つの組織の襲来に気付かない夜弧ではない。
当然であるが、未だに左足はなく。松葉杖がなければ移動できない状態。
「ふぅ……………」
夜弧は傷を癒すために有名な温泉の世界にやってきていた。
"極楽に近い火山界"オレンジ・ボーインヘットーと呼ばれる異世界。
湯治として有名であり、この世界のほとんどは火山で占めている。人口はそれほど多くないため、戦場となってもそれほどに困るところではなかった。疲労だけでも抜いておかなければ守り抜けない。
「戦いましょうか」
普段、黒くて暑そうな魔術師の恰好を軽くして温泉に浸かっていた。左足がないだけで周りのお客は驚いていた。一方でそれ以外には傷は一切なく、綺麗な白い肌をしていた。三日月の仮面も外されており、青い色の瞳と黒い色のショートボブのような髪型。仮面をつけるのがもったいない、綺麗な顔立ち。一方で胸はかなりのまっ平ら。そこだけはパッドでもつけた方が良い。
しっかりとタオルで全身を拭いていつもの服の薄着バージョンを着用する。ちゃんと仮面もつける(ちょっともったいない)
松葉杖を使いながら、温泉街から離れていく夜弧。
たった一人でハーネットの資料を守り抜く。異世界に逃げるという手段もあるが、数という壁には限界がある。この場所でブライアント・ワークスも、管理人も相手にするつもりであった。




