管理人とは怪しい奴等。それは管理人もそう思っている
「俺があいつ等を引率だって?」
「ええ。頼れるのはやっぱりあなたしかいませんしね」
龍の異世界に赴く前にクロネアはラッシにお願いしていた。春藍、ライラ、ロイの3人を引率する管理人となるよう命じたのだ。
「なんでそんなことを……俺達はお前等と一緒にブライアント・ワークスを狩れば良いだろ」
「真実がなんなのか理解できないからです。ダネッサの言葉が真実である可能性は高いですが、…………。いえ、ちょっと言葉にするのが難しいです」
「?」
クロネアは保険の意味でラッシと別行動にしたかった。
明かしても良い理由の一つに
「春藍慶介がハーネットであった事は事実です。今は春藍慶介であっても、油断できません。彼の監視としてあなたがいてください」
「それなら確かにお前より俺が適任だな。分かったよ」
明かせられない理由があるのは、クロネアが感じている管理人の不信感である。
ポセイドンがなんらかの企みをしているという議題が出た場合、人類にとっても愚策とも言える多数決を使われる事が管理人でも多い。大人数での話し合いでは話術に長ける者よりも、物量が有利というもの。ポセイドンもまた話術が上手いところを言えば、平和対策というの名のポセイドンの理想が結論となるだろう。
科学の使い手は大抵、ポセイドン派であった。
管理人ナンバー:002~020の管理人のスタイル一覧。(001は空位)
魔術:
龍、朴、ベィスボゥラー、グルメーダ・ロンツェ、クロネア
(計5名)
超人:
桂、ヒタス、新橋
(計3名)
科学:
ポセイドン、フルメガン・ノイド、リップル相馬、怨北王子、リゾウ、ノーリ・ディア、無花果、カミューラ・ノパァス、ホルォ・レインゼー、ハイデルモット
(計10名)
朴より上の管理人はかなりの発言権を持っており、派閥などもちゃんとあった。だが、蒲生の死が大きく、彼が持っていた人脈はなくなったと言えるだろう。次に新しく任命された管理人のほとんどがポセイドン派で固められていたことだった。これでは本当にこれから突然の出来事が起こるのかもしれない。
万が一、自分になにかがあった時。ラッシを自分達の保険として考えていた。ライラ達もまた、夜弧とブライアント・ワークスを追うわけだが、信頼できる人間と一緒にいた方が巻き込まれにくいだろう。
「じゃあ、行くわよ」
「ところでどこに向かうんだよ、テメェ等」
ラッシはライラ達と合流。管理人の科学を操るラッシは行き先をライラに尋ねると
「テキトーで良いわよ」
「は?」
「うん!テキトーでお願い。楽しいところが良いわね」
そもそもおかしいことだった。
ブライアント・ワークスも、夜弧の居場所も分からないというのにいきなり異世界に行くなんて事。
ライラとクロネアは一度たりとも話してはいないが、お互い考えて次の行動をとっていた。
春藍、ライラ、ロイ、ラッシ。この4人の冒険が今日から始まったのであった……………。
「では私も行きますか」
続いてクロネアも、龍と話し合うため彼の異世界へと赴いたのであった……………。
ドヒュウウゥゥンッ
クロネアが龍のところへ向かい。出迎えてくれたのは弟子であり、現在上司のグルメーダ・ロンツェ。彼に連れられる形で龍のいる部屋へと案内される。龍の部屋にも、異世界に来るのも初めてであったクロネア。
「龍管理人。クロネアが来ました。入ります」
ギィィッ…………
重い扉が開くと、そこに待ち受けていたのは…………。
『うわははははは、もう貴様は終わりだ。チーター姫は我が手中にある!』
『私を誰だと思っている。虎王だぞ!阻んだ障害はいくつも乗り越えてきた!』
『助けてーー虎王!』
特撮ヒーローテレビをマジマジと見ながら、拳を突き上げる。
「いけーーー!虎王!チーター姫を救うんだーーー!」
真剣に応援する姿はまさに子供。タバコが入ってある灰皿ですら蹴り飛ばしての、熱烈な応援をする龍がそこにいたのであった。
「おめぇ、何してんだ!」
「ぐおぉっ!?」
弟子であるグルメが龍に躊躇する事無く、飛び蹴りをかまし、さらにはリモコンを取り上げて電源を切ってしまう。お母さんとお父さんを兼ね備えた行動であった。
「今良いところだったのに!グルメ!もう一回、もう一回!俺にテレビを見させてくれ!」
「いけません!あなた、そんな子供染みた番組を未だに観ているんですが!?ちゃんと録画すれば良いじゃないですか!」
「ろ、録画はちゃんとしてる!けど、生の楽しみも分かってくれよ!」
「ダメです!先に話が大事です!」
二人の慣れているようなやり取りにクロネアは相談する相手をやはり間違えたと、確信した。
「お、……うっす。よく来た!やっぱり、特撮ヒーローはカッコイイよな?」
「あなたはサイテーにカッコ悪いですよ、龍管理人…………。粘ってでも、桂さんか朴管理人を選べば良かったと後悔しました」
「そー言わないでくれ。ちょっと来るのが早いぞ」
この龍の部屋で簡単に話を行うクロネア。グルメもクロネアにその事を伝えられた時、やはりという感想を出していた。
「なるほどな…………あの科学力がポセイドンによるものだとしたら、俺がやられかけたのも納得がいく」
「……まだ体は完全に戻ってないんですか?」
「テレビや漫画、喫煙、ビール、麻薬までやれるほど回復した」
「あ、最後は余計ですね。っていうか、全回復おめでとうございます」
龍の魔術を知っていて、それだけの科学を生み出せるとしたらやはりポセイドンしかいない。ダネッサという奴をグルメや龍は知らないが、信用はできた。
「じゃあ。俺が代わりにポセイドンを殺してくれば良いのか?」
「止めてください。どう転んでも、私は反対です」
龍の幼い頭脳を補っているグルメ。人間ではあるが、クロネアと対等に話をしている。
「ポセイドンが怪しいというのは分かります。しかし、彼を倒すとなるとこちらもそれなりの覚悟も必要ですし、何より人員をさらに要する。ポセイドンがブライアント・ワークスと関わりがあるからといって、全管理人が協力するとは思えません」
「でしょうね」
「?」
「なんでそこで?マークを出すんですか、龍管理人。あなたの人望はそんなにないですよ」
「!う、うるせーーー!子供だと思って馬鹿にすんな!」
…………今、自分を子供って認めたような……………。
「龍管理人。ポセイドンには気をつけてください」
まるで親が子供に言っているような言葉を使うグルメ。
「蒲生管理人がいない今、あなたの役割は相当なものですから」
「…………分かってるよ」




