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RELIS  作者: 孤独
夜弧編
224/634

再びの対決。ロイ+春藍 VS ダネッサ


何かが起きた事にようやく気付けた者。



「なんだ?…………アルルエラさんがキレたのか?」



彼女をよく知っているロイは下の階での異変を知る。心に何かの不安を感じつつ部屋を飛び出した。廊下には異変を感じつつも、正体を掴めていない者達もいた。


「…………」

「ロ、ロイ様。何か起こりませんでしたか?」

「ドーーーンッて響いたよな」

「……………誰かが暴れているんだよ。お前等は動くな、俺が行く」


正体は掴めない。だが、誰かがやってきたとしたら分かる。ロイはそれを突き止めようとしたが、


「待ってよ、ロイ。僕も行く」

「!春藍。お前も気付いたか」

「さすがにね。僕も治療くらいはできるし、ロイの足も引っ張らない。良いよね?」

「ああ、だがあとで追いかけろ。俺は一足先に行く。胸騒ぎがするんでな」



ロイは廊下の窓を空けた。タワーと名付けられるほど高いこの場所から迷うことなく、地上へダイブしていくロイ。春藍には到底マネできない事だ。


「ロイ…………ちょっと僕は遅れるね」


春藍はうっすらだが、ハーネットとの出会いがさらに自分に強さと冷静さを与えたと思っていた。少し前の自分なら怯えて隠れていたかもしれない。

走りながら春藍も下へ向かう。その途中、


「お、お兄ちゃん!」

「謡歌!」

「た、大変なの!!海パンの、なんか分からないけど、……アルルエラさんが、ロイさんを呼んでって!」


謡歌のパニックぶりが昔の自分を重ねてしまう。春藍は謡歌の口を押さえて攫うようにしていた。


「謡歌、場所を教えて。僕もそこに向かう」

「!!お兄ちゃ~~ん!」


他人の立場から見ると、春藍が謡歌を本気で攫っているとしか見えない図であった。






ザザザザザザザザ




壁に足をつけながらの高速の落下。暗闇かつ静寂な空気に振動を伝えた。住宅タワーにもロイの足の威力が伝わった。



「あーー?」


ダネッサはそれに気付く。まだ彼はアルルエラを葬った2Fにいた。彼女にやられた傷を癒せる薬を注入し、休んでいた。ダネッサにとっては予想外の敵から喰らったダメージであった。

ダネッサはそれでもロイを招くように外壁まで槍で破壊した。ロイもそれに気付いて壊されたところから2階へと侵入する。その加速力、速度を維持したままの突入。止まれと言われても止まれない。



「テメェか」

「ふん」



顔を合わせたのは2回目。同時に本気でやり合ってみたくなる。今の2人に枷はない。しかし、ロイだけには速さという翼が生えていた。



ガゴオオオォォォォッッッ



防御するダネッサを軽々と蹴り飛ばす。自分の勢いをまったく殺さずに繰り出される打撃と、速度はダネッサの身体能力を持ってしても対応できないようだ。もっとも、ダネッサの強さはロイとは違っていた。



「!!」


ロイはスピードに乗ったまま、目でアルルエラの死亡をこの目で見た。首と頭を離された死に方。自分の妻であり、同時に色々と世話になった人。

"超人"と"科学"による物だと思われる差がここで現れる。ロイは怒りを露にし、持ち前の身体能力を覚醒させた。



「テンメェェェ!!!」

「!!」



ロイは圧倒的に迅く、鋭く、そして小さく、……急所を狙った打撃を放った。優れた身体能力を持っていても到達できないとされる、習慣から繰り出された撲殺のみを追求した打撃。



ベギイイィッッ



1000分の1でそれを放てたとしても連打は偶然では不能。



バゴオオォォッッ



連続攻撃を得意とするロイ。その一発の威力が跳ね上がり、どの一撃も急所を突くとしたらどんな強者でも倒せるのかもしれない。ダネッサはロイに喰われる弱者であっただろう。人間であればそうだ。



ミギイイィィッ



「!!」

「いてぇな…………」



しかし、怒りを見せたところでパワーアップできる限度は鍛錬の最高値である。所詮は限界に近づけた



「下等生物」



でしかない。

ロイの"超人"としてのレベルは人間最高レベル。だが、生命という枠。身体能力という一点で見れば、いくら"超人"といえど、"人を超越した"だけに過ぎない。

生物界では人間のもっとも優れた部分を知能と書き記す。足だ、腕だ、腹だ、胸だ。そんな各部位は人間の特徴であって、褒められるべきところではない。讃えるところではない。間違えている。


それとただ答えの丸暗記、公式の丸暗記、パズルのように問題を解く事を行う。いわゆる、勉強できるよ僕ちんって奴は知能という枠に入れるのは難しい。要素としては入るが、……知能という奴は問題すら出されてないのに解かなきゃならない問題なのだ。そーゆう感じなのだ。



ベキイィッ



「!!」

「テメェに俺を超えられるか?」


あれだけの攻撃を浴びながらもダネッサは反撃の狼煙とも言える行為。ロイの腕を握ってみせた。スピードは止められないが、自分とロイの位置を固定させ、ダネッサはもう一方の手で握る槍に声を掛ける。



「ナミノレ」


"櫓厨"は変型を始める。グングンと伸びつつ、ホースのような柔らかさを兼ね備える。ロイの腹部を狙うように動いていき、ロイもそれに対応し槍を手で押さえる。だが、スピードこそなくとも力のあるホーミング。


「バーカ。ローギアの動きを腕一本で抑えられるかよ」


ロイは槍を押さえるだけでなく、破壊することも試みるが、パイスーのような強大な握力は"紫電一閃"にはない。ダネッサの言葉通り、槍を止められずに腹を貫かれる。刺される痛みは経験済みだ。持ちこたえられる。

だが、まだ未知には体は耐えられない。



「スクリュー、オーシャン!」


ロイに刺さった刃は船のスクリューのように力強く回り始める。ロイの筋肉、内臓を裂き、抉る。


「ぐぉっ……」


刺したロイを決して逃さず、それでもロイとの距離を一気に引き離し、壁や天井に叩きつけながら槍は伸びていく。ロイを捕らえられた魚が暴れるようにさせるダネッサ。


「そもそも、素手で挑む馬鹿が武器を持つ俺に勝てるわけねぇだろ」


そう言葉を使ったダネッサであったが、アルルエラとロイの猛攻に体はキツイと泣いている。


「武器ってのは人間の知恵を形にしたもんだ。時代に乗れてねぇお前が俺に勝てるわけねぇ」


勝負はまだ五分であった。ダネッサの驚異的な耐久力とロイの底力。



ギヂュッ



「ぐ、ぐぐっ…………」


槍が体から抜けない。"科学"の嫌らしさだ。使用者が弱りきっていても、その効果は安定している。逆に"超人"のロイはダメージを負いながらの脱出には不向き。時間が経てば弱っていく。

もし、ロイが"櫓厨"から脱出したのならダネッサに再びターンが回るとは思えない。

ロイとダネッサとの勝負。二度目の対決は邪魔ではなく、当然の横槍が入っての閉幕。躊躇すらなく、その表情とグローブが填められた拳には感情が乗ってないほど、冷静であった。



「!」



ベギイイィッッ



振り向くダネッサに対して、正確に顎を下から叩き上げて捻りを加えて、ダネッサの頭を天井まで吹っ飛ばす。



「ふーーっ」



姿はそこまで変わらずとも、姿勢は五年前とはまったく違う。とてつもなく長い時間を使っていた成長の軌跡の成果。初めてその姿勢を見る妹にとっては声が震えた。ダネッサも強者として彼を見る。



「お、お兄ちゃん……………」

「かっ…………て、てめぇ。報告とは随分違うじゃねぇか」



春藍は大人しさを払拭している冷静さでダネッサと対峙していた。



「僕もここを守る人だ。もう、僕は戦える」



真の敵として認識した時。彼の感情は静かに、でも大きく外れていて自分の中にある抵抗を除去していた。武術を叩きこんだロイも初めて見る春藍の姿だが、教え通りの理想像の男が立っていた。

ある程度の嫌いを打ち払い、立ち向かえる男だ。



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