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RELIS  作者: 孤独
夜弧編
223/634

ハーネットの資料を巡る攻防③


管理人。ブライアント・ワークス。

双方の組織の決定的な違いは実行者の数であった。



「初めまして」



ライラはエクスピーソーシャルに行き、クロネアの紹介でブライアント・ワークスの討伐の一員となっていた。桂の弟子にして、実力も折り紙つき。戦闘面で不安があるこの新メンバーにとっては大きな力となるだろう。

彼女とクロネアを欠いたフォーワールドにすぐさま現れた二人の人物。



「行くぜ」

「あまり荒らすなよ」



黒い龍の仮面を被った博士と、ダネッサ・オルトゥルス。

たったの2名でフォーワールドに攻め込み、まだ確証が取れていない中、ハーネットの資料を奪い取ろうとしていた。二人という人数だからこそ、決断が早く、揉めることもなかった。

フォーワールドの夜の出来事。たった2人だけであるが、フォーワールドの住民達はあの戦争の再来を予感させた。ほとんどの者は眠りにつき、騒ぎが届いたのはまだ先の方。



「お兄さんが元気になって良かったですね、謡歌ちゃん」

「はい。ホントにあーなった時は心配でした」



春藍謡歌とジャン・アルルエラは出会ってから仲がいい。謡歌は料理の先生としてアルルエラに師事していた。


「お兄ちゃん、無事で良かった……」


何年経ってもブラコンでいられる妹である。2人が自宅へと帰る道のことだった。



パァンッ



「?……今、何か音がしましたか?」

「え?そんなの聴こえましたか?」



今は住宅タワーや食事処で料理を提供している仕事をしているアルルエラだが、タドマールの住民。戦闘や野蛮な喧嘩には今も鼻が利く。

聞きなれない音の方へ、謡歌と共に進んだ。耳だけじゃなく、鼻も、目も、勘も。異常を現し始めた。



バシイイィッッ



「こんなもんか?」


住宅タワーの2階。居住区でもあるこのフロアにいる人間達に刃を振るったダネッサがそこにあり、床一面が血塗れとなっていた。彼に殺された人間達は、女性、子供、老人。誰だろうが、ここにいる人間を始末していた。

静かにして、助けすらロクに呼ばせない隠密性もある。


「えっ?」

「!!」


アルルエラの久しい闘争が一気に蘇り、目に血が走った。



「早くロイ様をお呼びください!!謡歌!!!」



メイド姿でありながら、ダネッサの槍捌きに対応するアルルエラ。ここにいる凡人、謡歌にとっては腰が落ちそうな光景と出来事であり、


「はわわわわわ」


驚きを見事に表現している声を出していた。

謡歌に視線と意識を向けられたのはアルルエラもダネッサも、一瞬のみ。


「やるなー。お姉さん」

「くっ…………しかし、なぜ。あなたは海パンで槍を振るう!?恰好を考えなさい!」

「戦うメイドも珍しいと思うぜ」


アルルエラはダネッサの強さを感じ取れた。戦闘力のない住民達とはいえ、怖さは分かる。


「一つお礼を言いますわ」

「?」

「私、歳は40以上なんですが。若く思われて光栄ですわ」

「な、なに!?そんな若く見えるのにか!!?」


年齢と違って若々しい容姿。ダネッサもそのカミングアウトに驚きを出し、一瞬だが力が抜けた。そこを見逃さずにアルルエラはダネッサを弾き飛ばす。



バギイイィィッ



「ふーっ」

「おいおい、おばさんでこの強さはねぇーだろ?俺よりも年上かよ……」

「困りますわ。……何十年ぶり?男の上じゃなく、戦いの上で腰を踊らすのは……」



謡歌を守るように、ダネッサの進撃を食い止めるため。久しい記憶を掘り起こしながら、戦闘体勢をとるアルルエラ。


「ただの雑魚じゃねぇ」

「私はロイ様、インビジブル様の妻…………2人を制止する程度の暴力を備えている者ですわ」

「誰のことを言っているかわかんねぇが。これは作戦だ、ここでぶっ殺しは確定だ!!」



ダネッサ・オルトゥルス

スタイル:科学

スタイル名:櫓厨ロィズ

詳細:

槍型の科学。伸縮自在、再生可能、劣化なしの槍。この槍でぶっ殺すという役目を突き詰めた、殺傷の槍。

ダネッサ自身。謎の身体能力を持っている。"超人"と遜色ないほどであるが、その仕掛けは不明。



「……………」



こいつは強い。しかし、住宅タワーにはロイ様がいる。ロイ様ならこの者に勝てる。私の役目は住民達をこれ以上殺させないこと。こいつに少しでもダメージを与えること。間違っても……



「間違って」

「?」

「あなたを殺してしまったら。ごめんなさい、ロイ様」




ジャン・アルルエラ

スタイル:超人

スタイル名:独楽

詳細:

超短期決戦用の能力。戦闘開始後すぐに、圧倒的な戦闘力を吐き出すことができるが、徐々に力が抜けていく。




アルルエラが描いた作戦は理想である。しかし、その理想に対して自分が備えている能力はあまりにも向いていない。超人の中でも珍しいとも言える、超短期決戦を得意とする者。あらゆるケースバイケースに適応できない超人能力。逆にそれはある一点がどツボに填まれば、どんな者だろうと沈めてみせる。



グイイィッ


「お!?」

「服くらい着なさい。投げられないですわ」


アルルエラは海パン一枚のダネッサの胸倉を掴んだ。ダネッサの痛覚はまだ反応できないほど、アルルエラは迅く、力強かった。胸倉を掴む時、恐怖を感じるのは視線や圧迫とかじゃない。アルルエラのそれは物理的に恐ろしく、裸のダネッサの胸骨に手を完全に入れて持ち上げつつ、へし折っていた。



「変態は冥土へ行きなさい」

「!!」



ダネッサが気付いた時。

自身の身体はグチャグチャに潰れていた。広がる自分の血、肉、武器…………。

投げ技だというのに全身に強いダメージが走った。



ドゴオオオオォォォォッッッッ



謡歌がロイのところまで辿り着くよりも早く。ダネッサの仕業に気付く者よりも早く。アルルエラの圧倒的な戦闘力が住宅タワー全体に轟いた。


「はぁ~~~~~」


アルルエラの瞬間的な強さの上限はインビジブルをも瞬殺するだろう。だが、使用できる時間はわずかに1秒半。その後は全身の力が抜け、しばらくは立つ事すらもできない。

ダネッサの四肢、頭部……人体の急所に全ての攻撃を叩きこんだ。身動きとれずに横たわっている。アルルエラと同じであった。




「はぁ~……はぁ……………」



アルルエラの強さは総合的にはあまりにも尖り過ぎて比較するのは難しい。ダネッサを倒したと言えば確かであるが、彼を上回ったかというと……微妙。アルルエラはロイ達の時間稼ぎにコレを選ぶしかなかった、自分が勝つというビジョンは浮かばなかったからだ。



スウウゥゥッ



「う、うーーん。……やるじゃねぇか、メイド婆」

「!!」


胸に穴が空いていても、身体にダメージを負っていても、ダネッサは立ち上がった。耐久力や持久力という点において、ダネッサの力はいかんなく発揮される。


「ボロボロにやられたが…………立ち上がれるのはやはり俺だけだ」


"海鮮"と書かれたハチマキを一旦解いて、もう一回キツく締めるダネッサ。大怪我を負いながら、再生とは違う構造で立ち上がって見せるダネッサ。

人間という常識とは違うところにいる人物を、アルルエラはしっかりと確認した。弱りきった肉体から声を出す



「あ、あなたは何者……………」


出会ってすぐにダネッサが人間のようで人間じゃない違和感を知った。


「こうも簡単に立ち上がれるダメージじゃないはず………………」

「特注の身体をしてんだよ。"超人"とは別のな」


ダネッサは吹っ飛ばされた槍を拾いにいった。身体のダメージを感じつつも、彼はやってのける。槍を握ればダネッサは天下無双。


「じゃあな」

「…………………」


アルルエラは命がとても儚いと感じる。

……どうか。という祈りをする暇も与えずに彼女の首に槍の刃は届き、彼女の首を撥ね飛ばした。他の住民達とは違い、敬意を送るように綺麗な殺害方法をおこなった。




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