巨乳か貧乳のどちらが良いかは性癖によるだろうが、それに対して真剣に話をできる友達がいると幸せな気がする。
パカラパカラ
「ライラーーー!はるあーーーい!」
馬を巧みに操り、坂を駆け上がって手を振り身体をやや斜めにしているメイド。遠いと一瞬、叫んでいても誰だか分からない。彼女の後ろにいるおっさんはなにやら自信を失ったような、姿をかもし出していた。
「あれはネセリアかな?後ろにアレクさん?どうしたんだろ?」
「そうかも」
ライラはネセリアの手を振るに気が付いたよりも。
ポニョンポニョン
「はぅっ!」
「え!?」
馬の足音ではない。それらが駆け上っている時に起こる、一点が大きいだけで可能な激しい運動。ポニョンポニョンっと揺れ動く、胸は服を激しく揺らしていた。確かにお風呂でそれは感じていた。
だが、それをまだ受け入れられない。たかが大きいだけ、たかが自分より揺れるだけ。それでも自分にはない魅力ある動き。
馬に乗っているアレク以上に、大きくはない胸とハートに、ネセリアが無意識に放った矢が突き刺さるライラ。両膝を地面につけてノックアウトする。
「手を振ってよーーー!どーしたのーー!」
その胸は揺らさないでネセリア!!って…………叫べたら、私は貧乳という扱いになるような気がする。決して違う。ネセリアがデカすぎる。ただそれだけ。比較すんな、私。デカ過ぎるからなんなのよって思えるくらいになれ。
「うぅぅ」
「どうしたの?胸が痛いの、ライラ?大丈夫?」
「し、心配しないでよ。心配で大きくなる胸じゃないわ」
「?」
なんでショックを受けているか分かっていない春藍。
2人の前にようやく、馬に乗ってやってきたネセリアとアレクが到着。到着して降りるなり、ネセリアは無邪気に明るく春藍達に声をかけた。
「お馬さんを貸してもらったの。すっごいよ!この子凄いの!とっても速いの!!」
「ずっと見てたよ、速かったね」
「春藍も乗ってみてよ、すぐに乗れるから」
ガシャァンッ
見えない天然かつ興奮して言っているネセリアが放った稲妻は、ライラじゃなくアレクに落とされた。
この男、馬を乗りこなせなかったため、ネセリアに乗せてもらっていた。弟子に教えてもらったのはネセリアが初めてかもしれない。"科学"以外だから、関係ないと少し強がった事も思っているだろう。
「さ、さすがに春藍には難しいんじゃないか?"科学"じゃないんだぞ」
「アレクさん。でも、乗ってみますよ。ネセリアが乗れるなら少しできるかも」
おい、おい、おい。それはもしかすると、乗れなかった俺はネセリア以下になるではないか。
天然なこの2人は人を傷つけているというのを知らんのか?
「怪我はするんじゃないぞ、春藍」
「はい。気をつけます。で、どうやって乗るの?」
「まずね」
ネセリアは牧場の人達に教えてもらった乗馬の仕方を春藍に教える。
仕事人であるネセリアと春藍は重要な部分を的確に理解し、相手に伝えることができる。質問などがないようしっかりと伝える。
言葉だけではなく、動作もしっかりと教えるネセリア。一度見本をみせてもらったので春藍もチャレンジをする。できるかな~っという期待感を出して見守るネセリアと、胸の大きさの差にやや凹んでいるライラと師としての威厳が少し薄くなりそうな目をしているアレクが、落ち込んでいる。
「はっ」
トンッと馬に乗った時。
ネセリアの指導もあったのだろうが、自分が自然に乗れたという気になったように感じた。ネセリアが喜ぶよりも早く、馬を動かしてしまった春藍。
「わぁっ!凄い春藍!」
手綱の使い方を丁寧にやって、理想的な乗馬でネセリア達から離れていく春藍。ただ直進するだけでなく、弧を描くように走らせることもして3分ほど、馬を走らせた。
「い、いけ!」
もっと走らせる、凄く速くなる良い馬だと春藍は思えた。簡単に、それもネセリアよりも速く、上手く乗りこなす春藍。
「すっごーーい!ホントに凄いよ、春藍!!」
「春藍。お前までもか……後で、教えてもらうか」
春藍の乗馬を見て声を出してしまうアレク達。春藍はその後、馬をゆっくりと走らせてアレク達の元へ来た。凄く楽しんだような顔をして降りたのだが、少しだけ前を向いていて。
「アレクさん、ライラから頼まれた事があるって聞きましたけど。どうだったんですか?」
「!ああ、その事か。そうだな、それを話さなくてはな」
「あ、ネセリアが乗っていて良いよ」
「わー!ありがとー!よーぅし!春藍に負けないように練習しよ!」
ネセリアをすぐに馬を乗せてしまう春藍。アレクは呼び止めるようにネセリアに言う。
「ここから少し、人のいないところで話そう。その方が良いだろう」
「分かりました」
「じゃあ、そこまで乗馬して良いですか?」
「良いけど、あんまりその、ね。揺らさないで」
「へ?」
「気にしないで。じゃあ、あそこまで行きましょう」
ライラが前になって、三人を連れて行く。ネセリアと並んだり後ろにいたらすごく凹む。現実から逃げるように前で歩いた。
目指したところは分かりやすいようにある、大きく長い一本木の下。そこに四人が着いた時、ネセリアには馬から降りてもらって話しを始めるライラとアレク。
アレクからまず始めた。
「ここの世界は、"酪農平原"モームスト。"管理人"は7人いるそうだ」
HoPy:
スタイル:超人
スタイル名:開拓人
土地を耕す事に特化している超人。ちなみに素手で行う。
モノカ:
スタイル:科学
スタイル名:ハイエット・ECH・Δ
"科学"や道具の使い方を教える事ができるメモ帳型の科学
マトン:
スタイル:超人
スタイル名:一流運転手
どんな乗り物でも自在に使いこなす事ができ、絶対に事故らない運転手になる。
蛍:
スタイル:魔術
スタイル名:フゥーフゥー
魔力で色んな微生物を作り出す事ができる魔術。主に土を良くしている。
ビッギィー:
スタイル:科学
スタイル名:空清浄機
空に飛ばしている大きな十字架の形をした科学。十字架が空に浮いている間、天候は落ち着いて理想な農業ができるように調整されている。
メークミル:
スタイル:超人
スタイル名:料理長
料理を作り出す超人。日々、新しい食事に取り組みや新しい食材の開発に勤しんでいる。作れる料理は意外にも普通。
万姫:
スタイル:超人
スタイル名:結婚案内人(YOU,SEX,SHINAYO)
巧みな話術でカップルを成立させまくる事ができる超人。動物愛が多くなってしまうこの世界の住人をちゃんと結婚させ、子孫を繁栄させる役割。
7人とも、ラッシやクロネアのような強さも力もない。
この世界が平和かつ安全故に縛り付ける必要がどこにもないからだ。また管理人達の勤務は屋外である事が多く、日中は管理人達が住んでいる場所には誰もいないらしい。
あくまでこれは住民達から得た情報。
やる時にちゃんと行くかどうかは分からない。
だが、この平和具合。"フォーワールド"もライラからしたら平和な世界と思えただろうが、春藍達からしたら、この世界はそれ以上に平和だと思っていた。なんというか。激務はおそらく無い気がした。全員がお日様を浴びながら、健康的な仕事をしている。そう思えた。
その平和のおかげでここの管理人達はラッシ達よりも、弱く警戒心がない。
忍び込んで速攻で別世界に行けるだろう、科学を見つけ出して使い。
「アーライアに行きたいわ」
ライラはアレクに確認するように言った。
「そうだな」
アレクもそれに頷いた。