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RELIS  作者: 孤独
ハーネット編
219/634

救う者。正体不明の素顔



……………んん……………


「うーん…………珍しいね。君ならあの時のパイスーを倒したように奇襲で来ると踏んでいたよ。ここまで徒歩で来るなんて意外だよ」


ハーネットは自分の敵の出現を感知して目覚めた。刀一本、たった一人の戦士。


「ライラを盾にして眠る奴に奇襲はできないな」

「ははは……ま、彼女の役目はここまで。どう?たまには一対一で真剣に戦ってみない?」

「拙者は一対一のつもりだ」

「不意打ちが得意な君が言う台詞じゃないなー。ポセイドンか龍でも隠れてると疑っちゃうね」


冗談が上手い。口がとても気持ち良い。

一対一……という雰囲気は分かる。桂と戦えるなら敵討と行こう。一定の距離を保ちながら、桂と平行して歩いていく。ライラからどんどんと遠ざかる。


「彼女のことが心配?」

「…………少し不安だ…………。邪魔にならんことが良い」

「私もそうなんだ。結構、私。本気を出すから巻き添えで殺しちゃうかも」


言葉の使い方が冗談のようで本気にしかねない。桂がハーネットの助言に思考をわずかに巡らせ、別の管理人を呼び、回収してもらおうと……答えを出す。その0.7秒程度の意識に。



ピキィッ



「!!」



なんとハーネットから不意打ちを仕掛ける。"マグニチュード"の一発が桂に飛んだ。"雷光業火"の回避も、使われる前にやれば絶対の振動攻撃が炸裂する。

桂の身体が地面にクレーターができるほど強く沈み、身体に強力な重力を掛けられる。



「専売特許を……」


桂、少しだけ自分を認める。

なおもハーネットは緩めることなく、"マグニチュード"で大地に埋まる桂を追い詰める。音も衝撃も何もかも伝えられないほどである。どんな手を使おうと、桂を倒して生き延びようとする。長期戦は絶対不利。少しでも自分に傾いた流れを保って勝利にする。



「はーーーっ……私は生きる………生きるよ…………」



自分の心を強く保つ。精神力が高いほどその心に"魔術"は反応し、能力は向上される。小休止後とは思えない激しい攻撃を繰り出していた……………。



バギイイィッッ



「!」

「ひ、……一つ。……お前に言っておきたい」


それでもなお、桂は"雷光業火"や持ち前の身体能力で埋められた大地から這い出てハーネットの眼前に現れる。ハーネットの戦いから一つの弱点が分かった。これほどの力をさらに続けられたら困る。彼を支えている部分を壊してやる。



「お前の仲間………パイスーやザラマ、梁河はもう。この時代にはいない」

「!!!」

「お前を待っていた者達は拙者達が葬った」


パイスーが、春藍がハーネットであることを知っていたように。ハーネットもパイスー達がきっとどこかにいると知っていた。けど、それは来る時代があまりにも遅かったのか、パイスー達が早かったのかは分からない。

一瞬の揺らぎ。攻撃が躊躇するタイミングを見逃すほど、桂の"雷光業火"も甘くない。



バシイイイィッッ



「!!うううぅっ、くぅぅっ………………」

「腕は切り落とせんか……だが、決まったな」



身体の痛み、精神の安定が崩れたハーネットは地面に両膝をつけた。桂はゆっくりハーネットに近づいていく。やはり実力の差も、状況ですらも桂が有利であった。ハーネットが生き延びる手段は完全になくなった。自分自身もそう思っていた時だ…………。彼が死ぬことは確定しても、春藍が死ぬことはまだ決まっていなかった。


「!」

「!?」

「……こいつは俺が預かる」


ハーネットの横に現れ、桂に立ちふさがるように、ヒタスを抱えて現れた黒い龍の仮面を被った大きな博士。桂も驚き尋ねる。



「……ヒタスを………なぜ抱えている……。お前は何者だ…………」

「条件だ、桂。こいつの命と引き換えに春藍慶介を助けろ」

「!…………誰なんだ君は……………」


ハーネットも夜弧とは違った対応で彼を見ていた。この窮地を助けに来た感じにはハーネットも思えなかった。


「いや。それはできんな」


桂は刀を彼に向けた。


「ヒタスは確かな実力者。それを破った貴様を敵に回すとなると面倒だが……2人程度、拙者が切り伏せて見せよう」

「…………ならば、交渉材料を二つ出そう」

「なんだと?」


黒い仮面の博士は桂を相手に慎重だが大胆な交渉に出た。


「一つ、俺が助けたいのは春藍であって、今。奴の身体を借りているハーネットではない。ハーネットは俺が鎮めてみせる」

「なに?」

「…………ちょっと、止めて欲しいけど……そんなことができるのかな?」


ハーネットも彼の言葉にはかなり驚きを見せつつ、あり得ないという顔をしていた。"RELIS"という病魔の治療はまだ確立されていない。だが、黒い仮面の博士は注射器を取り出し、ハーネットに打ち込んだ。


「…………!!」

「ブライアント・ワークスの科学力を侮るな。古の問題も現在は解決するのだ」


打ち込まれた後、ハーネットは苦しみの表情を見せる。銀色の髪色が徐々に春藍が持っていた赤紫色に変わっていく。


「!……何をした…………貴様…………」

「くううぅっ、うああぁっ……」

「……春藍慶介になれば標的ではないな。桂…………」


謎の"科学"に、ハーネットの苦しみに桂も戸惑った。だが、彼が打ち込んだ注射後、髪だけではなく、圧倒的な魔力もドンドン萎んでいった。


「時間が経てば春藍しか現れない」

「…………何をした…………いや………」


桂の警戒が強まったところで彼はもう一つの交渉を掲示する。


「もう一つの交渉材料は俺自身だ」

「!」


彼の黒い仮面が外され、桂はその素顔を見た……………。


「お前は………………」

「…………………これで春藍を見逃してくれ」


彼のことを春藍が知るのはまだ先のことであった。しかし、春藍は誰かが助けて来たということはなんとなくだが分かっていた。ぼんやりとだが、彼の形だけは捉えていたのだ………。


春藍は彼によって九死に一生を得るのだった。




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