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RELIS  作者: 孤独
ハーネット編
211/634

遠い遠い使命より

「ぐっ……………」

「ここまでこっ酷くやられた龍管理人を見たのは初めてです」


龍は別の異世界で、自分の弟子であり、管理人にもなったグルメーダ・ロンツェのところに来ていた。子供を介護する大人の図に思えるところだ。


「一体なんだったんだ…………。妙な強さだったし、……俺の能力を知っているだけじゃなく、対策までも準備していやがった」

「対策まで?」


まともに戦って龍に勝てるとしたら、桂かポセイドンくらいだとグルメは思っている。それがここまでやられるという点、



「なるほど。だから龍管理人がここまでやられているんですね」

「当たり前だろ!普通、"ラ・ゾーラ"の空間内なら俺が負けるわけないだろ!」



プンスカ怒りながら治療を受ける龍。なんか和む。親子のようである。


「しかし、対策というと…………なかなか不気味ですね」

「…………そうだな」

「我々を怨んでいる者の行動ならばありえなくもないですが……。龍管理人はどっちかっていうと、我々管理人に怨まれますよね」

「な、なんだと!?」

「この前、書類の出し忘れをポセイドン様や桂さんに言われました。いちお、私が提出しました。このような事務処理を忘れるとは子供が宿題を忘れるのと同じですよ」

「うがーーー!俺は大人だぞ、タバコもするし、ビールも飲む!麻薬もするんだーー!」

「禁断症状が出ますので麻薬は没収しますよ」


一命はとりとめたものの、戦線に復帰するのはまだかかるようだ。龍はあまり賢くはない頭で、自分の襲った相手がどーゆう存在なのか想像を広げていた。

対自分用の科学を持っており、それらはとても強力な道具となっており、もしそれらの道具が各々の管理人達に対応できるのが揃っていれば脅威であろう。

おそらく、対峙した連中は人間である。だが、以前現れた"黒リリスの一団"とはどこか違うと判断できる。


「ともかく、鍵を握りそうなのはハーネットってところだろうな」



龍が治療を受けている頃、桂もまた一時的にだがマーティ・クロヴェルとは違う異世界に向かっていた。

ここまで1人で乗り込んだのは殺しに来たのかと、疑われてもおかしくない。


"遊園海底"マリンブルー。"お主様"ことポセイドンの館まで来ていたのだ。



「何の用だ、桂…………」

「なんだいたのか……」


桂はここにポセイドンがいないと思っていたが、……偽物じゃない確かな本物がそこにいた。


「つい先ほど、お主の世界で暴れている強者を別の異世界で発見したんだが…………どうも、悪さを働いていたようだ」

「…………その者は……ダネッサのことか…………?」

「お主の手引きであろう。何の目的だ、……いや。分かっている。奴にハーネットの回収をお願いしたのであろう」



ポセイドンの言葉は通じんっと訴えるようにゴリゴリ押して行く言葉を使う桂。さらに手土産として先ほど殺したヘット・グールの首をポセイドンの前に転がした。その首にポセイドンの表情はわずかに揺れた。



「目的じゃない。そこじゃあないな」

「……………………」

「その奥だ。……貴様、何を企み、ハーネットの何かを知っているな」


桂は刀を抜いていた。ポセイドンのホームとも言える異世界であるが、強力な兵器を使う余裕はどこにもないだろう。しかし、ポセイドンはもう落ち着いていた。ヘット・グールなど忘れたような目をしていた。


「目的の答えは"救済"だな……………」

「なんだと?」

「世界を救済するための仕事だ。我の首を刎ねるのは、お前の力でできてもお前に利があれば無理であろう」


ポセイドンは立場とその実力のみで桂に挑んだ。単純な戦闘技術という意味ではない。ポセイドンの魂、役割という価値を武器に桂に向かい合った。



「パイスーは死に。世界を狂わせた。未だにその傷は残っている。人類の進みは我も知っているが、まだ管理人が必要な時代なのだ」

「………………」

「桂、我はお前の描くシナリオに乗ってやろう。そこで決着をつけよう」

「戦争か」



誰にも知られなかった喧嘩だった。



「我は貴様も、"SDQ"も、……そして、"時代の支配者"すらも滅する。全ての人類を我が手で管理し、幸福を造り出す」


宣戦布告。

その裏にはなにかを手に入れたか、造り上げたのか…………。


「我を邪魔する者は誰だろうと倒す。そう決めた。我に覚悟は生まれたのだ」

「…………己の意志を通すつもりか」


桂はポセイドンの自信の正体に2つか3つのアテがあった。だが、ポセイドンの覚悟はまた別の話であろう。


「ならば、拙者も意志を通そう」


桂はポセイドンに例の物を渡した。ポセイドンもこれには驚いた。


「ハーネットの資料が入ったトランクケースだ。お主が持つといい」

「!……!?…………なんのマネだ?」


桂はその中身も見せ、ポセイドンに確認させる…………。



「……!…………間違いなく本物だ…………なぜ、貴様は……我を愚弄する」

「勘違いするな。拙者がハーネットの資料を持っていても扱えぬ。中身がなんなのかは予想できるが、それを作り出せるのは人類ではない。拙者は貴様しかいないと知っている」



管理人だとか、人類だとか。それ以前の話をしていた。



「完成するその日が、我々どちらかが数多くの世界を滅ぼす結末になる」

「………………」

「管理人が勝つか、……人類が勝つか…………それとも"時代の支配者"が勝ち上がるか」

「……させぬ…………貴様等でも、人間共でもない……我が勝ち上がる」



人は管理人を生み、人は管理人に託し、……その時が来るまで、管理人が人を纏めるようにさせていた。

遠い、その時よりも遠い。ありえないほど。光の先よりも遠いところに生まれた。



「!む」

「……どうやら、ハーネットはまだ何かを知っていたのか」

「…………"時代の支配者"……の文献か……」


ハーネットの研究資料の中にはポセイドンにも桂にも関係のないものもあった。ハーネットが記した文章であるが、この文章を作り上げたのはきっと管理人が誕生するよりもずっとずっと前のことだっただろう。彼がそれをメモしただけに過ぎない。



【時を超えても、死にあっても、世界が変わっても、人が変わっても、孤独であっても、裏切られても、愚かであっても、神様に選ばれてなくとも、"………"の意志は終わらないだろう。だから世界そのものが、"………"から逃れるために管理せざるおえなかった。だが、それが"………"の企みかとも恐れた人類であった…………】




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