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RELIS  作者: 孤独
ハーネット編
200/634

夜弧登場


「ご、ごめん…………ロイ」

「気にすんなよ」

「なんとか撒いたみたいね」



鳥の魔物達は山の中に入って来たが、ライラ達を見つけることはできなかった。深い森でもあり、視界は非常に悪い。


「で…………この山のどこらへんに行けばいいんだ」

「え、……っと……あっち…………」


結局おぶられる春藍。しかし、しょうがない。あんなペースで歩いていたら色んな連中がやって来る気がする。

ライラとロイは春藍が指示する方へ歩き続ける。険しい道の連続であったが、休むことなく進み。1時間後。魔物も、謎の敵とも出会う事無く目的地へついた。


「ここ…………だ……ここは変わらないな」

「……なんか…………でけぇ岩が置かれているだけだぞ?」


森にぽつんと置かれているだけの大岩。春藍は降ろしてもらうようロイに促し、自ら歩いてその大岩に触れた。


「!」

「あ?」


春藍のスタイルは"科学"である。だが、この時。ライラとロイは確かに感じた。春藍の体から溢れ出ていく魔力。パイスーが"ダブルスタンダード"で存在するように極めて稀であるが、二つのスタイルを扱える者もいる。パイスー以外ではクロネアもそうである。ただし、まともに両方を使えるのはパイスーただ1人である。

春藍にも微量ながら魔力を体内に有しているが、その魔力とは異質であるとライラには気付けた。語り方もどこか違っていた。



「安全性と機密性のため、私の魔力のみ反応する仕掛け…………」



ガゴオオオォォォッ



大岩が突如割れ、その中央には穴があった。


「な、何!?いきなり何が起きたの!!」

「……………うっ……う…………」

「おっと、大丈夫か春藍」

「……この下に……………行ってくれって……………ハーネット……が……」


春藍が倒れそうなところをロイが支え、そして抱えてライラと一緒に穴の中へと降りて行く。穴の閉じ方なんて知らないライラとロイはそのまま無視して行くしかない。

ハーネットがちゃんとここにいた時は岩を元に戻すこともできた。




タンッ…………


「な、なんだここ…………」

「昔のフォーワールドの地下みたいに広がってるわね…………」


穴の中は謎の広い空間。


「ここ…………マーティ・クロヴェル?」

「なんか空気からして違うぞ……」


迷路のように広がっているこの世界……。なんて言えばいいか分からないが、今まで行っていた異世界とは空気が違った。春藍も魔力を使った反動から、意識を失ってしまった。


「ここに何かあるんだな…………」


ライラとロイはとにかく探索してみる。一瞬、巨大な空間と思ったが。なんだかここはおかしい。距離が掴めない。


「???」

「?あ、あれ?」


降りた時は広大に思えた空間だが、10歩ほど歩いただけすぐに部屋の端に辿り着いてしまう。感覚が狂ってしまう。思ったほど近いのはいいが、とても探索しにくい。今度は近いと思ったところに歩くととんでもない距離であったり、………



「な、なんなのよーー!この空間はーー!!?」

「イラつくなーー!!どこに行けば良いかわかんねぇのによー!!」



ライラとロイは振り返る。相当な距離を歩いて、曲がったりもしているのだが……。自分達が落ちてきた地点がまだ見えている。


「お、おそらく……この先にはきっと奪われちゃいけない何かがあるから…………こーゆうセキュリティがあるとみたわ」

「ど、どこ行くかも分かってねぇのに…………」


この空間はあまりにも広すぎてどんな方向にも進むことができる。まるで、大海原の上を行く船のように自由な動きができるが、どこを進んでもまずどこに行くのか分からない。


スタイル:科学

スタイル名:シーキューブ

詳細:空間型科学。持ち主不明。空間内にいる者達の距離感や距離そのものを狂わして目的地に辿り着けないようにする。脱出するためには…………



「あたし達。もしかして、入り口にも戻れないかも…………」

「マジか?……結構、近く見える位置だろ?」

「!むっ」



ズダンッ


悩んでいる二人の前に現れた1人の人物。無論、知り合いではない。ライラ達と同様に穴から入って来て、この空間に降りて来た。


「誰よ!!?」


黒い三日月の仮面を被り、魔術師と思わせる恰好。一見しただけで、有するスタイルが"魔術"だと分かる黒衣。


「初めまして。それだけよ」

「な~に~。あんたでしょ!!魔物や人を使って」


ライラは怒りながら戦闘準備を始めようとした時、ロイが珍しく止めた。


「待て、ライラ」

「なに!?あたし、ここでもあいつをぶっ飛ばせるわよ!」

「落ち着け。あの三日月仮面の子は…………間違いなく女の子だ」

「え?」


ライラはロイの言葉に驚いて、聞いてしまう。仮面のせいで顔がよく見えず、分かりやすいところを見て確認する。


「仮面の奴の胸、全然ないわよ。平らじゃない」

「なーーーーーーー!!?」

「馬鹿野郎、貧乳も十分ステータスだ。俺は胸ならなんでも受け入れる派だ。差別はしねぇ」

「あーーーーー!?」


ライラとロイが現れた者の"胸囲"を指摘すると、三日月仮面の女性は衝撃とショックを受けた顔をして、叫んでいた。黒い仮面が赤くなっているのが分かる。かなりのコンプレックスを持っており、というか、一見すると女なのか男なのか分からないのに


「な、な、な、なんであたしが女だと……………」

「目を凝らして見ればほんのちょっぴり胸の大きさが分かるからな」

「!」

「……それに女用の香水使ってるでしょ?」

「はっ!!」

「それでホントによく女性を隠していますって言えるわね」



慌てる仮面と呆れるライラ、女性がやってくることにちょっと気持ちが高まるロイ。


「と、と、とにかく!あなた方には関係ないわ!!あたしはここに用事がある!!」

「む」

「先に行かせてもらうわよ!!」



仮面の女性はライラ達をすぐに追い抜くように走っていくが……………。ライラとロイはその走る光景をずーっと観察しているが…………。


「ぜ、全然前に進んでいないわよ」

「あ、あれ?おかしいね。なんなのこの空間………。走っているのに進まない……」

「おいおい、まさか……………」

「あたし達、3人。この空間に閉じ込められたまま……………?」



春藍は気絶しているため、初めてとしてカウントしていいのか分からないが……。ともかく、ライラとロイにとっては彼女との初めての出会いはこんな形であった。


「こ、ここは一時停戦としましょう…………」

「戦ってもないけどね」

「だ、黙ってください!あ、あたしに恥をかかせて……………」

「だから、貧乳はステータスだって俺が言っているだろ。心配するな」

「あたしはそれが一番のコンプレックスなんです!!男性の見方なんて、ただの下心しかないじゃない!!」

「がーーーん。まぁ、10割それだからな」

「100%なんて!あなたは変態です!!」

「褒めるな。自覚してるぜ」


声や匂い、視覚はとても近く感じるようだが、本当の距離はメチャクチャ離れている。ロイとライラは近くにいるが、彼女は2人からかなり離れている。目に見えていても協力することはできないだろう。それでも謎解きには参加できる。仮面の女性は渋々、自分から名乗った。助けてくれないと本当に閉じ込められる。



「くっ…………仕方ありません。あたしの名は夜弧やこと申します。今後はそうお呼びください!」



これが、ライラ達の仲間になる夜弧との出会い。



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